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- 青木奈緖さんのエッセー通信講座第5回参加者の2作品
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。大切な思い出を形に残すべく取り組む参加者たちの作品から、青木さんが選んだ2つのエッセーを紹介します。
青木奈緖さんが選んだ2つのエッセー
「青木奈緖さんのエッセー講座」参加者による家族のエッセーです。クリックすると、作品と青木さんの講評をお読みいただけます。
「一本の電話を受けて」加地由佳さん
梅雨空の午後1時前、お昼を済ませたのに何かもう一口ほしいなと……
「アマリリス嫌いといいし父の事」中田富子さん
ある日、父が言った一言である。その花を嫌いと言った理由を「な……
エッセーに関する質問・お悩みに動画で回答
エッセイストの青木奈緖さんを講師に、半年間でエッセーの書き方を学ぶ通信制エッセー講座。
このエッセー講座のテーマは「家族のエッセー」。日本各地からの参加者が毎月1本、家族との大切な思い出をエッセーの形に残すべく取り組んでいます。
参加者ひとり一人がエッセーを書くうちに直面する悩みや疑問は、実は、書く人にとって共通する学びの宝庫です。ハルメクでは、月1回青木さんが参加者の質問に回答する動画を制作。現在の参加者がいきいきと学べるように、また、どなたでもご覧になって学びを生かせるように公開しています。
第5回となる今回の動画では、「エッセーで人を褒めることの難しさ」について、青木さんにお話を伺いました。
Q.「エッセーで人を褒めることの難しさについて。私は心底そう思っているのですが、まるでおちょくっているようにもとられますよね」
青木さん:人を褒めること、感謝の気持ちを表すこと、子どもや孫のかわいさを表現すること、実はこれらには共通の難しさがあります。慣れないながら図にしてみました。
作品を介して読者と著者は共通のイメージを持つことができます(図右の重なりの部分)。
つまり共感するわけですが、この部分が多いほど、読者と著者とは交流できていることになります。
質問者は、対象を一生懸命褒めようとしているのですが、読者の立場から見ると「自分のしていることは対象をおちょくっていることではないか?」と心配になったわけです。俗に言う褒め殺しです。
著者の気持ちに読者が共感できなくなっている状態を図で表すと、図左のようになります。読者は「言葉を連ねてあるけど空虚だ」とか「褒めているようだけど伝わってこない」と冷めた感情でいます。
では、どうすればいいか? 私が思うに、人を褒めるとき、著者は自分の感情ばかりで書かない方がよいのだと思います。「本当に素晴らしい人でした」「一生忘れません」と感情をそのまま書けば書くほど、読者の方は白けていってしまうのですから、いい手ではありません。
そうではなく、対象がどんな人だったか、様子や言動を描写することで伝えるのがおすすめです。
例えば、スマホを落としてしまい、誰かに拾ってもらったとします。
「今時、こんなにありがたい人がいるんだ」と書くのではなく、「その人はこちらが驚かないように声をかけてくれた」とか「笑ってくれた」とか印象に残る様子を書き留めた方が、感情を直接的に書くよりも、読者の対象に向かうイマジネーションがはるかに働くと思いますが、いかがでしょうか。
これは、孫や子どもがかわいいと書く場合も同じです。孫や子どものことを書きたい方はたくさんいらっしゃると思いますが、他人の孫であっても、あるいは孫や子がいない人が読んでも共感できるような作品を書くにはどうしたらよいか。
祖母や親としてのあふれる愛情を直接表現するのではなく、対象である孫を描写することです。例えば「夏の日に、暑さをちっとも気にしないで、カブトムシの観察を一日中していた」など、描写した方が成功する確率は高いです。
最後に、もうひとつ。感謝の念を伝えたいときです。身内に病人がいて、作品に医者や看護師が登場する場合、身内としては感謝するしかないと思いますし、その気持ちはよくわかります。しかし、感謝のあまり過剰に敬語を使い過ぎると、丁寧になり過ぎて効果を発揮できていないことがよくあるのです。
例えば、何かものをもらったときに「いただいた」と言うことは自然なことと思いますが、エッセーとして文章に書く場合は必ずしもいいとは限りません。著者と読者は感情を共有する立場にあるので、あまりに卑下され過ぎると、読者の方も居心地が悪くなってしまうということが起きがちですので、注意してみてください。
動画では、さらに詳しいお話や、青木さんの朗読もお楽しみいただけます。朗読するのは、家族だからこそ聞きそびれてしまった時の後悔を描いた中田富子さんの「アマリリス嫌いといいし父の事」です。
エッセイスト・青木奈緖さんのプロフィール
1963(昭和38)年、東京生まれ。文豪・幸田露伴を曽祖父に、作家・幸田文を祖母に、随筆家・青木玉を母に持ち、自身もエッセイストとして活躍。著書に『幸田家のきもの』(講談社刊)、『幸田家のことば』(小学館刊)他。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。
書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。
現在、第5期の講座を開催中です(募集は終了しました)。
次回の参加者の募集は2023年1月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年2月号の誌上とwebサイト「ハルメク365」内の『イベント予約』でご案内します。
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