30年ぶりの介護同居生活でイライラが止まらない!

【介護体験談・前編】「親でもムリ…」母娘の介護生活の限界とは?

【介護体験談・前編】「親でもムリ…」母娘の介護生活の限界とは?

公開日:2026年01月19日

【介護体験談・前編】「親でもムリ…」母娘の介護生活の限界とは?

美恵子さん(仮名・59歳)は、フリーランスのデザイナー。介護をきっかけに90歳の母親と30年ぶりの同居生活を送っていますが、日々イライラは募り限界寸前。前編では、同居の経緯から、要支援になるまでの“母娘介護”の現実を聞きました。

突然、同居するしかなくなった美恵子さん(仮名・59歳)の場合

私は、フリーランスのデザイナーとして、離婚後は悠々自適なシングルライフを謳歌してきました。

しかし4年前、一人暮らしをしていた母が突然、アパートから立ち退きを迫られました。当時すでに80代後半だった母が一人で暮らせる物件は見つからず、やむを得ず、私から同居を提案しました。

「生活時間帯が違うので、食事はそれぞれで用意する。お互いに干渉はしない」。それが、私が母に出した条件でした。母は快諾し、たまたま空きのあった2LDKの部屋で、30年ぶりの同居生活が始まりました。

ところが、いざ同居してみると、母は自分の食事を用意しません。私が夜遅くに自分のために料理をしていると、「私も」と言ってテーブルで待っているのです。仕方なく、二人分を作るしかありませんでした。

「約束が違う。ルールを決めたいから話し合おう」。そう切り出すと、母は話し合いを拒絶。「いいよ、私は食べないから」と部屋にこもってしまいました。高齢者に食べさせないわけにはいきません。結局、母の時間帯に合わせて私が食事を作る生活になりました。

すれ違う生活習慣、募るイラ立ち

私は20代から30代で結婚していた時期を除き、ずっと一人で生活してきました。一人が身についていたし、基本的に夜型。母も一人暮らしが20年近く、それなりに癖がありました。

例えば、洗剤やペットボトルの蓋をきちんと閉めないのです。私が蓋の部分をパッと持とうとすると、中身をぶちまけてしまう。どうして蓋くらいちゃんと閉めないのかと、何度怒鳴ったかわかりません。

「蓋を持たなければいいじゃない」。母はしれっとそう言います。一般常識として蓋をしないほうがいけないのではないかと説得しようとすると、「ああ、もういい」と、また部屋にこもる。そんなことの繰り返しでした。

母の病気、続く体調不良

母の食生活は、非常にいい加減なものでした。一人暮らしに慣れていると言いながら、実際にはちゃんと食事をしていなかったようです。ごはんに梅干し、そんな食事ばかりで、野菜も肉もろくに摂っていませんでした。

私が料理をしてきちんと食べさせるようにしましたが、その頃には、すでに体は悪くなっていたのでしょう。同居して数か月後、やたらと嘔吐を繰り返すようになりました。

ある晩、とうとう真っ黒な液体を吐いて倒れました。救急車で搬送され、敗血症で「命は五分五分」と告げられました。幸い薬が効いて一命を取り留めましたが、胆管を塞ぐほどの大きな胆石が大量に見つかりました。

3度にわたる内視鏡手術、その後も続く体調不良。1年の4分の1は入院しているような状態が続きましたが、少しずつ落ち着いていきました。

そんな中で、母からは徐々に生きる意欲が失われていったのです。

どこまでも自己中心的な母

考えてみれば、母はもともと友達がいませんでした。かつては社交的であることを豪語していましたが、実際に友人とどこかへ行くという話は聞いたことがありません。習い事などで誰かと親しくなっても、その人の悪口や愚痴ばかり。「私だけのけ者にされている」といった被害者意識も強かったことを思い出しました。

大人になって同居してみて、「この人は、他者と人間関係をまっとうに作れないんだな」とよくわかりました。基本的に自己中心的なのです。私がうっかり包丁で指を切ってひどい出血をしても、横で平然と「お腹すいた」なんて言うのですから……。

仕事と介護の両立、そして私の限界

一時期は週に1、2回は病院通いが続き、タクシーで連れていく時間も経費も大変でした。決まっていた仕事をキャンセルせざるを得ないこともあり、私のイライラは募るばかりでした。

自分だけで抱え込むのはよくないと、地域包括支援センターに連絡して介護認定を受けようとしました。しかし、それを知った母は「家に他人が入ってくるのは嫌だ」と断固拒絶。ハンガーストライキを起こして部屋にこもりました。

一度は諦めましたが、その後また入院したのを機に、母を騙すようにして介護認定を受けさせました。結果は「要支援2」。それでも週2回、デイサービスに行けるようにはなりました。しかし、要支援認定だと事業者が部屋までは来てくれず、私が建物前まで送り迎えをしなければなりません。

これでは、私に仕事があるときはデイサービスに行かせられない。同居家族がいるとサービス内容が著しく低下するのです。介護は結局「家族がやれ」ということなのでしょう。

そう感じながらも、母の状態はさらに悪化していきました。後編では、「介護認定の見直し」と、「逃れたい」と思ってしまう本音についてお話しします。

亀山早苗
亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。