通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第5期第5回

「100字エッセー」通信第5期参加者の作品

公開日:2023.03.02

随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。今回、参加者は100文字で書くことに取り組みました。1人1作ずつ、ご紹介します。講評では山本さんの100字エッセーもお楽しみください。

「100字エッセー」
「100字エッセー」通信第5期参加者の作品

100字エッセー

※敬称略、50音順です。

石川久子
新聞の身の上相談欄を、毎日読む。
相談者の欄「フーン、悩みはいろいろね」と思う。
回答者欄「直球の答え、変化球の答え、思いがけない答え」考え方もいろいろだな。
でも、今は、新聞に投稿するほどの悩みのない私。幸せなんだろうな。

板谷越りん
木(こ)の葉を拾い、冬の枯れ枝越しの青空を楽しむ。
四季バラの最後のつぼみがやっと開花したのは12月。
今年もたくさんの楽しみをありがとう。また来年ね。
あら。挨拶したら弱ったカマキリが一緒にお辞儀してくれた。

いぬいみき
奈良は柿の産地。美味しい柿がたくさん手に入る。
今年も干し柿に、ベランダの物干し竿が占領される。
光り物以外には興味がないのかカラスもつつきに来ない。
我慢の1か月後には甘い柿が私のお腹と日常を満たしてくれる。

大井洋子
いつもは通らない田んぼ道を散歩。
空には半月。枯れススキの向こうに、橙色の夕空をバックにした家々のシルエット。美しい別世界に入り込んだようだ。帰宅後も夢心地。
いたた。ズボンの裾がひっつき虫だらけだった。

岡崎栄子
100字エッセー、なんと難しいこと。締め切りが迫っている……。気ばかりが焦って仕様がない。
こうして5本目に書こうとしている文章が意味のないものになる。
締め切りを守るという大事。ともかく、これを死守しよう。

かわばたえつこ
台風一過の朝、「日帰りで宝塚を観に行きます」と友からラインが入る。
だらだらと新聞を読んでいる私との何たる違い。せめて散歩にでも出よう。
遊歩道の途中でリスが2匹目の前を横切る。リスから元気をもらった。

きたのふみ
ずいぶんと日が短くなったと思ったら、あと3週間もすると冬至なのだな。
あっという間に暗くなり、私の気持ちを急きたてる。
でも、大丈夫。本格的な寒さがくる前にちゃんと昼間がのびていくことも知っている。

木村真理
日暮れ時。富士山から四方八方に広がる雲は、まるで空の大舞台。
監督「ふじさん」、仕立てた俳優雲たちを手裏剣よろしく投げ飛ばす。
白鳥雲をだいだらぼっち雲が追いかけ、続くうさぎ雲。
そして芝居終わらぬ間に夜の闇。

熊本美千代
ネエ、あなたは今日どのような表情で過ごしたいのかい。
笑うのも怒るのも自分で選ぶことができるのだよ。
自分の心を豊かにしてくれるものに囲まれていることを忘れ、私は不幸だなんて思わないようにね。……自分に。

近藤陽子
幼い頃 お隣の2才年上のふみちゃんとよく遊んだ。
ふみちゃんのおじい様は、会えば缶を振ってドロップスを1つ掌にのせて下さった。
いちご、みかん、ハッカ?何味がでるか楽しみだったサクマ式のドロップスの販売が終わる。

佐伯典子
あの人この人の髪色が淡くなってきた。
毛染めをやめるつもりという。大賛成。私も挑戦しよう。
早速美容院でカットだけをおねがいする。
さてこれからどんな経過になるのかな。グレイヘアへの道のり、未知の楽しみ。

栞子
深まるあき。きんつば。バレーボール。ルイボスティ。意味調べ。ベーコンチーズバーガー。外国語。ゴーカート。トマト。とんがった鉛筆。つくね。年末年始。しなちく。雲のかたち。知恵の輪。
わたしの好きなもの。

綱則子
「ツケにはハネ」「二目(にもく)のアタマは見ずハネよ」「音のする方ばかり見ず、碁盤全体を見て」
先輩の格言をヒントに打ち続けているが、勝てない。
勝てないの連続だが面白い。
石の活き死にが面白くて今日も打つ。

中江 翆
午前10時半、やっと太陽が顔を出した。
山に囲まれたこの地域、冬になるまで日の出がこんなに遅いとは……。
太陽が暖かく明るいこともあらためて知った。
外に出て光を体一杯に浴びる。この喜び、古人は知っていた。

原エリカ
刺身が残ったら「漬(づ)け」、煮魚の汁は「煮凝り」。
どちらも翌朝の炊き立て御飯によく合う。小学生の孫たちも大好きだ。
熱々のご飯に乗せてプルプルを楽しむ。
溶けかけを御飯と一緒に海苔でくるめば極上の「いただきます」。

増田万紀子
寒い朝、お気に入りの赤い靴下をはく。何年もはいている冬の必需品だ。
さあこれで万全と思ったら親指がひやっとした。見ると穴があいている。
糸と針を持ってきて、ちくちくと繕うのが楽しい。
「まだまだよろしくね」

三澤モナ
数年ぶりに関東に住む妹と会った。
ランチしたりお茶したりと思っていた私に妹が「歩こう」と言う。
青空のもと、皇居の周りをひたすら歩いた。15000歩も。
彼女は今、自転車にはまっているらしい。元気すぎる。

水木うらら
「100字連想ゲーム」を思いつく。100字。言葉。紡ぐ。蜘蛛(くも)の糸。
芥川龍之介。蜜柑(みかん)。瀬戸内……。連想の「輪」がつながり、いと楽し。
心の奥深くに沈んでいる、とっておきのひと言を探し当てて、ご機嫌になりたい。

宮本昌子
散歩の折 なぜか夫は「鍵をもってるか」と家にもどるまで、何度もくりかえしたずねる。
孫息子が言う「それでおばあちゃん 何て答えるの?」
「うん持ってる 持ってるって」
「やさしいんだね」

宮脇洋子
丹波から枝豆が届いた。今年は、枝豆ご飯でも炊いてみようかな。
幼な友達にお礼の電話をする。その後、鳥取の長芋を送る。
彼女との会話はいつも同じ。
「この1年もお互いに元気でよかった!」年に2回の電話で安否確認。

山本ふみこさんからひとこと

山本ふみこ
山本ふみこ さん

「100字5本エッセー」の展覧会です。

読みながら、作品からことばをはじめ、自分のほかの書き手の思い方、ものごとの受けとめ方を学んでいただけたら、と思います。 わたしも学ばせていただいています。

100字エッセーをわたしも、皆さんへ贈ります。

きょうのわたしと、明日のわたしはちがう。〈書く〉も〈読む〉も、まるきりちがっているはずだ。二度と同じことは書けない、二度と同じようには読めないのである。常にあたらしいわたしが書くのです、読むのです。(99字)

山本ふみこ

ハルメクの通信制エッセー講座とは?

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。

エッセー作品一覧

ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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