ポーの一族展と吸血鬼について

吸血鬼には薔薇(バラ)がよく似合う

公開日:2021.05.14

五月はバラの美しい季節。そんな時期にバラ園がある美術館で開催された、漫画家・萩尾望都の原画展「ポーの一族」展に行ってきました。その様子と吸血鬼についての本や映画などについてお話しましょう。

吸血鬼(バンパネラ)に紅い薔薇(バラ)

吸血鬼(バンパネラ)に紅い薔薇
ポーの一族展の看板と薔薇

2019年に東京からはじまり、各地を巡回したポーの一族展がようやく福岡県久留米市にやってきました。

しかもバラに囲まれた久留米市美術館という最高の環境です。各地では、ビルやデパートのフロアでした。この時期を狙っていたとしたら、主催者様、グッジョブです。バンパネラが生きていくためには、血と薔薇(バラ)のエキスが必要ですからね。

当展覧会は、『ポーの一族』を中心に萩尾望都の代表作の原画や資料を展示したものです。宝塚歌劇にもなりましたので衣装なども見られます。そして、久留米市美術館のある石橋文化センターは広大な庭園があり、四季折々の花が楽しめる市民の憩いの場です。椿の咲く頃も見事です。でも、バンパネラには薔薇(バラ)です。

吸血鬼(バンパネラ)に紅い薔薇
石橋文化センター内のバラ園

『ポーの一族』シリーズの中の『小鳥の巣』という作品に出てくる「クリムゾン・グローリー」という紅いバラがありました。エドガーとアランが食べた花です。「ポーの一族展」の会期は6月13日までですので、おいでになる方はバラが見頃のうちにぜひ!

吸血鬼(バンパネラ)に紅い薔薇
クリムゾン・グローリー

 

吸血鬼(バンパネラ)に紅い薔薇
とても広い園内です

吸血鬼漫画好きにお薦めの一冊

吸血鬼漫画好きにお薦めの一冊
『少女マンガは吸血鬼でできている』 中野純・大井夏代

こわいこわいと言いながら、実はみんな吸血鬼が大好き。吸血鬼なしの少女漫画なんて考えられません。『ポーの一族』をはじめ、木原敏江の『夢の碑』シリーズなど傑作ぞろいです。このジャンルが好きな人にとっては、この本はバイブルです(吸血鬼が嫌がるかもしれませんが)。

吸血鬼とともに歩んできた少女漫画の歴史が一目瞭然で、豊富な図版と鋭いけれどわかりやすい分析と考察に満ちています。吸血鬼とバラのかかわりについても解説しています。1960年公開のフランス映画「血とバラ」の影響で徐々に広まったようです。著者は「少女漫画世界の永久保存」をめざして私設の少女漫画館を運営しているご夫婦です。

吸血鬼と文学・映画

文学や映画にも吸血鬼はたくさん登場しています。

国書刊行会出版の『書物の王国 12 吸血鬼』は、現在のようなイメージの吸血鬼の元祖といわれるポリドリ作の『吸血鬼』やバイロン、ストーカーなどの古典的な作品26編がまとめて読めるので、興味がある方はご一読を。私は図書館で探して読みました。

吸血鬼映画ではありませんが、ポリドリの作品が生まれるきっかけとなったエピソードが出てくるのが、こちらの映画です。19世紀イギリスの詩人バイロンの別荘で行われた、幽霊話の創作ゲームから生まれました。このゲームからは「フランケンシュタイン」も生まれます。200年後まで影響を及ぼしている二大怪物を生み出したなんて、とんでもないゲームですね。放蕩者のバイロン卿に感謝すべきかな?

「メアリーの総て」 2018年公開

これは当時18歳でフランケンシュタインを書いた、メアリー・シェリーという女性の、波乱に満ちた生涯を描いた物語です。

吸血鬼と文学・映画
「ハンガー」 1984年公開

不老不死の吸血鬼役にふさわしい2人です。デビッド・ボウイは300歳、カトリーヌ・ドヌーブは6000歳の設定です。老いと滅びを恐れながら、現代のニューヨークに生きています。当時ドヌーブは40歳、同じ人間とは思えない(笑)。

 

今回の作品

『少女マンガは吸血鬼でできている 古典バンパイア・コミックガイド』中野純・大井夏代 方丈社   2019年          
『書物の王国 12 吸血鬼』国書刊行会 1998年 
『メアリーの総て』2018年公開
『ハンガー』1984年公開

 

■もっと知りたい■

K・やすな

漫画、アニメ、映画鑑賞、読書が趣味の自称「オタクな主婦」。子どものころは考古学者か漫画家志望。美術館めぐりや街歩きも好きだが、基本的に単独行動。なぜか、どこへ行っても道を尋ねられる。好きな花はカワラナデシコ。

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