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- エッセー作品「終の住処と煌めきと」浦田しおりさん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。浦田しおりさんの作品「終の住処と煌めきと」と青木さんの講評です。
終の住処と煌めきと
家を建てることにした。
築40年以上経った我家は、このままではあと2、30年住み続けることは難しく、リフォームをすると次々と直すようになると診断されたからだ。それに加え、退職した私に考える余裕と自由に行動できる時間ができたことも大きかった。
姉や友だちからは、「モデルハウスを沢山見て、それぞれのいい所取りをするのよ」とアドバイスをもらっていた。
しかし気後れする質の私には、見て回るなんてできないだろうと内心思っていた。ところが、私でも行けそうな近いところで催されるオープンハウス見学会の案内チラシが郵便受けに入って来た。
当日行ってみると、とても感じの良い笑顔の若い男性が1人の接客に追われていた。一生懸命なのが却って気の毒になり、適当にひとりで見て回りますのでと伝えた。私がお客様のいない収納室をのぞき込んでいたら、先程の笑顔の青年に背後から声をかけられた。
助っ人が来てくれたのでと紹介されたのが、社長で彼の父親だった。
お父さんは、息子さんとは印象が違って、眉と眼差しから精悍な感じを受け、背筋の伸びた姿勢は少々取っ付きづらさを感じた。
見学を終えて帰ろうとすると、社長は私と一緒に外まで出て、私の車が出て行くまで見送ってくれていた。
主人から家のことを全部まかされていた私は、この出会いを運命的なものに感じた。
この親子に、この会社に頼むことを決めた。
建築のための話し合いは社長と頻繁にあり、1対1でこうして人と話をするのは久しぶりだった。
社長の仕事は無駄がなく順次進んでいった。
仕事の話が終わるとコーヒーをお出しした。その間は、いろいろなことが話題になり楽しかった。ふんわりと浮いたような心持ちになった。私も新築に必要な用事を足すのに躊躇なく行動できるようになっていった。
1年後、終の住処が完成した。
40年も前のままの暮らしをしていた私たち夫婦は、今どきの住宅設備の進化の素晴らしさに驚嘆した。
現代の暮らしを実感し、年老いてこそ必要な利便性に賛嘆の声が出て、心が煌めいている。
青木奈緖さんからひとこと
家を建てるということは、それ自体、幸せなことですが、家族にとっては一大事業です。
エッセーの題材としては、これだけで充分6作書けるでしょう。建て替えであれば、古い家の片づけに始まり、建築会社との膨大なやりとり、家族それぞれの希望をどう実現するか、実際に建築が始まったら職人さんとのやりとりなど。
原稿用紙2、3枚の量ではとても書ききれない体験や思いがあるはずです。それらをどう作品にまとめるかが腕の見せどころですね。新築のお宅に暮らす、気持ちの高揚がうきうきと伝わります。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。
現在は第5期の講座を開講中(募集は終了しました)。
次回第6期の参加者の募集は、2023年1月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年2月号の誌上とハルメク365WEBサイトをご覧ください。
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