黒い感情を引き寄せる「不安」との向き合い方・3

自分の役割、過去の記憶に縛られ苦しい…心を締め付ける思い込みを解く方法

自分の役割、過去の記憶に縛られ苦しい…心を締め付ける思い込みを解く方法

公開日:2025年05月10日

自分の役割、過去の記憶に縛られ苦しい…心を締め付ける思い込みを解く方法

謎の不調の原因が、無意識のうちにとらわれた黒い感情だったというケースもあります。本記事では鍼灸師やまざきあつこさんの書籍『黒い感情と不安沼:「消す」のではなく「いなす」方法』より一部抜粋し、自分を縛る思い込みを解く方法を紐解きます。

第1回では、不安沼にハマり「失敗のトラウマ」や「100かゼロか思考」に陥ってしまった大人女性の事例を。第2回では、真面目過ぎて「こうあるべき!」「私がやらねば!」ストレスから黒い感情にとらわれてしまった、働く女性のエピソードをお届けしました。

第3回は、無意識のうちに家族の世話や過去の失敗に縛られ、心身の不調を抱える2人の女性の「自分への呪い」の解き方をご紹介します。

自分への呪い1:家族の世話があるのに動けない自分が情けない

自分への呪い1:家族の世話があるのに動けない自分が情けない
プラナ / PIXTA

百合子さん(51歳)が施術室でグッタリと横たわっています。メンタルクリニックでうつ病と診断されたそうです。「先生、薬を飲んでも良くならないんです。最近は倦怠感がひどくて思うように動けません」とおっしゃる。

聞けば、百合子さんはここ何年も、70代のご両親の元に通い、通院や買い物の付き添い、愚痴の聞き役などを担う生活を続けているといいます。

「私にも家庭があるので、実家に行けない日もあります。ところが、そうなると母からの電話攻勢が始まるんです。いい加減にあしらってはいますが、こんなにだるくては親の世話も無理ですし、子ども(高校生)の面倒も見られない。なんで、私、こんなに壊れた体になっちゃったんでしょう?本当に情けないです……」と百合子さんは力なく呟きます。

百合子さんのように、「自分に責任がないところで、勝手に不調になってしまった」という思考になっている人は本当に多いです。

しかし、人の体は勝手に壊れません。きっかけだってシンプルです。「疲れを溜めたら不調になる、気が病んでくる」「働き過ぎたり、寝不足になると動けなくなる」。不調の原因のほとんどがこれに由来しています。

脱出法:「良き妻・母・嫁・娘」の習慣から自分を解放する

脱出法:「良き妻・母・嫁・娘」の習慣から自分を解放する
kouta / PIXTA

百合子さんもそうですが、がんばることができる人って、自分の生活習慣や気質が原因で、体が限界を迎えたことに気付かないんですよね。

大抵の場合、体が先に悲鳴を上げます。「だるい」「眠れない」「胃腸の調子が悪い」「頭痛がひどい」「体がむくむ」「めまいがする」「皮膚がかゆい」「手足がしびれる」などなど、体のありとあらゆる箇所に不具合が発生します。

病院に行っても、多くは「不定愁訴」と診断され、提案されるのは対症療法が中心。それで治れば万々歳ですが、根本原因が解決されない限りは、不調は完全に消えにくいものです。

おまけに体と心は一体なので、体の具合が悪ければ「心の不調」に見舞われることも……。

そんな百合子さんへ、私からのアドバイスは「働き過ぎ・根を詰め過ぎ・がんばり過ぎでこうなったんだから、今はしっかり休みましょう」です。

しかし、百合子さんはひとり娘としての責任感からか、「休んではいられません。早く治して、両親の世話をしなければ……」と無理にでも起き上がろうとするのです。

世の中に「この人がいないと回らない」という任務はありません。その人がいなくても、なんとかなるのが世の常です。「自分が!自分が!」は要らぬ幻想です。人は生身なんです。体を壊してまでするお世話は美徳でもなんでもありません。もしつらいなら、自身が作っている「良き妻・良き母・良き嫁・娘」の習慣から自由になりましょう。

その後、百合子さんはご両親の元に行く回数を月1回に減らしました。電話の件も、夫から「しばらくの間、控えてほしい」と伝えてもらい、高校生の息子には「卒母宣言」をしてお弁当作りをやめたと言います。

結果、誰も何も困っていないとのこと。息子は必要あらば自らお弁当を作り、夫も家事に協力してくれるようになり、懸案の両親も「2人でどうにかやっている」そうです。

「息子が祖父母に携帯メールの打ち方を教えたので、今はそれが連絡手段になっています。愚痴までは打ち込めないらしく、業務連絡だけなので助かっています(笑)」(百合子さん)

来院から半年、ようやく百合子さんにも笑顔が戻ってきたようです。

自分への呪い2:過去の“失敗”を不意に思い出し苦しくなる

自分への呪い2:過去の“失敗”を不意に思い出し苦しくなる
KiRi / PIXTA

千草さん(46歳)は、「心臓がドキドキして脈が速くなることが多く、眠れないので体が休まらない」というお悩みで来院された方です。

なんらかの強いストレスから交感神経の働きが過剰になり、緊張状態に陥ったために起きた症状だと思われます。リラックスしたくてもできないのは、ツラいものがあります。

この症状を招いてしまう人は、 真面目で責任感があり、我慢強いため無理を重ねやすいのが特徴です。千草さんはまさにそれに当たりますが、もう一つ、奇妙な症状に悩まされているともいいます。

「普通に道を歩いているときでも、突然、過去の失敗のシーンがよみがえってきて、『ああああ!』って感じになってうずくまりたくなるんです」(千草さん)

