山本ふみこさんのエッセー講座 第9期#1
2024.10.312024年03月25日
エッセーの疑問・お悩みに答えます
山本ふみこさんのエッセー講座 第7期#6
随筆家の山本ふみこさんが講師を務めるハルメクのエッセー通信講座 第7期の第6回。今月のテーマは「思いがけなさもさびしさも楽しんで」。参加者の作品から山本さんが選んだ3本のエッセーとともにお楽しみください。
コトコトラジオ 第6回
エッセーの書き方、ちょっとした豆知識やおすすめの本、山本家の最近のできごとなどなど……自由なテーマで話します。
<便利な再生方法>
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今月のテーマ:「聞いて聞いて」
今回で第7期も最終回。ということで、いつもより多くの質問やお便りを紹介しました。
参加者の声①「テーマからずいぶん離れたところに着地してしまうことが多いです。連想ゲームのようです。」
山本さん:「何も考えずに机に座らない。始めの部分くらいはイメージしてから書きはじめましょう」ということはお伝えしてきましたが(参考:「コトコトラジオ第1回」 18:37ごろ)、着地点は別ですね。思いがけないところに着地するということは、わたしにもよくあります。
今回のテーマは「聞いて聞いて」でしたが、まさに、自分自身の聞き役になって書いているうちに、面白いところへ運ばれている……。この感じが好きで、書いているのかも。
参加者の声②「作品を読んでアドバイスをいただけるのは心強い。ひとりで書き続けるのはさびしい。やはり読んでもらえる人あってこそですね。半年間、別の世界を旅してきたようです。」
読んでくれる人があるというのは、怖くもあるんだけど、いいことですね。そして自分自身が未来の読者になるということも、とても大事なことです。
さて、一人で書き続けるのはさびしい……。
書いていくことの入口には、「孤独」とか「さびしさ」みたいなものがあって、それをどのように捉えるか。そして本当はもっと好きになってもいいんじゃない? とも思うのです。
書いていくことで、さびしさが抱えている魅力みたいなものも、確かめられるかもしれません。
参加者の声③「『私』『わたし』……漢字とひらがなで迷います。」
どうぞお好きな方を。わたしは「わたし」とひらがなで書きますが、それが正解ということではありません。
「する為(ため)」「する事(こと)」「色々(いろいろ)」「様々(さまざま)」……これらはひらがなにしたほうがよいという、書きもの全般の共通認識があります。
でも「“為”という漢字が好きなので、漢字のままで」、それもいいんです。ファッションテーマみたいなものですね。
ひらがなにするとやわらかくなります。でもひらがなばっかりだと、ちょっと読みにくくなります。漢字がきゅっと締めてくれるという面もあるんですね。
どちらを使うかは、ご自分で決めると風合いが出せると思います。
コトコトラジオ第4回にて、「言葉の選び方」というテーマでもお話ししています。ぜひ参考になさってください(参考:「コトコトラジオ 第4回」 10:12ごろ)
参加者の声④「もっと読みたい!」と思ってもらえる書き出しができたらいいのに
私たちは「季節の挨拶から始める」というような、文章のルールを学んできました。あえてその決まりごとを無視して、魅力的な言葉が浮かんだらいきなりそこから始めてみるといいかも。
文章の結びについても同様です。まとめすぎないこと(参考:「コトコトラジオ第3回」 25:49ごろ)。
そして、「もっと読みたい」と思ってもらうということは、「また会いたいな」と思ってもらうということと同じ。
今まで関心のなかったテーマにもあえて触れてみるとか、誰かに話を聞いてみるとか……そんなことを通して、魅力的な自分になっていくことも大切です。
#山本さんおすすめの一冊
『雪のひとひら』ポール・ギャリコ 著/矢川澄子 訳(新潮社 刊)
この講座では、毎回と言っていいほど「雪のひとひら」という作品を紹介しています。
作者はポール・ギャリコという男性。ユーモアあふれる作品もたくさんある方ですが、これはとても美しい本です。
訳者は矢川澄子。ハルメクの連載「だから、好きな先輩」でも矢川澄子のことはお話ししていました(参考「だから、好きな先輩34」)。
「雪のひとひら」は、高い高い雲のあたりで生まれたしずくの一生を、「女の一生」に当てはめて書かれた物語です。
雨となって地上に落ちて、川の流れに乗ったり、海へ出たり……水滴としての人生を歩みます。家族とともに生きたり、別れ別れになったり、苦労もします。それが女の一生と重なって見えるよいうような描き方なのです。
そして矢川澄子という人がすごいなと思うのが、タイトルの訳し方です。原題は「Snowflake」。これを「雪のひとひら」と訳しているのです。
作中には、ほかにも澄み渡った素敵な言葉がたくさんあります。どうぞお読みください。
※「だから、好きな先輩 - 矢川澄子」ラジオエッセイはこちら。山本さんが全文朗読し、執筆時のエピソードも語ります(ハルメク365の会員に登録のうえご視聴ください)。
山本ふみこさんが選んだ今月のエッセー
クリックすると、作品と山本ふみこさんの講評をお読みいただけます。第7期第6回で取り組んだエッセーのテーマは「聞いて聞いて」です。
「うさぎノート」久保田道子さん
「抗ガン剤はやらないよ。残りの日が限られているなら、ぼくは、……
「ヒガンバナ」小林澄江さん
彼岸花には黒ゴマを4粒並べたような立派な蟻が……
「カーなしライフ」栞子さん
出会ったころ、夫はすでに自分の車を持っていた。バブルのころで……
お便りお待ちしています!
今月もお聞きいただきありがとうございました。山本さんへのお便りを募集しています。この記事の下にある「コメントを書く」よりお送りください。ラジオネームを併記していただけたら、番組の中でお名前をお呼びします。
随筆家・山本ふみこさんのプロフィール
1958(昭和33)年生まれ。出版社勤務を経て随筆家に。ハルメクでは連載「だから、好きな先輩」やエッセー講座(会場開催と通信制)の講師でおなじみ。著書に『朝ごはんからはじまる』『まないた手帖』(ともに毎日新聞社刊)『おとな時間の、つくりかた』(PHP文庫刊)『暮らしと台所の歳時記 旬の野菜で感じる七十二候』(PHP研究所)『こぎれい、こざっぱり』『台所から子どもたちへ』(ともにオレンジページ刊)『家のしごと』(ミシマ社刊)ほか多数。公式ブログは http://fumimushi.cocolog-nifty.com/
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
次期通信制8期の作品は5月から順次ハルメク365で公開予定です。(募集は終了しております。ご了承ください。)
第8期も引き続きどうぞお楽しみに!
「寂しさや、孤独を好きになってもいい」ということを聞いて、自分の中に新鮮な風が吹いてくるようでした。この頃、何もかもが停滞してしまって相談できる人もいないから絶望的だと思っていたのですが、一人で散歩している中、この言葉を思い出して、こうやって一人で散歩できるのってなんて自由で気持ちの良いことなんだろうと思いました。そんなふうに気づかせてくれてありがとうございます。