多才な漫画家ヤマザキマリ

2021年、この漫画が心に残った

公開日:2021.12.30

更新日:2021.12.28

2021年も、コロナウィルスに私たちの暮らしは振り回されてきました。それでも、こんな状況だからなおさら心に響く作品に出会えました。

2021年、この漫画が心に残った
『オリンピア・キュクロス』ヤマザキマリ作

心の栄養失調にはなりたくない

2021年末、2度目のコロナ禍の冬を迎えました。

終息の見通しが立たない今、以前にも増して「心」の大切さを強く感じています。

美しいものへの感動や、悲しみ苦しみの癒やしなど、心に多くのものを与えてくれる文化・芸術は、私にとっては「不要不急」のものではありません。

生きる力を生み出す大事な栄養です。

そんなふうに思っていたので、今回の作品を読んだときは言葉の一つ一つが心に染みました。

古代ギリシア人青年が、現代日本人とふれあって考えたことは……

古代ギリシア人青年が、現代日本人とふれあって考えたことは……
『オリンピア・キュクロス』ヤマザキマリ作

ヤマザキマリ作『オリンピア・キュクロス』(キュクロスは輪の意)は、古代ギリシアと日本が舞台の漫画です。

壺絵師のデメトリオスは、より良い表現を求めて悩む青年。彼は雷に打たれてから、1964年オリンピック以降の東京を何度もタイムスリップするようになります。

そこで手塚治虫、円谷幸吉、プロレスラー、歌舞伎役者などと出会い、文化・芸術と人間について考え成長していきます。

「人間は精神が弱くなると暴力的になり弱いものを排除する。生きる苦しみは想像力と言葉の大切さをそぐ」

「生活に疲れた人々は想像にエネルギーを使いたがらず、考えるのが面倒になると、勝ち負けのようなぼんやり見ていても心に届くものしか受け付けなくなる」

「人々は自分たちのために身を削って尽くしてくれた人の言葉や音楽には必ず意を留める」(六巻より抜粋)

このほかにも、印象的な言葉はたくさんあって書ききれません。よくかみしめて、2022年の生きる糧にしようと思います。

ヤマザキ マリのおすすめ作品

阿部寛が古代ローマ人に扮して話題になった映画『テルマエ・ロマエ』。ヤマザキマリの原作です。

浴場設計技師のルシウスが、ローマと日本各地の温泉地をタイムスリップで行き来します。

ヤマザキ マリのおすすめ作品
映画『テルマエ・ロマエ』 右の冊子は入場者特典コミック
ヤマザキ マリのおすすめ作品
漫画『テルマエ・ロマエ』ヤマザキマリ作

ヤマザキマリは10代でイタリアに留学して以来、世界の各地で暮らしています。漫画のほかに、エッセイ、評論、テレビ出演、音楽活動など、多方面で活躍しています。

ヤマザキ マリのおすすめ作品
その他の作品 左から『ジャコモ・フォスカリ』『地球恋愛 』『プリニウス』

数多くの漫画作品の中で、ハルメク世代におすすめするのは『地球恋愛』です。イタリア、ブラジルなど世界6か国の中高年の愛の姿を描いた短編集なので、この巻だけでも楽しめます。

恋愛といっても劇的なものではなく、各都市に暮らす、普通の人々の穏やかな愛や秘めた愛などの物語です。前の話に出てきた道具や風景などが、リレーのバトンのように次の話に生かされており、短いけれど印象深い作品です。


本日の作品
漫画はすべてヤマザキマリ作

『オリンピア・キュクロス』 2018年~ 既刊6巻 集英社
『テルマエ・ロマエ』2008年~2013年 全6巻 エンターブレイン
映画『テルマエ・ロマエ』2012年公開 
映画『テルマエ・ロマエⅡ』2014年公開
『ジャコモ・フォスカリ 』既刊1巻 2012年~ 集英社クリエイティブ
『地球恋愛  』既刊1巻 2011年~ 講談社
『プリニウス』2013年~ とり・みき との共作 既刊11巻 新潮社

 

■もっと知りたい■

K・やすな

漫画、アニメ、映画鑑賞、読書が趣味の自称「オタクな主婦」。子どものころは考古学者か漫画家志望。美術館めぐりや街歩きも好きだが、基本的に単独行動。なぜか、どこへ行っても道を尋ねられる。好きな花はカワラナデシコ。

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