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- コーチングは50代女性の仕事と人生のカギになるか?
知的好奇心にあふれる50代女性が、今から始めてみたいあれこれに、コラムニストの柚原路子さんがトライします。最終回は「コーチング」。仕事の上でも、人生を再構築する上でも役に立つと話題のスキルを身に付けるには?
コーチングは、50代女性の何に役立つのか?
今回のテーマは、コーチング(coaching)。コーチングとは人材開発手法の1つで、対話を通して相手の目標達成や自己実現を支援するというものです。これを提供するのがコーチならば、これを受ける相手はクライアントと呼ばれています。
私の周囲では、2000年代に入って、人材教育会社がコーチングを取り入れた教育プログラムの提供を開始したとか、一般の企業が自社の人材活性化にコーチングを活用し始めたなど、ビジネスの中でコーチングが話題に上る機会が増加。かと思えば、最近ではコーチングのスキルを学んだという友人の話も耳にするようになってきました。
そのうち一人は、部下のマネジメントのためにコーチングに注目したマネージャーAさん(60代女性)。もう一人は、定年後の人生設計を考える中でコーチングに興味を持ったBさん(50代女性)。Bさんは、ひとまずはセルフコーチングを考えているようですが、かつての“バリキャリ”を卒業してアルバイト勤務中だけに、いずれコーチとして独立することも考えていないわけでもなさそうです。
コーチング・ブームの加速に伴ってコーチ養成ビジネスに参入する企業が増加し、玉石混淆(ぎょくせきこんこう)ともいえる様相を呈する中、私自身は正直言ってこの世界に懐疑的な印象を禁じ得ませんでした。しかし、友人たちの話を聞くにつれ、これを頭から色眼鏡で見るのではなく、とにかく一度、体験してみようと思うに至ったのです。
今回、私が体験したのは、アンテレクトが運営する「銀座コーチングスクール」の「コーチング無料体験講座」と、コーチ・エィが運営する「コーチ・エィ アカデミア」の「コーチング・プログラム説明会」。いずれも各校のサービス内容がわかり、コーチングの基本が学べる無料のイベントでした。
少人数の講座で「コーチングとは?」がわかる
「銀座コーチングスクール」は、ネット検索で知ったところで、全国30か所以上で開催されている「コーチング無料体験講座」の中から東京・吉祥寺クラスを申し込み。その日の会場となったのは、JR吉祥寺駅からほど近い建物の一室でした。
当日の講師は、2017年からコーチを始めたという女性で、参加者は、40代とおぼしき女性と私の2名。講座は、講師がホワイトボードを用いながら説明するスタイルで進められ、当日、学んだスキルを使ってのコーチング・セッションを含めトータルで90分にわたり、みっちりと指導を受けました。
自己紹介、同校の紹介に続く前半の講義をかいつまんで紹介すると、次のような内容でした。
「コーチ」は、1500年代から用いられている「馬車」を語源にした言葉で、馬車が乗客を目的地まで送り届ける役割を持つのと同様に、「対象者の目標達成をサポートする役割を持つ者」を意味。
また同校の定義によると、「コーチング」とは「パフォーマンス向上のために、対話によって対象者を勇気づけ、『気付き』を引き出し、『自発的行動』を促す、コミュニケーションのスキル」。
さらに、トレーニングやティーチングとの違いについて、
・「コーチング」は馬車、現代に当てはめるとタクシーで、乗客が主体となって行き先などを決める。
・「トレーニング/ティーチング」は汽車、現代に当てはめると電車で、運行者が主体となって行き先などを決める。
このように説明してくれたことで、コーチングの定義をしっかりと腑に落とすことができました。
前半に続いては、「コーチングの基本スキル」を学んだ上で、実際にセッションを行いました。
1.認める
2.聴く
3.質問する
4.フィードバックする
5.リクエストする
この5つの基本スキルのポイントを説明してもらった上で、特に「聴く」と「質問する」のスキルにフォーカスして、コツを教わりました。