聞けば、それは何十年も前の出来事の数々だそう。

「勤めていた会社での大失敗とか、なんであんなことやっちゃったんだろうとか。つまり、やらかしてしまったことが突然、フラッシュバックするんです。それが、頻繁にあるので嫌なんですよね……」(千草さん)

生死に関するような強烈なトラウマで、日常生活も困難になるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の場合は、専門家の指導を仰いだ方が良いものです。しかし、千草さんのように普段の暮らしの中で過去の失敗を不意に思い出し、いたたまれなさに悶絶してしまうのは、実はよくある話なのです。

人間は憶えていなければならないことをたやすく忘れ、反対に忘れていいことは執念深く憶えている面があります。千草さんのケースは、終わったはずの嫌な過去を現在進行形にして追体験しているのと同じこと。なので、そのたびに神経が緊張し、血の流れが悪くなります。いわば、自分自身で全身を痛めつけているわけです。

脱出法:過去の出来事は今の自分に危害を加えない

脱出法:過去の出来事は今の自分に危害を加えない
Hakase / PIXTA

もし、不意打ちのように過去の嫌な出来事が襲ってきたら、上を向きましょう。

実は上を向いたままアレコレ考えるのは、人間は不得手なのです。首は繊細な部位なので、実践するときは首を痛めないように気を付けながら、ゆっくりと天を見上げましょう。まずは「必要以上に考えない」という練習です。

次はその「嫌なヤツ」に告げてください。「あら、過去さん、また来たの?でも、私はおかげさまで今を生きられているから大丈夫よ!私、あの頃のままじゃないから!」と。嫌な出来事は「過去に起こった事実」でしかなく、「今の自分に具体的な危害を加えるものではない」ということを理解するのです。

誰の人生にも、その人にしかわからない、小さなトラウマの粒があります。しかし、過去の苦い思いがあっても、どうにかなって、なんとかなっているから今があるわけです。

昔から、「失敗は成功のもと」といいます。すべては自分の捉え方次第。もちろん、最初は予期せず現れる過去に振り回されるだけで、何の進歩もないかもしれません。しかし、何度も向き合っていくうちに、少しずつ「過去を考えても、しょうがない」という気持ちになっていきます。

ツラいことがたくさんあっても、人生とはそういうもの。だからこそ、「ツラいときを乗り越えれば成長できるんだ」と自分を励ましながら生きることが大事です。過去のツラさは成長への糧。ツラいことを乗り越えた先には成長が待っているはずです。

過去でも未来でもなく、この瞬間を生きているのだという実感が持てたらいいですね。私たちは、今を生きているだけで大成功なのですから。

【実践!】自分への呪いから抜け出すセルフケア「表情筋を動かしてみる」

実践!】自分への呪いから抜け出すセルフケア「表情筋を動かしてみる」
buritora / PIXTA

顔は心を映す鏡とも言います。鏡を見て「疲れてるなあ、私」と思ったときには、顔の表情筋を動かしてみるのがおすすめです。

まずは目を上目遣いにして、まぶたの筋肉を上げてみる。これだけでも目がパッチリします。

口角もニコッと上げてみましょう。さらに時間があればマッサージも。おでこ、こめかみ周辺、口周りなどを両手の人差し指・中指・薬指の3本でグルグルと円を描くように揉みほぐします。やさしい力加減で1日、1分程度で十分。表情筋のマッサージは血行が良くなるので、肌の弾カアップにつながります。筋肉が適度にほぐれることで、こわばりも解消できますよ。

女性にとっては「外からのケア」も大事なこと。顔全体が上がると気分もアップ。顔の表情が明るくなるだけでも、不安な気持ちが遠ざかります。

教えてくれたのはこの2人

やまざき あつこさん
藤沢市辻堂にある鍼灸院『鍼灸師 やまざきあつこ』院長。開業以来30年間、8万人の治療実績を持つ。中学校教員を経て鍼灸師に。プロテニスプレーヤーやプロライフセーバー、S級競輪選手などの治療にも関わる。自律神経失調症の施術に定評がある。著書に『女はいつも、どっかが痛い』(小学館)。

鳥居りんこさん
とりい・りんこ 作家、教育&介護アドバイザー。2003年、『偏差値30からの中学受験合格記』(学研プラス)がベストセラーとなり注目を集める。執筆・講演活動を軸に、現在は介護や不調に悩む大人の女性たちを応援している。プレジデントオンライン、ダイヤモンド・オンラインなどのWEB媒体でコラムを連載中。 

※本記事は『黒い感情と不安沼: 「消す」のではなく「いなす」方法』(小学館刊)より一部抜粋して構成しています。


「黒い感情を引き寄せる「不安」との向き合い方」をもっと読む

#1:失敗するのが怖い、…大人を臆病にする「不安沼」とは?
#2:いい人疲れで限界寸前!!「ストレス沼」の抜け出し方
#3:自分の役割、過去の記憶…心を縛る思い込みを解く方法

もっと詳しく知りたい人は、やまざきさんの書籍をチェック!

『黒い感情と不安沼: 「消す」のではなく「いなす」方法』(小学館刊)

『黒い感情と不安沼: 「消す」のではなく「いなす」方法』(小学館刊)

「妬み嫉み僻みが止まらない」「わけもなく不安が募る」「SNS検索をやめられない」「『普通の幸せ』が手に入らなくて落ち込む」――。

「黒い自分」との向き合い方や、痛くて苦しくてツラい「不安の沼」から這い出る方法が分かる一冊。

女性鍼灸師のやまざきあつこさんが8万人におよぶセッションを通じて導きだした、「薬や医療に頼らずに、沼から這い出る方法」のヒントを伝えます。

HALMEK up編集部
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