定年女子が生かしたいと思っている「経験」は社会に求められているか問題

公開日:2025年06月30日

定年女子はどこへ行く?

定年女子が生かしたいと思っている「経験」は社会に求められているか問題

定年女子が生かしたいと思っている「経験」は社会に求められているか問題

定年を迎える女性たちのこれからの生き方について、定年女子トーク実行委員会委員長、石崎公子さんが考える連載シリーズ。自分の経験を生かしたいと、定年後の生き方・働き方を考えても、現実はなかなか難しいもの。その原因は?解決法は?定年女子の先輩たちの体験談を通して、解決の糸口を探していきます。

あなたが生かしたい経験は、社会に「求められているか」?

あなたが生かしたい経験は、社会に「求められているか」?
artswai / PIXTA

前回に引き続き、「経験の生かし方」について考えていきます。

定年女子の「今までやってきたことを生かせたらいい」「今までの経験を生かしたい」という声。でも現実はなかなか厳しい……。

「今までの経験を生かす」なんて、普通に働き続けてきた私たちには難しいことなの?

そもそも、多くの定年女子が、この先何をやるにしても「今までの経験を生かしたい」と言うけれど、それはどんな経験でしょうか。

その経験を生かしたいと考えるなら、それを生かしてほしいと望んでくれる環境が必要です。そもそもその経験は、今求められている経験なのでしょうか。求めているのはどこ?誰?どのような環境なら、その経験が生かされるのでしょうか。

厳しいことを言うようですが、求められない限り、いくら生かしたいと思っても、その経験を生かす方法なんてない……(涙)

もうずいぶん前のことですが、私もこれまでの経験を生かせる場所を求めて転職エージェントにアタックしていたことがあります。その頃、「どこであなたみたいな人を採用すると思うのですか?そんなところありませんよ」と厳しい言葉を浴びせ続けられて、へこみまくりました。

当然のことですが、雇用するかどうかは、採用者側が決めること。転職エージェントは、その時の需給バランスで強気に出ることもあるでしょうし、担当者や相性で対応もいろいろかもしれませんが、希望通りにはいかない現実があります。

「『〇〇ができます。〇〇の経験があります』と次々面接で語る人がいるが、そういう人を採用すると最悪だ。彼らは過去の経験に引きずられがちで、新しい挑戦をしようという会社の空気までを変えてしまいかねない、大事なのはこれまでの経験ではなく、新しい環境に臨機応変に対応できるかどうかだ」―――ある若い企業経営者が言うのを聞いて、ドキッとしました。なんと耳が痛い……。

生かすべきは「経験」ではなく経験で磨かれた「スキル」

生かすべきは「経験」ではなく経験で磨かれた「スキル」
Graphs / PIXTA

そうは言っても。50年60年生きてきた定年女子ですもの、いろんな経験をしてきたのは間違いありません(笑)

だけど、どんな経験をしてきたかはみんな違うので、「今までの経験を」と言っても、その中身はみんな違います。

私は定年女子トーク実行委員会のイベントでさまざまな定年女子に出会ってきましたが、いつも、みんな本当に優秀だなあと再確認します。それは専門性もさることながら、ちょっとしたところで垣間見える「言葉にしにくい能力」です。

例えば、場の空気を察知して臨機応変に動いたり、人が気付かないことに気付いてフォローしていたり、陰で整理整頓していたり……。スキルとして書きだすのは難しいのですが、枚挙にいとまがありません。

だって私たち定年女子は、名ばかりの男女雇用機会均等法のもとで働きながら、これまでうまくやりぬいてきたんですもの!

つい「経験を生かす」に焦点を当ててしまいがちですが、実際に役に立つ、本当に求められているのは「経験をもとに磨かれてきた能力」、いわば「名もなきスキル」なのではないでしょうか。定年女子トーク実行委員会を運営しながら、そういうことを感じています。

でも当の定年女子本人は、意外にそういう能力については無自覚なんです。これが何とも残念!

