川野泰周さん

2024年06月12日

日本の「マインドフルネス瞑想」の先駆者

禅僧で精神科医、川野泰周さんが説く「心の平穏」とは

「今この瞬間に意識を向ける」。最近注目の「マインドフルネス瞑想」を日本でいち早く、誰にでもわかりやすく、取り入れやすい形で普及に努め、多くの人から信頼を集めているのが、禅僧で精神科医の川野泰周さんです。そのきっかけを伺いました。

医師を諦め、禅修行で体感した心得とは

神奈川県横浜市にある臨済宗建長寺派の禅寺院「林香寺」の、19代目住職を務めている川野泰周さん。その傍ら、精神科医として、都内や横浜市内のクリニックで診療に従事しています。

「寺の一人息子として生まれ、いずれは跡を継ぐつもりでいましたが、人の心に関する意識が高まり、大学の医学部へ進学。卒業後は、精神科医として病院勤務をしていました。

当時は精神医療といえば薬物療法が主流で、心理療法は補助的な位置づけだったのですが、私はこの薬物療法中心の治療に違和感を感じていました。

もっと患者さんの心と体に寄り添った治療ができないだろうか――、そう思い悩み、私自身が精神医学へのモチベーションを保てず、悩みを抱えて過ごした時期もありました」と川野さん。

川野泰周さん

医師としての生き方を手放した川野さんは、30歳のとき、実家である林香寺の跡を継ぐために、鎌倉にある大本山建長寺専門道場(建長僧堂)に入門。約3年半の修行に入りました。修行中は、ひたすら坐禅、読経、托鉢、作務、掃除などの繰り返しだったと言います。

「睡眠時間が3時間足らずな日もあり、厳しい自己鍛錬の日々に、心身ともに疲れ切っていました。 

修行とは、目の前にあることに没頭して行うこと。年月を重ねるうちに、今ここにいる自分を見つめ、今の状態をただ受け入れることが修行の目的だったと実感したのです。

この仏教の世界における禅修行を体験したことで、私自身、自分を見つめ『今ここ』に集中できる“マインドフルネス”を少しばかり身につけられたのだと思います」

医師と僧侶を両立。マインドフルネス瞑想で心に寄り添う治療を

川野泰周さん

禅修行を終え、2014年34歳で林香寺の19代目住職となった川野さん。と同時に、精神医療に向けて再開の道を歩き始めます。

きっかけは、禅修行で自らが体験した坐禅を源流とする治療法、“マインドフルネス瞑想”が海外で盛んに用いられていると知ったことでした。

「マインドフルネス瞑想には、心が整い、自己肯定感が上がり、何が起きてもしなやかに受け入れられるようになる効果があります。これを心理療法として取り入れれば、もっと患者さんの心に寄り添う治療ができるかもしれない。薬による一時的な改善だけではなく、長く効果のある画期的な治療の選択肢になるのではないか。

自分なりに工夫して日本でも取り入れやすい形で提供できれば、きっと役立つはずだ、と思うようになりました」。

そこで、住職を務めるかたわら、都内や横浜市内のクリニックで外来診療を再開。禅僧と精神科医という二足のわらじを履いた生活が始まります。

診療にマインドフルネス瞑想を取り入れると、患者さんにも少しずつ、いい効果が表れ始め、自身も目の前の患者さんの気持ちを理解しやすくなったと言います。

普段の暮らしに取り入れやすい「マインドフルネス瞑想」

マインドフルネス瞑想

「昨今話題になっているマインドフルネスは、欧米やビジネスの場では上昇志向の人たちが自分を高めるための手段として使われることが多いですよね。

ですが、本来は“ありのままの自分を認める、受け止められる”ようになるためのもの。自己肯定感に課題を持っている人が多いとされる日本においてこそ、有効な手段なのです」と川野さん。

そこで川野さんは、一般の方にもマインドフルネス瞑想を伝える機会があればもっと心穏やかに生きられる人が増えるのではないかという思いから、マインドフルネスや禅に関する著書を多数執筆するほか、講座やメディア出演など、多岐にわたって活動しています。

「できるだけわかりやすく、取り入れやすい形をと考え、普段の暮らしの中で気軽に実践できる瞑想法や心の整え方のヒントを伝えています」

ただし、瞑想法は、間違ったやり方をすると逆に自分の心を苦しめてしまうことがある、と川野さんは注意を促しています。そこで次回は、正しい「マインドフルネス瞑」のやり方と注意点をご紹介します。

※この記事は2022年2月に公開した記事を再編集して配信しています。

 

HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

「今日も明日も、楽しみになる」大人女性がそんな毎日を過ごせるように、役立つ情報を記事・動画・イベントでお届けします。

みんなの コメント
【限定コラボ】職人技が光る!ハルメク×マエノリのセーター誕生秘話

子どもに残すべきはお金?不動産?どちらがお得?

子に遺すべき資産は?

「現金」か「不動産」か…どっちが得?メリット・デメリットは?相続や親族間のトラブルに悩まされないためにしておくべき準備とは

2024.12.12
【PR】「渋滞の文字で……」トイレ事情あるある

突然の我慢できない尿意

実は多くのハルメク世代が悩んでいる「尿トラブル」…中には上手に対策をしている人も!気軽にできる対策って?

2024.12.10
【PR】個人情報の上手な管理・整理術とは

個人情報管理できてる?

銀行口座・保険・クレジットカードなど、「デジタルの情報」をきちんと管理できていますか?煩雑にしていると思わぬ落とし穴が…

2024.12.09
【PR】三井住友銀行アプリにシンプルモードが登場

お金の管理が簡単に!

三井住友銀行アプリに「シンプルモード」が新登場!スマホ操作が苦手な人でも簡単に使える便利機能が満載です!

2024.11.29
認知症セルフチェック

認知症セルフチェック

「もの忘れが増えた」「名前が思い出せない」という症状に心当たりがある方は要注意!それ、「認知機能のレベル低下」が原因かもしれません…

2024.11.22
思わず笑顔になるコミュニケーションロボット「ニコボ」

健気な姿がかわいい!

「思わず笑顔になる」と巷で話題の「永遠の2歳児・ニコボ」!ハルメク世代の2人に、ニコボとの生活にハマる理由をお聞きしました!

2024.11.22
デジタル資産の遺し方

生前親に●●聞き忘れると

老親の契約や登録しているサービス、これらを子が把握していないと将来ムダな出費や面倒なトラブルに発展する可能性が!特に見落としがちなのは…

2024.10.11
【PR】50代からの願いを叶える新しい資金調達術

50代~お金の増やし方

将来を見据えて、50代から「まとまった資金の調達」が重要になります。どんな選択肢があるか、ご存知ですか?

2024.11.20
【PR】たった60日で英語が話せる!3つのコツ

60日で英語が話せる!

英語をマスターするのに「完璧」はいらない!初心者でも60日で英語が話せるようになる、驚きの3つのコツとは?

2024.08.29
認知症のリスクを確認してみませんか?

今なら無料でお試し!

将来、自分の認知機能が低下するリスクがあるか、簡単に予測できるサービスが誕生。今なら無料で先行利用できます!

2024.08.08
【PR】頼れる家族がいない……入院・入居どうする?

おひとり様の備えはOK?

この先「おひとり様」になったら意外な落とし穴がいっぱい…。そんな不安に備える、おひとり様専用お助けサービスが誕生!

2024.07.22
50代から1日1分!脳トレクイズで楽しく脳を活性化

50代から1日1分脳トレ

認知機能を衰えさせないためには、早い時期から「脳を活性化」させることが大切。脳トレ効果がグッとアップするコツって?

2024.12.04