貯まる人になるための「大人のマネー学」#15
住宅ローンの繰り上げ返済は〇か×か?正しい考え方をお金のプロが解説
住宅ローンの繰り上げ返済は〇か×か?正しい考え方をお金のプロが解説
公開日:2025年07月26日
実は少ない!住宅ローンの繰り上げ返済をしてもよい人
今回は「住宅ローンの繰り上げ返済」がテーマです。「住宅ローンを組んだら、とにかく繰り上げ返済すべき」と考える人がとても多いです。「繰り上げ返済呪縛」と言ってもいいくらいでしょう。
でも、お金のプロから見ると「繰り上げ返済をしてもいい人」はとても少ないのです。なぜなら、50代は繰り上げ返済を急ぐよりも優先しなくてはいけないお金がまだまだあるからです。
こまめな繰り上げ返済をして完済年齢を早めたいと思うかもしれません。しかし、繰り上げ返済をすると手元からお金がなくなりますので、慎重にプランを立てる必要があります。
そこで今回は、繰り上げ返済をしてはいけないケースを紹介しながら、その理由をお伝えします。
繰り上げ返済してはいけない3つのケースとは
住宅ローンの繰り上げ返済をしてはいけないケースは、主に次の3つあります。
【ケース1】子どもの教育費のピークをこれから迎える人
今の子どもの教育費は、50代の人が大学生だった頃より格段に高くなっています。
繰り上げ返済をする前に子どもの大学進学以降の教育費について総額を見積もることが肝心です。教育費準備のめどが立ってない人は、繰り上げ返済の実行よりも教育費の確保を優先させましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済をこまめにやり過ぎた結果、子どもの教育費の資金繰りが追いつかなくなり、そのせいで子どもが奨学金を借りる、または親自身が教育ローンを組むことになる、そんなケースは少なくありません。
今の子どもの教育費は、親が予想している以上にかかることを知っておいてください。
【ケース2】50代で老後資金の準備ができていない人
会社員、公務員の場合、60歳以降に収入が大幅に下がる「収入ダウンの崖」があります。
定年後に再雇用で働いても、給与は50代の時に比べ大きく下がりますし、65歳で年金収入だけの生活に入ると、もう一段階ダウンします。
住宅ローンは60歳までに完済したいところですが、一方で老後資金を貯められるのも収入が下がる前の60歳までであることを忘れずに。
収入ダウンの崖に落ちた後は、減った収入で収支をトントンにするのが精いっぱいで、「貯める」のは難しいのが現実です。老後資金は60歳までに貯めるものと覚えておきましょう。
再雇用後の給与額がわかるまで、繰り上げ返済をしたつもりで貯蓄し、60歳以降の収入が見えたところで返済のプランを再考するといいでしょう。
【ケース3】住宅購入後、頭金等の出費で預貯金が減り、残高が300万円以下の人
3つ目は、住宅購入後間もない人向けのアドバイスです。
「繰り上げ返済呪縛」にとらわれていると、住宅購入直後から繰り上げ返済をしたくなるものですが、焦ってはいけません。
マイホームを購入する際には、頭金や諸費用などで多額の出費があり、預貯金残高は急激に減ります。購入後の数年間は、減った貯蓄の回復時期と位置付けましょう。
失業、収入減、災害による被災など、不測の事態に陥ったときに頼りになるのは「イザというときの貯蓄」です。そのためのお金は、少なくとも300~400万円を確保してください。
子どもがいる人は、併せて教育費もコツコツ貯めていかねばなりません。教育費の積み立てをしつつ、イザというときの貯蓄が貯まったら、初めて繰り上げ返済を考えます。
繰り上げ返済を「してもいい人」の条件は?
では、繰り上げ返済をしてもいい人とはどんな人でしょうか。
それは、前述の3つのケースに当てはまらない人です。子どもの教育費の心配がなく、繰り上げ返済しても老後資金を順調に貯められる人。毎年コンスタントに貯蓄できている、子どもがいないフルタイムの共働きカップル(DINKs)などが当てはまります。
共働き夫婦でなくても高収入の夫がいれば該当するかというと、支出が多く、年間貯蓄額が少ないなら、繰り上げ返済している場合ではありません。
結果、「こまめに繰り上げ返済をしてもいい人」は、実は意外に少ないことがわかります。
もちろん、繰り上げ返済をすること自体は悪ではありません。覚えておきたいのは、やみくもに実行するのではなく、60歳、65歳以降の将来を見据えて自分や家族に合った戦略を立てた上で、実行に移すということです。
今回の記事を参考に、自分はどのケースにあてはまるのか、一度考えてみてはいかがでしょうか?
文=深田晶恵




