黒い感情を引き寄せる「不安」との向き合い方・2
“べき・ねば”思考、いい人疲れで限界寸前!!「ストレス沼」の抜け出し方
“べき・ねば”思考、いい人疲れで限界寸前!!「ストレス沼」の抜け出し方
公開日:2025年05月10日
前回の記事では、「失敗のトラウマ」や「100かゼロか思考」に陥って不安沼にハマってしまった大人女性の事例をお伝えしました。
今回は、真面目過ぎて「こうあるべき!」「私がやらねば!」というストレスから黒い感情にとらわれてしまった、働く大人女性2人の「ストレス沼」からの脱出法をお話します。
ストレス沼1:「べき・ねば」に執着し常にイライラ疲れ
「礼儀知らずが多過ぎです!」
ある日、施術中の菊乃さん(48歳)が苛立ちを抑え切れないといった様子で語り出しました。聞けばここ最近、立て続けに挨拶を無視される出来事が重なったそうで、怒り心頭のご様子です。
菊乃さんは更年期世代。閉経前後の10年間(人によってはもっと長い場合もあります)はホルモンバランスが乱れるので、肩こり・頭痛・ほてり・むくみ・冷え・生理トラブルなど、次々と出現する不快な症状に悩まされやすいのです。
菊乃さんの主訴である「イライラ」もその一つ。もちろん、生死に関わる大問題にはなりませんが、生活の質を低下させるには十分な症状。憤ることはエネルギーを使うので、疲れちゃうんですよね。
イライラ・ムカムカは、自分の要望が満たされず、心の落ち着きをなくしている状態です。特に、自分が「(こうする)べき・(こうせ)ねば」と思っていることが、その通りに進まない場合に出現しやすいのです。
菊乃さんのケースで考えるなら、「挨拶を返すのは人としての常識!」という思いが強過ぎたことでしょう。
もちろん、挨拶はした方がいいです。しかし、声をかけられた側が挨拶を返すかどうかの主導権は、その人に移ります。挨拶するのも無視するのも、その人の選択です。
いうまでもなく、どんな人にも歴史があります。年齢、育ってきた環境や人生の背景が丸ごと違うのですから、それぞれが身に付けた常識は違って当たり前。
逆に言えば、あなたの常識は誰かの非常識という可能性も否定できません。自分が信じている正しい行為が常に正義であるとは限らないのです。
私は人間関係のこじれの多くは、この「自分と他人の境界線」を理解できていないことから始まると見ています。
脱出法:価値観の合わない人は華麗にスルー
自分の正義を押し付けるがごとく、他人の言動を細かくチェックする暮らしは自律神経の乱れを招き、体調を崩す遠因にもなります。
そんな人におすすめしたい解決法は、「スルーカ」を高めること。
菊乃さんのケースで言えば、「ああ、挨拶しないタイプなのね」「うんうん、いろんな人がいるよね!」とだけ思って終了です。それ以上は自分の思考の中に、問題として立ち入らせないよう気を付けるだけです。
やがて菊乃さんは、「先生に『恋焦がれているわけでもないのに、不作法な人のことをずっと思い続けてるの、時間がもったいなくない?』って言われて、腹落ちしたんです。そんなヤツのせいで、体調を崩していたのかと思ったら、馬鹿らしくなってきました。私、そんな人に振り回されるの、やめます!」と卒業宣言をされました。
菊乃さんはそれ以降もしばらくは、知人が!同僚が!店員が!芸能人が!「あり得ない!」と吠え続けていましたが、徐々にそういう会話は減っていき、カチコチだった体も随分と緩んできました。
思考の持ち方次第で、体のこわばりはほどけていきます。不快にさせる人のことは、「自分を喜ばせることを思い浮かべる」などの方法で、一刻も早く脳内から追い出しましょう。
ストレス沼2:責任感からオーバーワークに…もう限界!!
