「種種雑多な世界」水木うららさん
2024.11.302023年05月25日
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第6期第2回
エッセー作品「新茶」宮脇洋子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「お茶」です。宮脇洋子さんの作品「新茶」と山本さんの講評です。
新茶
「そろそろお茶にしない?」「これからお茶しに行っていい?」「お茶会する!」「お茶しに来てください」「お茶飲んでいく!」
大阪のお兄ちゃんは「お茶行けへん?」と言ってナンパするらしい。
コーヒー、紅茶、日本茶をひとくくりで、「お茶」と言っているということになる。
その昔、まだインスタントコーヒーも普及していなかった時代、緑色した大きなコーヒー豆の缶を大事そうに抱えていた母の姿が目に浮かぶ。
多分、そのころ名古屋で喫茶店をしていた叔母からの贈り物だったのだろう。
大正ロマンと言われる時代を生きた母はコーヒーを好み、毎晩、父と一緒に晩酌をする、どこか粋な人だった。
中学生だった私には、そのころコーヒーなどは、無縁の飲み物であったけど。
我が家では、子どもたちのお茶といえば、冬は番茶(3番茶)、夏になると麦茶が定番であった。
結婚して間もなく夫の転勤に伴い、3年ほど関東に住んでいた。
そのころ、ご実家が、静岡付近であったご近所のママ友が、手のひらの紙包みを、何やら大事そうに差し出し、
「新茶が入ったのよ。少しお裾分けね」
私はその時まで「新茶」というものを知らなかった。
新茶は毎年5月ごろに摘んだ一番茶を言うことをその時おしえられて知ったと記憶している。
それ故、あの頃それをどのようにして味わったのか、全く覚えていない。
年を重ね何時のころからか、日本茶の淹れ方を知るようになり、その美味しさと味わい方が、多少とも分かるようになった。
夫は他界し、息子たちもそれぞれ独立し、5人の孫のおばあちゃんになり、お一人様生活を謳歌している今、母と同様に毎日コーヒーばかり飲んでいるが、今ならあの日いただいた「新茶」を、少しは美味しく淹れることが出来るだろうか。
山本ふみこさんからひとこと
わかっているようで新茶については、ひとに説明することになったら、「ええと……」ともごもごしそうでした。
学ばせていただきました。新茶のありがたみと、尊さも、あらためて思いだしたことです。
気づかぬうちに、お母上のように粋なひとになっているにちがいない「宮脇洋子」のコーヒーのはなしも、いつか読んでみたいなあ……。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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