50代女性の体験談シリーズ:介護編 #3
介護施設に入居したからこそ直面した、罪悪感と“終わらない介護”
介護施設に入居したからこそ直面した、罪悪感と“終わらない介護”
更新日:2026年01月06日
公開日:2025年12月17日
やっと介護施設に入居したものの……
入居を決めた介護施設は実家と自宅の中間地点。その施設を利用していたママ友の「おばあちゃんが利用していてよかったよ」の口コミが決め手になりました。
たくさんの施設を見学していた経験から、その施設が安心できるとすぐ決められました。
入居手続きに必要な健康診断書や通帳のコピーを整え、入居まで約2週間。荷物をまとめ、約3時間の重要事項説明を終え、母は新しい生活を始めました。
やっとやっとここまで来た。その夜。 私は初めて、枕元の携帯の音を切って眠りました。
“介護のゴール”に、ようやくたどり着いた——そのときは、そう思っていました。
……しかし
入居は介護のゴールではありませんでした。私は思いもよらぬ感情と現実に向き合うことになるのです。
入居してわかった介護施設のリアルと心境の変化
母が入ったのは、60人規模の有料老人ホーム。
スタッフの方々は優しく丁寧で、私自身とても安心していました。けれども、通ううちに気になる点がいくつか出てきました。
食事のたびにできるエレベーターの渋滞
4階建ての建物の食堂が1階。食事のたびに全階の入居者が一斉に移動します。車いすの方や歩行が不安定な方も多く、エレベーター前は常に混雑。施設の動線が気になりました。
“居室のトイレ”という落とし穴
入居前は居室内にトイレがあった方がいいと思っていました。でも実際には、居室内で介護が完結してしまい、スタッフや他の入居者との関わりが減り、一人で過ごす時間が増えていきました。
周辺環境まで目が届いていなかった
静かな環境を優先したものの散歩には物足りなさを感じました。ちょっと寄れるお店がある方が主婦の母には楽しいのではないか。入居前はお散歩のことまで考えていませんでした。
私の望んでいた介護のゴールはここだろうか?――そんな迷いが芽生えました。
「私、母を捨てた……」罪悪感に襲われて
介護施設の入居で肩の荷が下りた……。そう思えたのは本当に最初だけでした。
主婦として家を守り大切に暮らしていた母が8畳ほどの個室で残りの人生を過ごす――。
「私、親を捨てた」そんな感情が心を渦巻き面会のたびに「ごめんね」を口にしてしまう。自分でも思いもよらなかった感情に戸惑っていました。
そして、もう一つの問題が生まれました。実家が空き家になったのです。
空き家になった実家の管理も、介護の一部だった
入居に気を取られ実家が“空き家”になることをあまり考えていませんでした。
介護施設入居後、まず手をつけたのは実家の冷蔵庫を空にすることでした。介護ベッドも返却。
少しずつ片付けようと思うものの、ゴミ出しが思った以上に負担になります。ゴミ出しの曜日に合わせて実家へ通う必要があること。
そして、「もしかしたら、母が元気なときに家に帰れるかもしれない」——そんな期待が、物を捨てる決断を鈍らせていました。
実家が空き家になると、やるべきことは意外と多くあります。
郵便物の転送、電気・水道・ガスの契約見直し、定期的な換気や通水、雑草や庭木の管理——。
空き家管理は想像以上に手間がかかり、「母は施設に入ったはずなのに、どうして私はまだこんなに介護に時間を取られているのだろう」と、次第に違和感を覚えるようになりました。
「なぜ私はまだ、こんなに“介護”に追われているんだろう……?」施設入居後も、私の生活は思っていたほど変わっていませんでした。
施設へ預けたことへの罪悪感と、空き家になった実家の管理。介護は形を変えただけで、私は毎日、母のことで頭がいっぱいになっていました。
——介護は、本当に終わったのだろうか。




