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- エッセー作品「神田神保町」小坂美千代さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクのエッセー講座。教室コースの参加者の作品から、山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第4回の作品のテーマは「かけはし(橋)」です。小坂美千代さんの作品「神田神保町」と山本さんの講評です。
神田神保町
神田神保町……エッセイ講座に原稿を送ろうと住所を見てびっくりした。
神田神保町。すずらん通りの中程の中古楽器店を曲がった、三軒長屋の真ん中に小料理店「やっこ」があった。
この店は25年前まで伯母が営んでいた店だ。やっこは、L字のカウンターに10席に満たない店だ。
昭和30年頃に先代から引き継ぎ江戸ッ子の伯母がきりもりしていた。
この店の常連客は、集英社初代社長の陶山巌氏をはじめ、小学館やこの界隈の出版社の重鎮の方々だった。なぜこの店にこの方々が出入りする事になったのか、私は知らない。
幼い私がこの店が開いている時間に出かける事はなかったが、休日には頻繁に出かけた。
ガラガラとガラス戸を開けると、呑み屋特有の臭いがした。生涯独身の伯母は姉と私を溺愛してくれた。
子供の頃からこの街を歩いた。古書店街。
駿河台下からお茶の水駅までの坂道には明治大学があり、ニコライ堂、聖橋を渡ると湯島聖堂へ続く。
目を閉じると、この街の活力が伝わってくる。
先日、神保町のランドマークでもある三省堂書店が、老朽化のために来年建て替えすると聞いた。
むしろ私が通い親しんでいた三省堂はそれ以前のビルだった。私が20歳の頃今のビルになった。
新しくなって40年。私も歳をとったものだ。
ここ数年、訪れていなかったが久々にグーグルマップのストリートビューで散策してみた。
コロナ禍の影響もあって、数々の名店の閉店もありさびしく思うが、コロナが一段落したら出かけてみようと思う。
このエッセイ講座。受講を迷っていたが、伯母が背中を押してくれたような気がする。
山本ふみこさんからひとこと
ハルメク本社のある神田神保町との縁(えにし)について、書いてくださいました。
文中の「目を閉じると、この街の活力が伝わってくる」は、作品の急所です。
その数行のちにある「私も歳をとったものだ」は、いらないのではないでしょうか。
こんなことをつぶやくうち、記するうち、ことさら歳をとってしまうようではありませんか。
歳なんか気にせず、生きて(書いて)ゆこうではありませんか。
美千代さんの伯母さま、書き手としての美千代さんの背中をやさしく押してくださいまして、どうもありがとうございます。
山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは
随筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。
参加者は半年間、月に一度、東京の会場に集い、仲間と共に学びます。月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。
現在、第7期の参加者の募集中です。申込締切は2022年1月7日(金)まで。詳しくは雑誌「ハルメク」1月号の誌上とハルメク旅と講座サイトをご覧ください。
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