「聴く」ではうなずく・相づちを打つ、相手のケースに合わせる、リフレイン(相手の発言を繰り返す)、沈黙する(相手の発言を待つ)、「質問する」ではオープンクエスチョン(Yes Noで回答できない質問)、5W1Hに則って質問する。なるほど、私にもできそうです。
もう一人の参加者とペアを組み、交互にコーチ役とクライアント役を担う形で、「子どもの頃、楽しかったことは?」をテーマに、5分間/回のセッションに挑戦!実際に体験してみると5分間は思った以上に長く、途中で何度も残り時間を確認してしまいました。
ここまでで無料体験講座はほぼ終了。その後は、直近開催の有料クラスの紹介と受講意向を尋ねられましたが、即決はできないと返事をし、最後にアンケートに回答した上で、もう一人の参加者と共に会場を後にしました。
無料体験講座を受講して数日がたったある日、同校から復習メールが送られてきました。これは体験内容を振り返ると同時に補足するもので、1~7回ではコーチングの仕組み、効果など回ごとのテーマに基づきポイントを解説、最終回で同校における学び方を紹介。セールス色は控えめで、講座内容を思い出し、記憶に定着させる上で、役立つサービスだと感じました。
大人数なれど、魅力的な内容ときめ細かいサービス
「コーチ・エィ アカデミア」は、最近、コーチングにハマっているという友人の一人に教えてもらったところ。インターネットで検索すると「コーチング・プログラム説明会」(2時間)を無料開催していたので、早速申し込んでみました。
会場は、東京・九段下にある同社オフィス内の会議室。スクール形式で20余りの座席が用意されており、30~40代の女性を中心とした参加者が開始を待っていました。
時間になるとスタッフの女性が登壇し、スクリーンにパワーポイントを投影しながら「コーチング・プログラム説明会」が始まりました。
最初に「関わりの可能性を、ひらく」というこの会社のミッションを聞き、「他者との関わりを通して、新しい意味や知識、理解を創造すること」をコーチングの目的に据えているところが、私自身のコーチングへの興味とオーバーラップして、とても興味深く感じられました。
同社ではコーチングを「目標達成に必要な知識、スキル、ツールが何であるかを棚卸しし、それをテーラーメイド(個別対応)で備えさせるプロセスである」と定義。コーチングにおける会話の基本は、「問いかけて、聞く」ということであり、そこで話題にするのはビジョン、知識、スキル、ツール、ファウンデーションなど。またコーチングとティーチングの違いを説明した上で、双方をうまく組み合わせることが大切と言われていました。
続いて、同社ではコーチング型マネジメントにフォーカスしており、資格を持ったコーチによる「1 on 1」コーチ、電話会議による「電話クラス」、目標達成に向けた職場などでのコーチングの実践を1~1年半にわたり継続する仕組みになっていることなど、カリキュラムの全体像が紹介されました。
この説明会でよかったのは、受講生の話が聞けたことです。2018年に入学したという大手製薬会社主任研究員のHさんは、管理職になったのに伴い、部下の育成のためにコーチングを学び始めたのですが、同校を通して、さまざまな業界の受講生との会話の機会が持てたことで、結果的にはご自身のモチベーション向上につながったと当時を振り返っておられました。
また、終盤には、隣席の女性とペアを組んで、ビジョン・メイキング(自分の仕事やキャリアにコーチングをどのように生かしたいか、何を実現したいか)についての 「コーチングエクササイズ」を実施。学んだことを体験する機会も設けられていました。
まずは講師が、コーチングにおける3つのコツを伝授。
・相手が自由に話せるような雰囲気を作る
・相手に興味・関心を持って聞く
・相手のイメージが広がる質問をする
これに基づいて4分間のコーチングを行い、終わるとクライアント役が2~3分間で感想を述べるというエクササイズを、交互に1回ずつ行いました。私がペアを組んだのはIT企業の人事担当になって間もない女性で、対する私は執筆業とあって、前提となるお互いの立場の違いを踏まえることに手間取り、正直、満足のいくエクササイズとはなりませんでした。
