- ハルメク365トップ
- 連載
- 編集部コラム
- ハルメクイベントエッセー講座作品集
- 「主人が『気管切開』をした」大橋悦子さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。大橋悦子さんの作品「主人が『気管切開』をした」と青木さんの講評です。
主人が「気管切開」をした
あれから5年が過ぎた。
主人が難病の診断を受けてからだ。
徐々に体が動かなくなってきて、食べることも難しくなり「胃ろう」も造設した。
ある日、主人を介護施設のディサービスに送り出し、私はほっと一息をついていた。
その日の午後一番に、施設から電話があった。
「熱があるので今から帰したい」とのことだった。
その頃、主人は頻繁に熱を出し肺炎になることがしばしばあった。
連絡を受けて、私は一瞬またかと思って薬の用意を始めた。
間もなくして、スタッフ2人に送っていただきベッドまで運んでもらった。氷枕と脇の下用の氷を冷凍庫から出してクーリングをしてもらった。実に手際のよい対応だった。
熱は39度を超えていた。
その後、訪問看護師さんに連絡し、すぐに来てもらい、訪問医の先生の指示を受けて、「入院」となった。
看護師さんが、救急車を呼んで下さり、かかりつけ医のいる病院へ行くことになった。
病院に着くと、担当の先生がすぐに診て下さった。救急隊員が前もって、病院側と連絡を取って下さっていたのだ。
以前から、担当の先生は、「いつでも受け入れるから連れて来なさい」とおっしゃっていたので、安心だった。
そして、診察後、「誤嚥性肺炎で気管切開をしないと助からない」というお話で、すぐに同意を求められた。
考える間もなく、私は同意しサインをした。
2、3ヶ月前から痰が多くなり、頻繁に吸引をしていたが、なかなか痰を取り切れず、肺の機能も限界だったのかもしれない。主人の顔は赤くほてり、とても苦しそうな表情をしていた。
一応処置をしていただき、少し落ち着いてからの手術となった。
2日後、手術は無事に済んだが、主人は「声」を失うことになった。
「胃ろう」の手術、今回の「気管切開」と体にいろいろな装置をつけていくことが、はたしていいのだろうか。
この先にあるのは「人工呼吸器」なのだろうし……。ふと私の頭に、迷いが浮かんだ。
「声」を失った主人は、55日間の入院生活を終えて退院した。
また、介護の日々が続くけれど、私は心を新たに先を見つめていた。
青木奈緖さんからひとこと
この方は講座の参加1回目から一貫して、難病に罹患なさった旦那様についてシリーズで書いていらっしゃいます。
病状の進行とそれに伴う生活の変化、そのたびごとに下さねばならない人生の決断、介護のあれこれを、たじろぐことなく覚悟を持ってお書きになっています。医療・介護の専門用語も出てきますが、適切に説明を加え、状況をとても巧みに伝えています。
誰にでも書ける作品ではありません。お気持ちが痛いほどわかります。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。
2022年9月からは第5期の講座を開講します(募集は終了しました)。
次回第6期の参加者の募集は、2023年1月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年2月号の誌上とハルメク365WEBサイトをご覧ください。
■エッセー作品一覧■
-
子に遺すべき資産は?
「現金」か「不動産」か…どっちが得?メリット・デメリットは?相続や親族間のトラブルに悩まされないためにしておくべき準備とは -
突然の我慢できない尿意
実は多くのハルメク世代が悩んでいる「尿トラブル」…中には上手に対策をしている人も!気軽にできる対策って? -
個人情報管理できてる?
銀行口座・保険・クレジットカードなど、「デジタルの情報」をきちんと管理できていますか?煩雑にしていると思わぬ落とし穴が… -
お金の管理が簡単に!
三井住友銀行アプリに「シンプルモード」が新登場!スマホ操作が苦手な人でも簡単に使える便利機能が満載です! -
認知症セルフチェック
「もの忘れが増えた」「名前が思い出せない」という症状に心当たりがある方は要注意!それ、「認知機能のレベル低下」が原因かもしれません… -
健気な姿がかわいい!
「思わず笑顔になる」と巷で話題の「永遠の2歳児・ニコボ」!ハルメク世代の2人に、ニコボとの生活にハマる理由をお聞きしました! -
生前親に●●聞き忘れると
老親の契約や登録しているサービス、これらを子が把握していないと将来ムダな出費や面倒なトラブルに発展する可能性が!特に見落としがちなのは… -
50代~お金の増やし方
将来を見据えて、50代から「まとまった資金の調達」が重要になります。どんな選択肢があるか、ご存知ですか? -
60日で英語が話せる!
英語をマスターするのに「完璧」はいらない!初心者でも60日で英語が話せるようになる、驚きの3つのコツとは? -
今なら無料でお試し!
将来、自分の認知機能が低下するリスクがあるか、簡単に予測できるサービスが誕生。今なら無料で先行利用できます! -
おひとり様の備えはOK?
この先「おひとり様」になったら意外な落とし穴がいっぱい…。そんな不安に備える、おひとり様専用お助けサービスが誕生! -
50代から1日1分脳トレ
認知機能を衰えさせないためには、早い時期から「脳を活性化」させることが大切。脳トレ効果がグッとアップするコツって?