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永六輔×内藤いづみ対談

2024年01月10日

患者と医師の「死に方修行」対談

永六輔×内藤いづみ【特別対談】理想の大往生とは

人生100年時代、もう一度読みたい珠玉のインタビュー。今回は1994年に上梓された『大往生』がベストセラーとなった永六輔さん(2016年逝去)。親交の深かった医師・内藤いづみさんとの対談で、自身の最期をどうイメージしていたのか語られました。

お二人のプロフィール

永六輔(えい・ろくすけ)さん
1933(昭和8)年、東京・浅草生まれ。中学生のときにNHKラジオに投書して以来、ラジオを中心に作詞、テレビ、執筆、講演の仕事を続ける。主な出演番組にTBSラジオ「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」「永六輔の誰かとどこかで」。著書に『大往生』(岩波新書)、『男のおばあさん』(大和書房刊)など。2016年7月逝去、享年83。

内藤いづみ(ないとう・いづみ)さん
1956(昭和31)年、山梨県生まれ。ふじ内科クリニック院長。福島県立医大卒業後、東京女子医大などに勤務。86年からイギリスに渡り、プリンス・オブ・ウェールズ・ホスピスで研修を受け、95年、甲府市にふじ内科クリニックを設立。『笑顔で「さよなら」を 在宅ホスピス医の日記から』(KKベストセラーズ刊)、『死ぬときに後悔しない生き方』(総合法令出版刊)など著書多数。

 「僕はパーキンソン病のキーパーソン」

※この対談は、2013年9月号「いきいき」(現「ハルメク」)に掲載した記事を再編集しています。

2010年、パーキンソン病と診断され、前立腺がんであることも公表している永さん。一方、在宅ホスピス医の内藤さんはこの日、過労によるダウンから復活したばかり。そんなおふたりの体調の話から始まりました。

永六輔さん

  もう体調は大丈夫?

内藤 はい。やっぱり病院は頼りになりますね(笑)。病気になった人の気持ちがよくわかりました。

  はははは!「病気になってもいいけれど、病人にはならないように」って言った医者がいたの。いいこと言うなって思ったな。

内藤 永さんは調子はどうですか?

  パーキンソン病の影響で、体のほうはつらいですね。転びやすくなったし、同じ姿勢でずっとはいられないの。でも、僕も80歳だからね。病気だけではなくて、加齢の影響もあると思います。

内藤 パーキンソン病の患者さんにとって永さんは希望の星のようですね。

  僕はパーキンソン病のキーパーソンだから(笑)。この病気は完治することはないから薬で進行を抑えて、ラジオの仕事もできているんです。

内藤いづみさん

内藤 パーキンソン病で幻覚が出ることがありますけど、永さんはその幻覚ともうまく折り合いをつけていますね。

  幻覚は薬の影響もあるんです。骨折で入院したときに渥美清さんや(坂本)九ちゃん、女房とか亡くなった人が僕のベッドを囲んでいたんです。病院の廊下を演説して歩いたこともあったようで。

内藤 骨折のショックもあったんでしょうね。でも、草葉の陰にいるみなさんと再会できたんですね。

  今の時期、盆踊りをしますよね。盆踊りはあの世とこの世をつなぐ場所なんですよ。盆踊りは本来、暗い中でかさを深くかぶって顔を隠して踊るんです。そうすると、姿が亡くなった家族とか好きだった人とかに似て見えて、会いたかった人に会える、再会できるわけです。

内藤 盆踊りは再会の場ですか。私はちょっと怖がりなんですが、今年は永さんと盆踊りに行ってみようかしら。永さんと初めてお会いしたのが20年前。当時の永さんは「死んでも病院なんか行くもんか」って感じでしたよね。

  僕はこうやって病気になって世話になるまで、医者が大嫌いだった(笑)。でもね、内藤さんは僕が今まで思っていた医者と違った。在宅で看取りをやっている女医さんに初めて出会ったんだけど、大変な苦労を抱えているだろうに、明るい笑顔で一生懸命がんばっていて。

内藤 永さんは日本で最初に在宅ホスピスに関心をもって勉強してくださった方のおひとりで。お父様を病院で看取ったことがきっかけでしたよね。...

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