禅僧で精神科医、川野泰周さんが説く「心の平穏」とは
2024.06.122024年07月21日
禅僧で精神科医・川野泰周さんの心の整え方
禅から生まれたマインドフルネス瞑想の、気軽なやり方
自己肯定感が低くなりがちな日本人には、禅とマインドフルネスを融合した「瞑想」が効果的と説く禅僧・精神科医の川野泰周さん。中でも「生活瞑想」は、普段の暮らしの中で気軽に取り入れやすいと言います。川野さんにやり方と注意点を教わります。
川野泰周さんのプロフィール
かわの・たいしゅう 禅僧・精神科医。慶応義塾大学医学部卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神科などで診療に従事した後、建長寺専門道場にて禅修行を行い、2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。寺務の傍ら、都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたっている。『半分、減らす。「1/2の心がけで、人生はもっと良くなる」(三笠書房刊)、『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング刊)など著書多数。
いつでもすぐできる「生活瞑想」のすすめ
何か気がかりなことや悩みがある、不安や心配で心が押しつぶされそう、過去への後悔で苦しい……そんな思考で疲れてしまった経験、みなさんにもあるはずです。
川野さんは「ネガティブな思考で頭の中がいっぱいになってしまった時は、まずいったん、思考を止めましょう。ゆっくり息を吸って吐いて、自身の呼吸に意識を集中することで、その瞬間だけでも思考を静止させることができると思います。
もう一つは、自らが何かを気にしているという事実を、心の中で言葉にしてみて、自己を客観視してみることです。気にしないように努めるのではなく、あえてそれを言葉で表現してみることで『自分はこういう状態だったのだな』と今の状態を理解し、受け入れることができます」と言います。
こういった客観的な視点を育むためには、日ごろ瞑想を習慣的に実践することがとても大切です。決して難しいものではありません。呼吸に限らず、足の感覚に意識を向けて歩く、味わって食べるなど、まずは日常生活を丁寧に行うだけでも十分効果的です。川野さんの講座では、普段の暮らしに取り入れやすい瞑想法を解説しています。
「瞑想」に「ねば・ならぬ」はいらない
「こういった生活瞑想を日々習慣化し、『今ここ』にいる自分に集中することで『受け入れる心の姿勢』が育まれ、物事をいろいろな角度から見て、その状態をありのまま受け入れられるようになります。それが、『マインドフルネス瞑想』の本来の在り方です」と川野さん。
「ただし、大切なのは『決められた手法を完璧にこなす』ことではありません。真面目な方ほど、ねば・ならぬと『形』ばかりを意識してしまいがちですが、それでは逆に雑念を増やし疲れてしまうかもしれません。
瞑想の本質は、自身で『今ここ』に注意を向けて、心を穏やかに整えること。そうしたスタンスさえ持ち続けていただければ、どんな形で実践してもいいのです」と助言します。
「今ここ」をつかめれば、自分なりの瞑想法でいい
「日本には、茶道、華道、剣道、柔道など『道』のつく文化があります。『道』はいわば『形』を通して、その精神を学ぶものですよね。瞑想も同じ。いろいろな流派や分野によって形が異なるだけで、本質的な精神は共通しています。大切なのは、今ここにおける体験を、あるがままに受け入れる心の在り方なのです」と川野さん。
例えば「お茶を飲む瞑想」は、緑茶でもココアでもいいし、マグカップや紙コップで飲んでもかまいません。ただ「今ここ」に集中して、その飲み物が、どんな香り、味わい、色、ぬくもりにしっかりと注意を向けて、雑念にとらわれない瞬間が生まれれば、それでいいのです。
「むしろ、そうしてご自身にとってのオリジナルの瞑想を見つけてほしいと思っています」と川野さん。
「コロナ禍で私たちは身動きの取れない体験をしました。その経験を通して、これからの時代は、自分にないものを新たに身につけることだけでなく、すでに持ち合わせているものの素晴らしさを再認識し、『自己の本分』に気付くことが、生き抜く術になるように感じています。そのためにも『マインドフルネス瞑想』を習慣にして、軽やかに、心穏やかに生きていきたいものです」
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