「新しい仕事」と「経験を生かした仕事」のダブルワークで楽しんで働く定年女子、Iさん

新しい仕事と経験を生かした仕事のダブルワークで楽しんで働く定年女子、Iさん
EKAKI / PIXTA

Iさんは、40歳を過ぎて転職した会社でマネージャー職を務め、60歳定年で再雇用となってからはいくつかの業務を2年兼務した後、昨年退職しました。50代後半には、業務外でキャリアカウンセラーの国家資格を取得したり、大学で心理学を学んだりもしました。

現在は、全くの未経験業務のパートタイマーと、経験を生かせる業務委託の仕事の、ダブルワークをしています。全然違う二つの仕事だからか、とても楽しんでいるそうです。

Iさんがこの未経験の仕事を始めたのは、その会社のビジョンに共感したことから。いざ始めてみたら、新規店の立ち上げにも少し関われるのが魅力でもあるのだとか。

Iさんはこれらのダブルワークのほかにも、ボランティアで関わる団体の広報誌を作成したり、イベントを手伝ったりもしています。ここでは、かつて印刷関連の業界で働いてきた経験、スキルを役立てています。聞けば、自ら手を挙げて手伝うことにしたのだそうです。

関わる場所では、きっとIさんが自覚する能力や経験だけでなく、もっともっといろんな経験が生かされているであろうことが想像できます。

Iさんによると、今関わっている仕事はどれも、勤務先の経営者の「社会をよくしよう」とする意志、考え方をすばらしいと思ったのをきっかけに始めたそうで、経営者の思いがIさんを動かしたのですね。Iさんは、定年後は「志のある人を応援する仕事」をしたいんですって。

 いろいろな場所で自分を生かせることが、「自由人」の生き方かもね、とIさんは笑いました。心持ちを変えることで、自分自身が楽になることがわかったのだそう。



定年女子のあいだでは「自由人」という生き方が話題に

定年女子のあいだでは「自由人」という生き方が話題に
kou / PIXTA

定年退職で会社人生を卒業した定年女子のあいだでは、最近「自由人」という生き方が話題です。

もう仕事はしないという「自由人」だけでなく、Iさんは、一つの仕事に縛られることなくいろんな場所で自分を生かせることを「自由人」と言いました。それは自分の経験の生かし方を自由に考えられる、そして選べる自由がある、という意味なのだと思います。

 「これまでの経験」を生かして、これまでと同じ待遇で働き続けることができる人は、現実にはほんのひと握りかもしれません。

だけど定年退職してずいぶん経ってから、昔々の仕事経験を生かしていたり、パートタイマーを通じて未経験でも憧れていた仕事を楽しめている、と笑う少し先を歩く定年女子が多数いるのはたしか。

経験を生かすには、いろんな場やいろんなやり方があることを、定年を乗り越えた定年女子たちが教えてくれます。

私たち定年女子の人生経験を生かすのも殺すのも、もしかしたら私たち自身なのかもしれません。

※定年女子=定年が気になる、定年をきっかけに自身の生き方働き方を考えたい、働き続けてきた女性たちのこと。概ね50歳~60歳前後が中心です。私たち「定年女子トーク実行委員会」が独自に定義している言葉で、「定年しちゃった女子」ではありません。

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Voicy 定年女子のごきげんに生きていこう

【連載】定年女子はどこへ行く?(毎月更新)はこちらから>>

石崎公子
石崎公子

定年女子トーク実行委員会・委員長。新卒で広告代理店に入社し、勤続25年で退職、独立。会社に囚われない働き方を志向し新規事業を起ち上げるも失敗、試行錯誤を繰り返す。現在は広告やPRの支援、キャリアやコミュニケーションの講座を手がけている。共著に『そろそろこれからを考えよう、定年女子ライフ計画 定年女子ライフシリーズ』ほか。

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