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- 僧侶が教える!心の疲れを癒やす最も大切なこととは
心と体の疲れを解消する特集企画。まずは心を癒やすポイントを、禅僧・精神科医の川野泰周さんに伺います。日々の中で「なんだか心が疲れているな……」と感じることはありませんか。疲れが蓄積すると体調を崩すため、要注意です。
川野泰周(かわの・たいしゅう)さんのプロフィール
禅僧・精神科医。慶應義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神科などで診療に従事したのち、建長寺専門道場にて禅修行を行い、2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。『半分、減らす。 「1/2の心がけ」で、人生はもっと良くなる』(三笠書房刊)他著書多数。
心や体の不調に気付く余裕がなくなっている…
「私自身、精神科医として、最近、体や心の疲れを訴える方が増えてきた、という印象を受けています」とは、禅僧で精神科医でもある川野泰周さん。
川野さんによると、この20年間で、インターネットにより世の中を飛び交う情報量は1万倍に増えているそうです。テレビでは字幕付きで次々と新しい情報が出され、LINEなど連絡手段の方法も増えました。私たちは常に情報にさらされているのです。
川野さんはこう話します。
「こうした毎日ですから、多くの方が体に関心を向ける余裕がなくなり、体の不調にも心の不調にも気付けなくなっています。でも寝ても疲れが取れない、常に不安を感じるなどは心が疲れている証拠です。
テレビやネットなどから情報を受け取ると、人はどうしても、その良しあしや価値を考えてしまいます。心が休まる時がないのです。時間を決めてテレビやスマホから離れるのも心を休める一つの方法です。試してみてください」
心の疲れは「自律神経の乱れ」として体調に出る
「心の疲れは、自律神経の乱れとして体調に現れます」と川野さん。自律神経の乱れとは、交感神経と副交感神経のバランスが取れなくなること。
日中作業をしているときなど緊張した状態で優位になる交感神経と、夜などリラックスしている状態で優位になる副交感神経、この二つのバランスが保たれていると自律神経が安定して、体調も整った状態が維持されます。
ですが、ストレスによって心が疲弊すると、交感神経が過度に刺激されてバランスが崩れてしまうのです。
ではストレスとはどのようなものでしょう。
「ストレスにもいろいろありますが、突き詰めていくと“こうありたいという希望”と“現実”のギャップによって生まれる“葛藤”です。思うようにならないこと自体がストレスなのです。だから何もかも思い通りになっていたら、不安も心配も起きません。でも、人生はそううまくはいきませんよね。コロナ禍においてはなおさらです」
生きる上でストレスを完全に手放すことは難しいからこそ、心の疲れを予防する。そのためには「ストレスへの耐性をつけること」だと川野さん。
「『耐性』といっても耐え忍ぶのではなく“受容して受け流す力”のことです。仏教の修行も、そうした心の練習ともいえますね」
疲れを癒やすコツは「考えることを止める」
私たちはさまざまな理由により、自分の心の動きや体の不調に気付く余裕がありません。その上、今の世は思い通りにならないことが多く心が疲れています。では“心の疲れ”を癒やすにはどうすべきなのでしょうか。
「心をゆるめる最初のコツは、“考えること”を止めることです。最近はマインドフルネスや瞑想とも呼ばれますが、要は、次々に沸き起こってくる考えを止めて、目の前のことだけに意識を向けること。心配事が続いていては、常に交感神経が刺激されてしまい、脳も疲れます」。
「考えを止める」とは、物事の良い悪いを判断するのではなく、事実をありのまま受け入れて、ただ体で感じること。
「これができると心に余裕が生まれて、自分の体や心の状態に気付けます。さらにいえば、どんな自分でも、受け入れられるようになります。あれこれ評価し判断することに慣らされていると、自分のことを他人と比べて一喜一憂しがち。ですが、評価や承認を手放すことが身に付けば自分を大事に思う、自慈心が生まれます」。
「考えを止める」ための瞑想は、1分間、頭を空っぽにして呼吸に集中するだけでもいいのです。そこで次回は、生活の中でできる5つの「すきま瞑想法」を紹介します。
取材・文=児玉志穂(編集部)、撮影=中西裕人 イラストレーション=古谷充子
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年3月号に掲載、2023年5月にWEB公開した記事を再編集して配信しています。
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