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2024.10.242021年12月23日
年金の受給額を減らさないためにも忘れずに!
退職後の国民年金への切り替え手続きについて徹底解説
退職後、14日以内に国民年金に切り替える手続きが必要だとご存じですか? 被保険者区分の手続きの違いや配偶者扶養の規定、月途中退職や同月内再就職の場合などについても解説。手続きを怠った場合や保険料免除・猶予制度にも触れます。
退職後は国民年金に切り替える手続きを
日本の年金制度は「国民皆年金制度」といわれ、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が「国民年金」に加入します。また、サラリーマンは国民年金に加入した上で同時に厚生年金に加入します。
会社に勤めている間は、税金や年金保険料の支払いは会社が代行していました。毎月の給料から税金や年金保険料は自動的に天引きされ、「サラリーマンの負担は大きい」と言われながらも、手続きは楽でした。
ですが退職後は厚生年金から抜けることになるため、転職活動を行ったり、再就職までに時間がある場合、あるいは就職しない場合は、国民年金に切り替える必要があります。しかも手続きは自分で行い、年金保険料は自分で支払わなければなりません。
まず、公的年金の被保険者区分を知る
日本の年金制度、いわゆる公的年金には、加入する人(被保険者)に合わせて3つの区分があります。
- 第1号被保険者:自営業、フリーランス、学生、無職の人など。
- 第2号被保険者:サラリーマンや公務員など。
- 第3号被保険者:第2号被保険者の配偶者で、年間の収入が130万円未満の人。
つまり、会社に勤めているときは「第2号被保険者」に該当しているのですが、会社を退職した後、転職活動を行う場合、あるいは再就職まで時間がある場合は「第1号被保険者」に該当し、国民年金への切り替えが必要になります。
また、第2号被保険者の配偶者が「第3号被保険者」の場合は、第2号被保険者の退職によって第3号被保険者ではなくなり、「第1号被保険者」となります。第2号被保険者と同様に第1号被保険者になるため、国民年金への切り替えが必要になります。
国民年金に切り替える必要がある場合
退職後、日をあけずにすぐに次の会社で働くのではない場合、国民年金への切り替えが必要になります。具体的には、次のような場合です。
- 退職後、転職活動を行う場合
- 退職後、しばらくしてから就職する場合
- 退職後、就職しない場合
手続きは退職後14日以内に!手続き場所・期限・必要な書類
国民年金への切り替えの手続きは、市区町村役場の担当窓口で行います。手続き場所、期限、必要な書類などは次の通りです。
手続き場所:市区町村役場(住民登録をしているところ)の国民年金担当窓口
期限:退職後14日以内
必要なもの:
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 退職日が確認できる(会社が発行する「退職証明書」「健康保険資格喪失証明書」など)
- 身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
- 印鑑
保険料の支払いには、納付書の他、口座振替やクレジットカードも使えます。口座振替を希望する場合は口座番号がわかるもの(通帳やキャッシュカード)と銀行届出印を、クレジットカード払いを希望する場合はクレジットカードも持っていくと手続きがスムーズにすみます。
配偶者の扶養に入る選択肢もあります
配偶者が会社員や公務員で厚生年金に入っている場合(第2号被保険者の場合)、今後の収入が130万円未満になるのであれば扶養に入ることもできます。つまり、第3号被保険者となるわけです。第3号被保険者になれば年金保険料の支払いは必要ありません。
配偶者の扶養に入るときの規定
配偶者の扶養に入るには、原則日本国内に居住し、以下の条件をすべて満たしていなければなりません。
- 年間収入の見込みが130万円未満
- 配偶者の年収の2分の1未満(別居の場合は仕送り額未満)
また、上記の条件を満たしていても、アルバイトやパートで働く場合に厚生年金の加入要件に当てはまる人は勤務先の厚生年金に加入するため、配偶者の扶養に入ることはできません。
手続きは退職後5日以内に!手続き場所・期限・必要な書類
配偶者の扶養に入るには、配偶者の会社(事業主)で手続きをしてもらいます。手続き場所、期限、必要な書類などは次の通りです。
手続き場所:配偶者の会社
期限:退職後5日以内(下記の書類が手元にない場合は、届き次第)
必要なもの:戸籍謄(抄)本、退職証明書または離職票のコピー
月の途中や入社と同じ月に退職したときの保険料はどうなる?
