山本ふみこさんのエッセー講座 第9期#1
2024.10.312024年11月30日
エッセーの疑問・お悩みに答えます
山本ふみこさんのエッセー講座 第9期#2
随筆家の山本ふみこさんが講師を務めるハルメクのエッセー通信講座 第9期第2回。解説番組「コトコトラジオ」、今回のテーマは「書いていく自由と、書かない美学」。参加者の作品から山本さんが選んだ3本のエッセーとともに、お楽しみください。
解説番組・コトコトラジオ 「書いていく自由と、書かない美学」
<便利な再生方法>
再生画面の右下に「チャプターマーク」があります。クリックすると、今回のトピックが一覧で表示されます。
聞きたいトピックをクリックすると、その位置から番組を再生することができます。
質問:既定の文字数(800~1000字)で書くのが難しい!
山本さん:「800~1000字にまとめるのが難しい!」という声をよくいただきます。特に多いのは「1000字に収まらない!」というお悩みです。そんな時に意識したいのが「削る力」。
例えばこんな一文があります。
「憧れていた先輩の真似をして…」
この場合、「憧れていた」という部分を削ってみるのはどうでしょうか?「先輩の真似をする」という行為自体が、すでに「憧れ」を表していますよね。あえて「憧れ」という強い言葉を使わないほうが、気持ちが自然に伝わることもあるのです。
一方、「少ない文字数で書ききってしまう」という方には、「膨らませる力」を意識してみるのがおすすめです。ただし、文章全体を無理に膨らませるのではなく、すでに書いた一部分を少し掘り下げてみてください。このとき、「当たり前じゃない部分」を膨らませると、書き手の個性が自然と際立つ文章になりますよ。
「鰯雲人に告ぐべきことならず」
俳人・加藤楸邨の句にこんなものがあります。
「鰯雲 人に告ぐべきことならず」
やはりね、人に告ぐべきでないことはあります。何を書かざるべきか、それは書き手の選択です。
トラブルや悔しかった出来事を書きたくなることもあると思います。その書き方には注意が必要です。ユーモアを交えて書ければいいのですが、誰かを攻撃するような表現はしないほうがいいですね。書かれた相手は、その作品の中で反論できませんから。
質問:エッセーと小説の違いとは?
はっきりとした線引きは難しいものです。
一般的にエッセーは、書き手自身を主語とし、自分に近い視点で書かれることが多いですね。一方で、小説は主人公のほかに第三者が登場し、物語を進めていく形式が特徴です。
ですが、「小説のようなエッセー」を書いてみたいと思うなら、ぜひ挑戦してみてください。エッセーだからといって、作り話をしてはいけないという決まりはありません。
両者の境界を気にせず、ご自分のなかで描かれるのを待っている、あれやこれやを引っ張り出して書いてみてください。
山本ふみこさんが選んだ3つのエッセー
クリックすると、作品と山本ふみこさんの講評をお読みいただけます。第8期第4回で取り組んだエッセーのテーマは「集める」です。
「カレーと星々」説田文子さん
南西の空が暮れて、金星がまばゆくひかり、その右下30度に弓張月が銀に浮かんでいる。空を見上げて、思わず足を止める……
「ゆうすげ」傳田啓子さん
気がついたら。サフランが紫色の花を咲かせていた。今年は紅葉する前に、パラパラと葉が枯れ落ち、すす病で黒くなったり……
「種種雑多な世界」水木うららさん
昔から切り抜きが好きだった。いつごろ始めたのかはっきり覚えていないが、気がつくと全国紙や雑誌の記事を……
お便りお待ちしています!
山本さんへのお便りをお待ちしています! この記事の下にある「コメントを書く」よりお送りください。
随筆家・山本ふみこさんのプロフィール
1958(昭和33)年生まれ。出版社勤務を経て随筆家に。ハルメクでは連載「だから、好きな先輩」やエッセー講座(会場開催と通信制)の講師でおなじみ。著書に『朝ごはんからはじまる』『まないた手帖』(ともに毎日新聞社刊)『おとな時間の、つくりかた』(PHP文庫刊)『暮らしと台所の歳時記 旬の野菜で感じる七十二候』(PHP研究所)『こぎれい、こざっぱり』『台所から子どもたちへ』(ともにオレンジページ刊)『家のしごと』(ミシマ社刊)ほか多数。公式ブログは http://fumimushi.cocolog-nifty.com/
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
次期開催については、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
エッセー作品一覧