- ハルメク365トップ
- 連載
- 編集部コラム
- ハルメクイベントエッセー講座作品集
- エッセー作品「お茶の時間」綱則子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「お茶」です。綱則子さんの作品「お茶の時間」と山本さんの講評です。
お茶の時間
「お茶にしようか。」
3時には決まって台所に立って湯を沸かす母だった。
コーヒーだったり紅茶だったり、寒い時期はココアを飲みながらのお茶の時間の最後は、決まって母の昔話。
「米どころ」の越前平野の百姓の家に生まれた母は、いずれは百姓の家の嫁に出されるに決まってる。
母はそれがいやで、「大阪で働きたい。」と、おばに相談したところ、家政婦として働いていたおばは、たちまち洋装店の勤め先を見つけてくれた。
住み込みで、洋裁を教えてもらえる、しかも給料ももらえるというのだ。いい話ではないか。
そこで、祖父(母にとっては、父である)にどう話を切り出すか。祖母とおば2人は作戦会議で智恵を絞った。
ここからドラマが始まる。
「大阪のおばの所に遊びに行く。」と祖父に告げて、母は一人で家を出る。
祖母は全て承知で、母を送り出す。
後日、事の次第を知って、祖父は激怒。
「籍をぬいてやる。どこへでも行け!」と言ってしまった祖父。
「待ってました。」と、祖母は、かねてから準備してあった荷物を、すぐさま大阪に送った。
祖母と、おば達と母の似た者姉妹息の合ったミッション成功といったドラマのラストは、母の兄の、 「本人の好きにさしてやったら。」
のひとことで、祖父も振り揚げた「こぶし」をおろしたということだ。
仏間での読経を毎日続けていた祖父は、この朝夕の「おつとめ」を、家族にも強いた。
食事中のマナーについても、その他、諸々、厳しく、よく叱られたと母。
そんな堅物の祖父だったが、漢詩の勉強は長く続けていたことを、母は何度も褒めていた。
祖父のお茶の時間は、昔から、玉露だったらしい。
山本ふみこさんからひとこと
お茶の時間からの、昔語りです。
登場人物ひとりひとりの個性が際立って、どきりとします。おおげさでないところに、惹かれました。
ここからドラマが始まる。
という合図のような1行の立て方、見事です。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
■エッセー作品一覧■
-
子に遺すべき資産は?
「現金」か「不動産」か…どっちが得?メリット・デメリットは?相続や親族間のトラブルに悩まされないためにしておくべき準備とは -
突然の我慢できない尿意
実は多くのハルメク世代が悩んでいる「尿トラブル」…中には上手に対策をしている人も!気軽にできる対策って? -
個人情報管理できてる?
銀行口座・保険・クレジットカードなど、「デジタルの情報」をきちんと管理できていますか?煩雑にしていると思わぬ落とし穴が… -
お金の管理が簡単に!
三井住友銀行アプリに「シンプルモード」が新登場!スマホ操作が苦手な人でも簡単に使える便利機能が満載です! -
認知症セルフチェック
「もの忘れが増えた」「名前が思い出せない」という症状に心当たりがある方は要注意!それ、「認知機能のレベル低下」が原因かもしれません… -
健気な姿がかわいい!
「思わず笑顔になる」と巷で話題の「永遠の2歳児・ニコボ」!ハルメク世代の2人に、ニコボとの生活にハマる理由をお聞きしました! -
生前親に●●聞き忘れると
老親の契約や登録しているサービス、これらを子が把握していないと将来ムダな出費や面倒なトラブルに発展する可能性が!特に見落としがちなのは… -
50代~お金の増やし方
将来を見据えて、50代から「まとまった資金の調達」が重要になります。どんな選択肢があるか、ご存知ですか? -
60日で英語が話せる!
英語をマスターするのに「完璧」はいらない!初心者でも60日で英語が話せるようになる、驚きの3つのコツとは? -
今なら無料でお試し!
将来、自分の認知機能が低下するリスクがあるか、簡単に予測できるサービスが誕生。今なら無料で先行利用できます! -
おひとり様の備えはOK?
この先「おひとり様」になったら意外な落とし穴がいっぱい…。そんな不安に備える、おひとり様専用お助けサービスが誕生! -
50代から1日1分脳トレ
認知機能を衰えさせないためには、早い時期から「脳を活性化」させることが大切。脳トレ効果がグッとアップするコツって?