最後に、同社の学習の内容や方法、受講生の属性などの説明を聞いた上でアンケートに回答し、2時間のプログラムが終了。アンケートには説明会の感想等と並んで、「電話クラス」の体験希望を問う設問がありました。これは体験者を対象とした電話によるコーチング・セッションで、定められた時間に、所定の電話番号に電話を掛けると参加できる仕組みになっています。
私は後日、「電話クラス」にも参加。説明会当日はもちろん、事前・事後のメールの送受信においても、アンケートへの回答に基づき同じスタッフがきめ細かい対応を行っていた点が印象に残りました。
コーチングの目的に応じた信頼できるスクールの選択を
私が参加した2つのイベントは、前者がコーチとして独立することを想定、パーソナルな領域でのコーチングにフォーカスしているのに対し、後者は職場での利用を想定、業務上の課題を解決する一手法としてコーチングにフォーカスしているという意味で、それぞれにターゲットが異なる印象を受けました。
コーチングを学んでいる私の友人の話を振り返ってみても、50代のBさんが自分自身のセルフコーチングを視野に学習を開始したかと思えば、60代のAさんは職場での利用にフォーカスして学習を開始したわけで、同じ「コーチング」でも、目的に合わせて学び方を選ぶことが大切だといえそうです。
また、今回の体験を終えて思ったのは、このところのコーチングへの注目の背景には、社会の変化が横たわっているのではないかということです。昨今では、情報化の進展により伝統的な価値観が揺らぎ、個人の生き方においてさまざまな選択肢が生じれば、企業などの組織にも上意下達一辺倒ではなく、個人に権限移譲することが求められるようになっています。こうした中、現代を生き抜く方法論として、ONとOFFの双方においてコーチングに注目が集まっているのではないかと思ったわけです。
もしもあなたがコーチングを学んでみたいのであれば、その目的はどんなところにあるでしょう? 自分自身の生き方を模索して幸せな人生を送るためなのか、それとも、現在のお仕事における課題解決、あるいはご自身がコーチとして独立するためでしょうか?
先にも述べたように、コーチ養成ビジネスへの参入企業は、玉石混淆ともいえる様相を呈しています。こうした中、まずはあなたがなぜコーチングを学びたいのか、その目的を明確にした上で、各社の情報を可能な限り収集。目的に応じた、信頼できる方法を選択することをオススメします。
A. 銀座コーチングスクール
2001年にサービス開始。全国30か所以上に拠点を展開し、年間受講者2000名以上を誇る。A(基本スキル編)、B(ストラクチャー編)、C(セッション戦略編)、D(プロスタート編)の4クラスを展開、受講料4万~5万円(税抜き)。「コーチング無料体験講座」は有料受講に先駆けてのトライアルとして開催。4月からは国際コーチング連盟の認可クラス「国際資格取得コース」がスタートする。運営は株式会社アンテレクト。https://www.ginza-coach.com/
B.コーチ・エィ アカデミア
1997年にサービスを開始した、日本初のコーチ養成機関。国際コーチング連盟(ICF)により、コーチ育成基準を満たすプログラムとして日本で初のACTP(Accredited Coach Training Program)に認定されている。コーチング型マネジメントについての理論、スキル、および実践方法が、電話クラス、1on1コーチ、職場での実践を通して体系的に学べる。また、コーチ・エィのコーチング研究所が提供するシステムで、コーチングの効果を客観的に可視化することが可能。「リーダー向けコース」100万円(税抜き)、「プレミアムコース」150万円(税抜き)。「コーチング・プログラム説明会」は、ウェブによるビデオミーティングや電話でも開催中。運営は株式会社コーチ・エィ。https://coachacademia.com/
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