ここでは具体的にいくつかの事例を挙げて、国民年金への切り替えについて説明します。まず基本的なルールとして、次の3つを覚えておいてください。
- 厚生年金の加入資格は、退職日の次の日になくなる。
- 厚生年金の保険料は、資格がなくなった日が属する月の前月分まで支払う。
- 新しく加入する年金の保険料は、加入したその月分から支払う(月単位で計算)。
1と2が少しややこしいので、例を挙げると、月末に退職した場合(例えば、8月31日に退職した場合)、厚生年金の加入資格がなくなるのは、翌日の9月1日。厚生年金は、資格がなくなった日が属する月の前月分、つまり8月分まで支払うことになります。
月の途中で退職した場合の保険料
では月の途中、例えば「9月15日」に退職した場合を考えてみましょう。厚生年金の加入資格がなくなるのは次の日の「9月16日」。厚生年金は資格がなくなった日が属する月の前月分、つまり8月分まで支払います。
国民年金への加入は「9月16日」。加入した月の「9月分」から支払うことになります。
月末に退職し、月の途中で就職した場合の保険料
8月31日に退職し、9月16日から就職した場合は、9月1日〜15日までは国民年金に加入します。ただし、9月16日に厚生年金に加入したので、厚生年金を9月から支払うことになり、国民年金を支払う必要はありません。
月末に退職し、月の途中で入社したが、その月に退職した場合の保険料
8月31日に退職し、9月16日から就職したものの25日に退職した場合は、9月1日〜15日は国民年金、16日〜25日までは厚生年金、26日以降は国民年金となります。
最終的に国民年金に「9月26日」に加入したことになるので、加入した月の「9月分」から国民年金を支払います。
手続きを怠るとどうなる?
国民年金への切り替え手続きを忘れたり、怠ったりするとどうなるでしょうか?
日本は冒頭にお伝えしたように「国民皆年金制度」を取っています。国民は皆、年金制度に加入しています。会社を退職して厚生年金から抜けることになると、会社が資格喪失手続きを行うため、自動的に国民年金に移行することになります。
つまり、手続きを忘れたり、怠ったからといって年金制度からまったく抜けてしまうわけではありません。手続きをしなければ1~2か月すると勧奨状が届きますので、必ず手続きをしましょう。
では、手続きなどせず、放置したらどうなるのでしょうか? 次のようなデメリットが生まれる可能性があります。
手続きを怠ったときのデメリット
- 保険料の未納期間ができ、将来の年金額が減る
- 障害年金や遺族年金が受けられない場合がある
- 未納が続くと、督促状が届き延滞金が発生する
- 財産が差し押さえられる可能性もある
加入手続きを怠ってもメリットはありません。むしろデメリットとなる可能性があります。手続きは迅速に行ってください。
国民年金保険の納付が難しい場合は?
退職して収入が少なくなり、保険料を支払うことが難しい場合は、保険料の納付が免除になるなどの制度があります。未納にして放置するのではなく、免除制度・納付猶予制度を申請してください。
免除制度
リストラなどで予期せぬ退職となり収入が減ってしまったなど、国民年金の保険料を支払うことが難しい場合は、支払い免除の申請を行うことができます。前年(あるいは前々年)の収入などの条件がありますが、認められると支払いが免除されます。
免除の額は「全額」「3/4」「半額」「1/4」の4種類があります。
免除期間は年金受給資格期間としてカウントされます。また、免除の額によって減額されるものの、老齢基礎年金額の計算に算入されます。
納付猶予制度
20歳から50歳未満の人には、納付猶予制度もあります。
猶予期間は年金受給資格期間としてカウントされますが、老齢基礎年金額の計算には算入されません。
手続きをするメリットとは?
免除あるいは猶予のメリットは、前述したようにその期間が年金の受給資格期間としてカウントされることです。手続きしないまま未納になると、最悪の場合は年金が受け取れないことになってしまいます。
また免除・猶予の場合は、10年以内であれば支払いを免除・猶予された分を追加で納付することで年金の受給額を満額に近づけることができます。手続きしていなければ、その後、経済的に余裕ができても未納分を追納することはできません。
保険料の支払いが難しい場合は、ぜひ免除制度・納付猶予制度を利用してください。
国民年金の保険料は令和2年度は、月額1万6540円。退職して、しばらく無職になる場合や自分で事業を始める場合には相応の負担となる金額です。ですが、保険料の支払いは将来の年金に直結する問題です。
退職後の手続きは迅速に行い、支払いが難しい場合は免除制度・納付猶予制度の申請も検討しましょう。
■教えてくれた人■
望月厚子(もちづき・あつこ)
社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー。大手生命保険会社を経て独立。望月FP社会保険労務士事務所所長。年金事務所で相談員を務めるなど年金や労働等の相談業務、新聞・雑誌等への執筆、各種セミナー講師として活躍。厚生労働省社会保障審議会年金部会・専門委員会委員や成年後見人も務める。
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