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2020.11.02
公開日:2019年07月09日
落語会体験記
落語自由自在11~小さん孫弟子7人会(下)~
いよいよ5代目柳家小さん孫弟子の会のリポートも最終回。NHKの朝ドラ「なつぞら」への出演でも話題となった柳家喬太郎師匠の巧みな話術に、さいとうさんのみならず、会場が引き込まれたようです。
「親子酒」 柳家喬太郎
最近「キリン・ザ・ストロング」のCMでお馴染みの喬太郎師匠です。
「銀座ブロッサム中央会館、ここはキャパが900名ですね。我々もこんな大きなホールでできるようになったんだって、しみじみ思いましたよ。 寄席普及公演というのがあって、もう20数年やっているんですが、未だにやっているってことは、ちっとも普及してないんでしょうね」で笑いが起きます。
「とっちゃん坊やの文菊さんや、漫才のホンキートンク、紙切りの二楽さん達と沖縄を皮切りに、九州を廻る予定の公演でした。ゲストが毎回来るのですが、小三治師匠とか、権太楼師匠とか日替わりでね。その日は我が落語協会の会長の市馬師匠でした。師匠に、この後は大分の豊後なんですよって言ったら、豊後は地元だよってんで、そういえば師匠は豊後の出身でしたね。そうだよ、行ったらびっくりするよ。何もなくて」。大爆笑が起きます。
「翌日師匠と別れて、豊後に向かいます。JRの臼杵という駅前のビジネスホテルに泊まることになっていましたので、何もないなんて師匠は脅かすけど、駅前にホテルがあるくらいだから、何かあるよって、呑気にしていました。行ったら、本当に何もないの。軽く呑んで食事もしたいので、ホテルの方に聞いたら、タクシーで5分位行けば、繁華街がありますよってんでお囃子さん達も入れて、一行9名タクシーに分乗しました。行けども行けども何もないんです。痺れを切らして『運転士さん、繁華街はまだですか?』って言ったら、『ここですよ』(笑)。何もないって言葉は、あの町のためにあるのだって思いました」
そして、さりげなく羽織を脱いで「親子酒」に入ります。この噺は、お酒が大好きな親子の噺で、そんなに呑んでいては、せがれのためにならないと思った父が、お互いに禁酒をしようと提案します。そうは言ったものの我慢の限界に達し、とうとうせがれの居ぬ間に、呑んでしまいます。止める母ですが、そこは喬太郎ワールド、母もちゃっかり呑んでいるんです。これは今までにない設定です。
「もう1本、もう1本だけ呑んだら寝る」と言ってるうちに、とうとうせがれが帰ってきてしまいます。ところがせがれも、グデングデン、二人で気まずそうに睨み合い、やがて顔が3つに見えるせがれに向かって、「こんな化け物に身代は譲れない」と父が言うと、「あたしだってこんなグルグル回る家はいらない」で、普通はサゲますが、そこは喬太郎、いきなり母が泥酔して倒れ込むんです。母が一番呑んでいたのですね。斬新な「親子酒」でした。
「宿屋の仇討」 柳家甚語楼
袴姿で登場、羽織は着ていません。この装いから想像して、お侍が主人公の噺でしょうか。
小さん師匠との思い出話を期待していましたが、いきなり噺に入ってしまいました。「ねずみ」? 「竹の水仙」? いえ「宿屋の仇討」でした。甚語楼さんの師匠の権太楼さんお得意の噺で、テレビなどでもしばしば演じられます。
魚河岸の源兵衛、清八、喜六の三人連れが、金沢八景見物の後、武蔵屋という旅籠にわらじを脱ぐことから始まる痛快な噺です。客引きの若い衆伊八とのやりとりを、丁寧に演じていきます。威勢のいい三人組と、隣室の侍と、その間に入って平身低頭する伊八の演じ分けも見事でした。
「小さん孫弟子七人会」前座の寿伴さんを入れて落語ばかり7席、3時間たっぷり楽しみました。
昼の部はここでお開き、夜は左龍・扇辰・三三・喬太郎・甚語楼に加え、3年前に若くして亡くなられた喜多八師匠のお弟子さん、小はち師匠が出演されます。
昼夜通しで聞く方も多いですが、私は心惹かれながらも銀座ブロッサムを後にしました。