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- エッセー作品「時の流れ」加地 由佳さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。加地由佳さんの作品「時の流れ」と青木さんの講評です。
時の流れ
我が家は3人の子どもに恵まれました。
私の子育ては、手作りの食事や衣類を用意して、あとは毎晩子どもたちを早く寝かせる事ばかり考えていました。
夫は事業を始めて家にはほとんどいませんでしたが、子どもたちはすくすくと育ち、やがて下の子も小学校へ通うようになりました。
4年生になる長女の勉強も気になり、夫に話をすると「我が子の教育を母親がしなくてどうするのですか?」と言うのです。
ある日、「自宅で週2回、公文式の学習教室をしませんか」という新聞広告が目に付きました。
少し興味を持ち、どんなものかと事務局に電話をしてみたら、説明会にと誘われて、そこからは面接や試験を受け、何回かの研修を経て、開設の運びとなりました。
初めは自宅で寺子屋のような教室でした。
私の子どもたちも看板生徒となり応援をしてくれました。
我が家の周りの、畑や田んぼだった所には、次々と新築の家が並ぶようになり、その家へのポスティングやチラシの効果もあったのでしょう。
教室は週2回だけでは収まりきらなくなり、我が子のためにと思って始めたことが、いつの間にかたくさんの子どもたちの成長を見せてもらえる夢のある仕事となりました。
とにかく10年はやってみよう。自宅の裏についに専用教室を構えました。
開講して月日が経ってくると、いつも突然、1人か2人は「やめます」と言い出し、こちらは落ち込み、どこが悪かったのかなと反省しきり。
でも、また新しい出会いがあると元気になります。その繰り返しをしながら、今年は開設して40年となりました。
その間には、祖母との同居、介護、見送り。母との同居、我が子の結婚、次々と生まれる孫たち。
やがて母も見送り、ほっとする間もなく、今まで元気で猛烈な仕事ぶりだった夫が、自宅で介護が必要な体となりました。
その時「もう教室はやめようか?」と夫に尋ねたのですが、「お前は公文の日は生き生きしているから続けるように」と励ましてくれました。
週2回の教室時間中は、1時間ごとに夫の様子を確かめていました。夫の介護も8年余り続き、そして見送りました。
それからは教室が唯一の楽しみとなり、教え子がお父さん、お母さんになり、子どもを連れて来てくれました。
立派な商売人となった人もいて、あの大人しかった子が、と再会には驚きました。
最近は、感染症予防のためにズームでの指導を試みたり、何かにつけIT化が入ってきました。
私は「ついていけない」と言いながらも、楽しい出会いは喜びなのです。
ひ孫のような子どもたちががんばる姿を見ると、自分から「勇退します」とは言えず、もう少し続けようと思っています。
青木奈緖さんからひとこと
よく「文は人なり」と言いますが、文章にはそれぞれの個性、人柄が表れます。
加地様の作品には優しい包容力があふれています。
テーマとなっている「身近な日常」や「現在に至るまでの穏やかな時の流れ」は、静かで、取り立てて見せ場を作れない分、難しいものです。
作品全体で何を醸し出すことができるか、文章で嘘はつけませんね。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。
次回の参加者の募集は、2021年7月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始予定。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから。
■エッセー作品一覧■
- 青木奈緖さんが選んだ5つのエッセー#3
- 青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー#4
- 青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー#5
- エッセー作品「時の流れ」加地由佳さん
- エッセー作品「心のゆたかさ」岡島みさこさん
- エッセー作品「衣装持ち」夏坂晴子さん
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