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- エッセー作品「きまぐれどり」高山美年子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクのエッセー講座。2月に始まった教室コース 第7期の参加者の作品から、山本さんが選んだエッセーをご紹介します。テーマは「日曜日」。高山美年子さんの作品「きまぐれどり」と山本さんの講評です。
きまぐれどり
元旦の朝、庭の椿の木に大きな鳥が止まっていた。
カラスくらいの大きさだ。鳥に詳しい娘が
「ゴイサギの幼鳥だね」
と言った。
我が家の周りには田んぼがあるので、用水路も残っている。春にはカルガモの子育ても見ることができるし、サギも何種類か見かける。
さて、このゴイサギ君(男の子かどうかはわからないが)近所の屋根に止まっている姿を、年末に見かけていた。朝から晩までじっとしていて、時々毛繕いをしたり、片足をピーンと伸ばしたり結構笑わせてくれた。
娘の説明では、本来は仲間と暮らしているが、はぐれ鳥になることもあるらしい。羽に白い模様があり、星をちりばめたように見えることから、ホシゴイと言われているそうだ。
元旦からゴイサギ観察が始まった。夜行性なので、あたりが薄暗くなると出勤だ。餌を探しに飛び立つ。(明日も来るかな)と思いながら見送った。
翌朝雨戸を開けると、居りました。昨日と同じ椿の木の枝に止まっています。気に入ってくれたようです。それからずっと姿を見せてくれました。
ゴイサギは「五位鷺」と書くそうです。
鳥の中で、唯一官位を授けられた鳥。かっこいい。きっと良い年になるだろうと、勝手ににやにや。
「あれ? 帰ってこないね」
2週間程経った日曜日の朝、ゴイサギ君は帰って来なかった。次の日も、その次の日も。がっかり。カラスにいじめられたのだろうか。帰り道がわからなくなったのだろうか。我が子のように心配した。そんな私に、
「駅の近くで見かけたよ」
と夫が言った。(どの子も見かけは一緒でしょうが!)と心の中で思った。
しだいにあきらめもついてきた。もっと居心地の良い場所を見つけたのかな。なんて思うようにした。
次の日曜日の朝、椿の木を見ると、止まっているではないか。いつもの場所にゴイサギ君が。
(どこに行っていたのよ!)(何をしていたのよ!)なんていろいろ言いたかったけれどやめた。
「お帰りなさい!」
山本ふみこさんからひとこと
観察と、構成の確かさに打たれました。
作品は「である調」で書かれていますが、途中、「翌朝雨戸を開けると、居りました」から始まる数行が「です・ます調」となります。
このリズムの変化をどのように考えて決めたのか、「高山美年子」に確かめることができなかったのですが……、これも、新鮮な効果を上げているように思います。
効果と言えば。
言いたいことを言わずに、このひとことで結ぶ「お帰りなさい!」のひとこともいいですね。
山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは
随筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。
参加者は半年間、月に一度、東京の会場に集い、仲間と共に学びます。月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。
次回の参加者の募集は、2022年6月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始します。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから
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