落語自由自在(74)

渋谷らくごのふたり

公開日:2023.09.28

9月の「渋谷らくご」は、初日をYouTubeで特別無料生配信するというので、ワクワクしながら観ました。

ユーロスペースの落語会

この落語会は、持ち時間が1人30分あるのが魅力です。また、落語界の身分制度の中で、二つ目は寄席のプログラムの二番目に出て来る演者のことで、通常の寄席では一人しか登場しませんが、渋谷らくごでは複数の二つ目が出演します。

ユーロスペースの落語会

本日も、真打は入船亭扇辰師匠だけで、柳亭信楽さんと三遊亭青森さんは二つ目、後は講談の田辺いちかさんです。

では、二つ目の二人を、ご紹介します。

「約束」柳亭信楽

信楽さんは、証券マンからお笑い芸人を経て、柳亭楽輔師に入門、2018年8月に二つ目に昇進。

昨日から、青森さんが四国にいて、台風で飛行機が欠航なので、まだ来ていませんと、なぜかうれしそうに話します。今日は無料配信があるので、初めて落語を聞く方もいるかと思います。最初が私でいいのでしょうか? と、つぶやきます。

信楽さんの生の高座をよく聞いている私も、ふと不安になりました。変に肩に力が入っているのが、画面を通してもわかるからです。

「約束」は、少年野球ファンのおじさんの噺で、少年に「次の試合でホームランを打ってくれ」と頼むのです。「打ってくれたら手術を受ける」と言うのですが、果たして少年は、この面識のないおじさんのために、ホームランを打つのでしょうか?

時間が、10分近く余ってしまいました。落語って難しいですねとボヤいてから、もう1席やります。

「俺の夢」

ある日男が「会社を辞めて、夢を叶えたい」というので「夢は何?」と聞いたら「幕府を開くこと」「脱サラして、幕府を開いた人なんかいないよ」と言う同僚をも、男は誘おうとします。その想像力のすごさに、拍手と爆笑が湧き起こりました。

最初の不安はどこ吹く風、これを聞いたら、落語が初めての方も、きっと興味を持ってくれることでしょう。

「粗忽長屋」三遊亭青森

ユーロスペースの落語会

本当に間に合うのかと、心配していましたが、ひいきのロックバンドのライブで高知に行っていて、新幹線でギリギリ楽屋入りできたそうです。

青森さんは、三遊亭白鳥門下で、2019年2月に二つ目に昇進。

ロックのノリで、俺の名刺代わりの「粗忽長屋」始めまぁ~す。当然新作落語だと思っていたのに、古典だったので、正直戸惑いましたが、新しい切り口で笑いを取り「哲学版粗忽長屋」に仕上がっていました。

これは若い人には絶対受けますし、そうでない人も、いささか聞き飽きた噺に、新鮮な魅力を感じたことと思います。サゲもおなじみのではなく、うゎぁ~というものでした。

NHK新人落語大賞の動画審査で、落選したネタだそうですが、これはこれで面白いし、青森さんの別の落語も、聞いてみたくなりました。

10月の「渋谷らくご」は、下北半島の怪物三遊亭青森が5日間連続主任(トリ)で出演と発表されました。二つ目の身分で、5日間連続出演、しかも主任(トリ)というのは、異例中の異例です。10月13日~17日までで、13日は配信もあります。楽しみです。

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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