好奇の目・偏見にさらされても、変わらずいられた理由
2024.10.062023年11月03日
【シリーズ|彼女の生き様】山田詠美#4
愛情あふれる家庭ゆえの息苦しさが、原動力にもなって
愛情あふれる両親だけれど この人たちに私を失わせてはならない―― そう決意した瞬間から 自分も不自由になってしまった
愛情あふれる家庭、だからこそ抱えた悩み
――2022年1月に父を、11月に母を亡くし、長女である山田さんは1年に2度も喪主を務めることになりました。2023年夏に発表した『時には父母のない子のように』という短編では、亡き父母への追想が綴られています。
我が家はごく普通のサラリーマン家庭で、私は転勤族の子として地方に移り住み、高校2年まで社宅暮らしでした。
友達に聞くと、親のせいで家庭に夢を見ることができなくなったという人もけっこういるんです。けれど、私は穏やかな家庭でぬくぬく育ち、うちに逃げ込めば、無条件に愛してくれる父と母がいた。幼いときから読書体験を与えてくれたのは両親だったし、20代の頃、婚約していたボーイフレンドと彼の子どもを連れて帰省したときも、家族は温かく迎えてくれました。
時にはその愛情の中でちょっと息が詰まることもあり、今思えば贅沢な悩みを抱えていたのですね。それは過干渉ということとは違うのですが、愛情あふれる両親を見ていると、この人たちは私たち姉妹の誰か一人でもいなくなったら生きていけるのだろうかと思ってしまって。妹たちはそんなこと考えなかったと思うけれど、私は相手の気持ちをくみ取り過ぎて苦...
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