- ハルメク365トップ
- 連載
- 編集部コラム
- ハルメクイベントエッセー講座作品集
- エッセー作品「メガネばあば」小田原薫さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月の作品のテーマは「見落とす」です。小田原薫さんの作品「メガネばあば」と山本さんの講評です。
メガネばあば
メガネが苦手だ。
レンズが曇るとよく見えないし、はずすと置いた場所を忘れて探し回る。
その上マスクをするから、顔中覆われている気がして息苦しい。
でも今はメガネなしの生活は考えられず、正真正銘の「メガネばあば」になった。
中一か中二だったか、席替えで後ろの席になったら、黒板に書いてある白いチョークの字が見えにくかった。
メガネかけなきゃ、と焦ったが両親に相談しなかった。
前の席に代わってもらったり、横の席の友達に、板書の文字を見せてもらったりして、メガネと縁のない学生生活を過ごしていた。
メガネをかけるのはかっこ悪くて嫌だ、というただそれだけの理由だった。
他人の目を意識する気持が大きくて、自分にとって何が一番大事なことかをじっくり考えることをしなかった。自分中心の考えを押し通し、はっきりとした自覚がないままに、年を重ねていった気がする。弱くて頼りない自分だった。
メガネをかけずに過ごしていた時期に、見落としたり、見過ごしたりして、気がつかなかったことがあったに違いない。
顔の形や雰囲気に似合うメガネを選んで、かっこいいでしょ、と「メガネ女子」の生活をしていたら、今とは違う暮らしぶりになっていたかもしれない。
でも七十路(ななそじ)になった「メガネばあば」の私には学びがある。
腰の手術をしてから、訪問リハビリに励んでいるが、外出するのに歩行器を使うのをためらっていた。
メガネと一緒の結果になっては大変と、玄関の扉を一気に開けると春風が優しく頬に当たった。
山本ふみこさんからひとこと
美しい原稿用紙に、風格のある万年筆の文字(愛らしさも感じさせるのです)。うっとりとして読みました。
内容も、同じ。物書きは、反省なんかしてはだめです。したければ、短く反省して「つぎ」にまいりましょう。
「メガネばあば」の結びをご覧くださいな。メガネと一緒の結果になっては大変と、玄関の扉を一気に開けると春風が優しく頬に当たった。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在、参加者を募集中です。申込締切は2022年7月4日(月)まで。詳しくは雑誌「ハルメク」7月号の誌上ハルメク旅と講座サイトをご覧ください。
■エッセー作品一覧■
-
巻き爪を予防する靴選び
健康的な足を守るために「靴選び」はとても重要。巻き爪や足トラブルを防ぐ靴の選び方と履き方をシューフィッターに聞きました。 -
「朝の尿モレ」これで解決
どっと押し寄せる朝の尿意。そんなやっかいな「朝の尿モレ」に特化した吸水パッドをハルトモさんがお試し!はたして効果は? -
薬局の待ち時間を解消
薬局でのキツい待ち時間。仕方ないとあきらめていませんか?アイン薬局のアプリを使えば、実は待ち時間問題は解消できるんです! -
突然の出費はこれで解決!
住宅ローンや子の教育費などお金がかかる50~60代。一方で親は高齢となり、その金銭面の援助も不安。解決策を探ります。 -
老化を早める「体の酸化」
体の酸化度(サビ度)をチェック!「老けやすい生活」を送っていませんか? -
1回10分~の健康習慣♪
一流講師のレッスン100以上!本会員は無料で受け放題!日替わり「まいにちレッスン」の詳細はこちら★