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- エッセー作品「18歳」石川久子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月の作品のテーマは「会話で書くエッセー」です。石川久子さんの作品「18歳」と山本さんの講評です。
18歳
「夜になるといろいろ考えて、眠れないことがよくあるのよ」
「夜中に目が覚めてもんもんとして……」
「オーマ(孫はみんな私のことをオーマと呼ぶ。)、そういう時はこうゆうふうに考えるんだよ。今考えて解決できることは考えればいい。でも、今考えてもどうにもならないことは、考えないの。」
「ふうん。なるほど」
娘との話を聞いていた孫が、横から入ってきてこう言うのである。小学5年生の男子。
人生長く生きるといろいろあって、悩むことも多い。でも、この一言は私にとって衝撃だった。
それからというもの、眠れない夜があると、その一言が思い出される。11歳でも悩みはあるのかな。
その孫が18歳になった。
法律が変わって、18歳は成人。高校3年生大学受験の時だ。
でも、孫は大学の受験はせず、就職を選んだ。
中学からバスケットに明け暮れて、高校もスポーツ推薦で入学。3年間バスケットに打ち込んだ。
「大学行かないの?」
「勉強したいことがないし、目的がないのに4年間もったいない」
「じーじは反対。やっぱり大学行ったほうがいいんじゃない」
「高校では就職の人はどのくらいいるの」
「2人くらいかな」
「え……」
「勉強はやりたくなったらやればいい。いつでもできるよ」
「じーじより稼ぐようになるから」
まだ先がみえていない18歳だが、しっかりしている。
9月、第一志望だった企業から届いた手紙。
「内定、きたよ」
面接は緊張したというが一歩前に進んだ。
「あと半年何するの、みんなは受験で大変でしょう」
「自動車免許取って、バイトして……」
夢は膨らむ。
「卒業しないとね」「うん」
大人になるにはまだ、階段がたくさんあるようだ。
山本ふみこさんからひとこと
18歳のお孫さんを、ひとりのひととして見る書き手。そればかりでなく、おそわる姿勢をも持つ書き手。
何かを説明しようとするとき、会話は頼みになりますよ、というのは、こういうことです。
これで、18歳の決意が伝わるでしょう?
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在第5期の講座を開講しています(第6期までの募集は終了しました)。次回第7期の参加者の募集は、2023年6月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年7月号の誌上とハルメク365イベント予約サイト(6月更新予定)のページをご覧ください。
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