漫画家から小説家へ――自分を見限ることも才能
――サラリーマン家庭の長女として育ち、本を読むことがなにより好きだった少女時代。高校に入ると、文武両道に憧れて文藝部と山岳部へ。大学では日本文学を専攻しましたが、山田さんにはまだ「小説家」への道は見えていなかったといいます。
この孤独から
誰も私を助けてはくれない――
ならば孤独を引き受けて、
自分で自分を救わなければ
1985年、『ベッドタイムアイズ』で鮮烈なデビュー。当時、さまざまな誹謗中傷に戸惑いながらも、自分を信じて書き続けたという作家・山田詠美さん。第2回は、山田さんにとっての小説を書くことの存在についてお聞きします。
――サラリーマン家庭の長女として育ち、本を読むことがなにより好きだった少女時代。高校に入ると、文武両道に憧れて文藝部と山岳部へ。大学では日本文学を専攻しましたが、山田さんにはまだ「小説家」への道は見えていなかったといいます。
何かを作る人になりたいとはずいぶん前から思っていたけれど、本当は漫画家になりたかったの(笑)。小説を読むのは好きだったけれど、それ以上に漫画も好きで、自分でも描いていました。でも、絵を描くのはすごく下手だったのね。私は下手だからと自分のことを見限ることも、一つの才能だと思うんですよ。
漫画家にはなれないと早々に悟ったけれど、ストーリーを作るのは得意だったし、文章を書くのも大好きだった。子どもの頃はよく友達の読書感想文やラブレターを代筆していたので、文章修業のトレーニングも積んでいたなと。
私にはもう小説を書くことしかできないという思いがあって、その道へと向かいました。それでも、なまじ本読みなので目が肥えていて、読者の自分からすれば書き手の自分をなかなか許せなくて……。実際に小説を書くまでには長い時間がかかりました。