瑠璃子さん(35歳)は、男社会の色合いが濃い業界でがんばってきた人で、社内では珍しい、女性管理職に任命されたそうです。ところが、そのあたりから不調を感じ始めます。
「会社は『これからは女性の時代』と私を担ぎ上げましたが、今でも周りの男性たちには、『女=軽く扱ってもよい存在』という暗黙の了解があるんです。やっかいな案件を押し付けられたり、社内でも『お荷物』と言われる男性が異動してきたことで、彼の尻拭い業務も増えたりで、ストレスは増える一方です」(瑠璃子さん)
肉体的にも精神的にも疲れた瑠璃子さんは、 施術室でも、よく「だるい」「イライラする」「限界かもしれない」と、泣いていました。
こういうときは、スパッと辞めて転職する、休職するという手段が必要かもしれません。しかし、瑠璃子さんは「仕事を途中で投げ出すような真似はできない」と、自分だけでどうにかしようとあがいていたようです。
この「自分だけであがく」クセは、真面目で責任感が強い女性に多いのですが、少し辛辣な言葉を投げかけるなら、「いい人でありたい」気持ちが強い人ともいえます。
「いい人」は素晴らしい性質です。ところが、「人から良く思われたい」「失敗は許されない」という思いが根底にあり過ぎると、苦しい立場にある自分をないがしろにしてでも、相手に迎合することを選ぶ習性があるのです。これは「心のクセ」の一つでもあります。
ここで、考えてほしいのです。究極、自分を守れるのは自分しかいません。他人は守ってくれないのですよ。よほど余裕のある奇特な人がいれば別かもしれませんが、自分を最優先に考えることは、誰にとっても同じなのです。
何より、仕事の進捗状況が芳しくないなら、瑠璃子さんは直属の上司に掛け合わなければなりません。放置すれば業務に影響するわけですから、瑠璃子さん個人ではなく会社全体の問題のはず。「そう言わず、よろしく頼むよ」などという甘言に呑まれている場合ではないのです。
脱出法:自分を追い込む「いい人」思考をやめる
今、日本でもようやくアサーティブコミュニケーションという「自分と相手の双方を尊重した自己表現」によるコミュニケーション法が認知されつつあります。これは相手の立場や意見を尊重しつつ、自分の主張も正確に伝え、双方が気持ち良くコミュニケーションを交わすことで、良好な人間関係を築くことを目的にしたものです。
つまり、一方的に自分の主張を押し通そうとするのも、相手の意見を尊重し過ぎるあまり受け身になってしまうのも、よろしくないということです。
特に、周囲の目や評価を気にし過ぎるあまり、自己表現を恐れてしまう人は要注意。瑠璃子さんのように、自分の意見や感情を抑え込み過ぎると、不満や不安を溜め込むことになり、体がストレスに蝕まれてしまいます。
もし、心の中の不平不満や負担を軽くしたいと願うなら、行動しましょう。自分を強く持つんです。あなたの体を助けられるのは、あなただけなんです。
瑠璃子さんは施術台に横たわりながら、「私、いい人やめないとダメですね……」と呟きました。もちろん、一朝一夕に「万事解決」という話にはなりません。けれども、しばらくして瑠璃子さんには明らかな変化が出てきました。
「先生、なんだか気持ちがラクになったんです。心のクセはなかなか治らないのですが、『納期遅れは私のせいじゃない』『責任取るのは、もっと上の人!』と思って、自分を追い込まないようにしています。
心の中の決め台詞は、『いつでも上席にぶっちゃけてやる!』です(笑)」
瑠璃子さんの体調回復までは、まだしばらくかかるでしょう。私は彼女の血流を良くしながら、「少しずつ強くなってくれるといいな」と施術に励んでいるところです。
【実践!】ストレス沼から抜け出すセルフケア「後頭部をマッサージする」
後頭部や首は、自律神経が乱れると、“こる”部分でもあります。両方の親指を頭の付け根に置き、両手を広げて、頭を指圧していきましょう。
こっているところを探しながら、ほぐしていきます。ついでに、こめかみもグルグルと。
眉毛の上下もツボが密集している場所ですから、眉毛に沿って軽く指圧してあげましょう。ほど良く気持ち良い、というくらいの強さが良いですね。
気付いたらやってみるという感覚で、血流を良くしてあげてくださいね。
次回は、無意識のうちに家族の世話や過去の失敗に縛られ、心身の不調を抱える2人の女性の話をお届けします。
教えてくれたのはこの2人
やまざき あつこさん
藤沢市辻堂にある鍼灸院『鍼灸師 やまざきあつこ』院長。開業以来30年間、8万人の治療実績を持つ。中学校教員を経て鍼灸師に。プロテニスプレーヤーやプロライフセーバー、S級競輪選手などの治療にも関わる。自律神経失調症の施術に定評がある。著書に『女はいつも、どっかが痛い』(小学館)。
鳥居りんこさん
とりい・りんこ 作家、教育&介護アドバイザー。2003年、『偏差値30からの中学受験合格記』(学研プラス)がベストセラーとなり注目を集める。執筆・講演活動を軸に、現在は介護や不調に悩む大人の女性たちを応援している。プレジデントオンライン、ダイヤモンド・オンラインなどのWEB媒体でコラムを連載中。
※本記事は『黒い感情と不安沼: 「消す」のではなく「いなす」方法』(小学館刊)より一部抜粋して構成しています。
「黒い感情を引き寄せる「不安」との向き合い方」をもっと読む
#1:失敗するのが怖い、…大人を臆病にする「不安沼」とは?
#2:いい人疲れで限界寸前!!「ストレス沼」の抜け出し方
#3:自分の役割、過去の記憶…心を縛る思い込みを解く方法
もっと詳しく知りたい人は、やまざきさんの書籍をチェック!

『黒い感情と不安沼: 「消す」のではなく「いなす」方法』(小学館刊)
「妬み嫉み僻みが止まらない」「わけもなく不安が募る」「SNS検索をやめられない」「『普通の幸せ』が手に入らなくて落ち込む」――。「黒い自分」との向き合い方や、痛くて苦しくてツラい「不安の沼」から這い出る方法が分かる一冊。女性鍼灸師のやまざきあつこさんが8万人におよぶセッションを通じて導きだした、「薬や医療に頼らずに、沼から這い出る方法」のヒントを伝えます。




