もしかして更年期?ホルモン検査で何がわかるの?

更年期障害の検査内容と婦人科受診のタイミングを解説

横倉恒雄さん(横倉クリニック)
監修者
横倉クリニック
横倉恒雄

公開日:2022.10.11

「もしかして更年期障害かも?」つらい症状を感じているなら、詳しい検査を受けるのがおすすめ。生活の質を低下させる更年期症状は治療で緩和可能です。更年期の症状が出ている場合の検査内容、病院を受診するタイミングについて医師監修のもと詳しく解説!

更年期障害とは

更年期障害とは

更年期とは、女性が経験する4つのライフステージのうちの一つのことです。「思春期」「性成熟期」「更年期」「老年期」があり、更年期は一般的に40代半ば~50代半ばの10年間を指します。

更年期は、これまで長年分泌され続けていた女性ホルモンの分泌量が急激に減るという大きな変化が起こる時期です。女性ホルモンの急激な減少は心身に影響を与え、「更年期症状」と呼ばれるさまざまな症状が見られ始めます。

症状の程度は人によって異なりますが、日常生活に支障が出るほど症状が重い場合は「更年期障害」と呼ばれます。

更年期に見られるさまざまな不調は、老年期に向かい卵巣機能が完全に停止すると少しずつ安定してくるといわれています。しかし、つらい場合は我慢せずに早めに病院を受診して検査・治療を受けることが大切です。
 

更年期の代表的な症状は3つ

更年期に見られるさまざまな症状は、以下のように大きく3つに分類できます。

  • 血管の拡張・放熱に関連する症状
    ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)、発汗など
  • 身体症状
    動悸、胸がしめつけられるような感じ、疲れやすさ、めまい、頭痛、肩こり、息苦しさ、腰・背中の痛み、関節の痛み、冷え、しびれ、むくみ、ドライアイ、喉の乾き、下痢、便秘、胃もたれ、胸焼け、吐き気、月経異常、性交痛、尿失禁など
  • 精神症状
    気分の落ち込み、イライラ、情緒不安定、うつ、意欲の低下、涙もろくなる、不眠など

更年期に見られる症状の現れ方は個人差が大きく、ほとんど症状を感じない人もいれば、寝込んでしまうほどつらい症状を感じる人もいます。

更年期障害の明確な診断基準はないものの、つらい症状がある場合は治療することで緩和可能です。

更年期障害の主な治療法

更年期障害の症状は、生活習慣や食習慣の見直しなどによって改善するケースもあります。しかし、症状が重い場合や、なかなか改善しない場合は病院で治療を行います。

更年期障害の主な薬物療法には、以下があります。

更年期障害の治療に効果的とされるのが、エストロゲン(女性ホルモン)を補うことで症状を改善するホルモン補充療法(HRT)です。

ただし、ホルモン補充療法は乳がんや子宮体がんの人、血栓症の薬を飲んでいる人は受けられないため、その場合は漢方薬を使った治療や、向精神薬、プラセンタなどで治療を行います。

更年期障害のセルフチェックリスト

気になる症状があり「もしかして私も更年期障害かも?」と思ったときは、更年期障害のセルフチェックリストでチェックしてみましょう。

いくつかの質問をチェックすることで、簡単に診断できます。

更年期障害で病院を受診するタイミングは?

更年期障害で病院を受診するタイミングは?

更年期の年代の女性は仕事や子育て、介護、自分の健康面での不安などストレスや疲れが多い時期。「ストレスがたまっているせい」「疲れているせい」と我慢を続けると、症状が悪化してしまうこともあります。

セルフチェックで更年期障害の可能性があった場合だけではなく、セルフチェックでは問題がなかった場合も、気になるようであれば検査を受けるといいでしょう。

また、つらい症状があって検査を受けたけれど他に病気が見つからない場合も、更年期障害の検査を受けるタイミング。例えば、頭痛が続いてつらく、脳外科や神経内科で検査をしても異常がなかった場合、更年期障害が原因となっている可能性があります。

更年期障害の症状の見られ方には個人差がありますが、40歳以降に見られることが多いとされています。

更年期障害の検査内容

更年期障害の検査内容

更年期障害の可能性がある場合、問診や血液検査などの検査を行い、診断が可能です。更年期に伴う症状なのか、それとも他の病気が原因になっているのかを判断するためにも検査を行いましょう。

まずは問診や血液検査を行い、更年期障害と診断されたら、さまざまながん検査や骨量測定などの検査を行っていくのが一般的です。

更年期障害の検査費用は、6000円〜7000円ほど。病院によっても検査内容や費用は異なるため、事前に確認しておくといいでしょう。

ここからは、更年期障害の検査内容について解説します。

問診

更年期障害の検査では、まず問診を行います。

  • 現在の月経について(月経はあるか、最終月経の時期、月経周期、経血量など)
  • 閉経からの期間
  • 現在気になっている症状
  • 過去にかかったことがある病気(特に乳房や子宮、卵巣の病気)
  • 受診している病気の有無
  • 家族が過去にかかったことのある病気
  • 生活習慣、嗜好品(アルコールやタバコなど)について など

上記は、主な問診内容です。つらい症状や困っていることなどをきちんと医師に伝えられるよう、病院に行くことを決めたら更年期の症状についてメモをしておくのがおすすめです。

血液検査(女性ホルモン検査)

更年期障害の可能性がある場合、血液検査によって血中ホルモン量の検査を行うことがあります。

更年期になると、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)という性腺刺激ホルモンの数値が上昇し、エストラジオール(エストロゲンの一種)が50pg/ml以下に低下します。

またその他にも、コレステロール値、血糖値、肝機能、甲状腺機能なども調べます。

更年期は甲状腺の病気が多くなる年齢でもあるため、症状が更年期障害によるものか、甲状腺の病気によるものかを鑑別する必要があるのです。

なお、更年期障害は心理的要因も大きく影響します。人によっては、血液検査の結果で女性ホルモン値が低下しているのを見て不安になり、更年期障害の症状が強くなってしまうことも。

そのため、ストレスや環境が要因となって症状が起こっていると考えられる場合、医師によっては血液検査をすすめない場合もあるようです。

内診・超音波検査

更年期の症状の他にも不正出血などの症状が見られる場合で、子宮がん検診などをしばらく受けていない人は、子宮や卵巣の状態を把握するため、必要に応じて内診や超音波検査を行うことがあります。

各種がん検査

更年期障害の治療には、ホルモン補充療法(HRT)が多く用いられます。

そのため、「細胞診(子宮体がん、子宮頸がん検査)」「触診・超音波検査・マンモグラフィ(乳がん検査)」などを行い、子宮体がんや子宮頸がん、乳がんの可能性を否定する必要があります。

更年期はさまざまな病気が増えていく年代ですが、中でも更年期と症状が似ている「子宮体がん」には注意が必要です。子宮体がんになりやすい年齢は50~60代がピークといわれているため「最近検査を受けていない」という場合は、検査を受けるといいでしょう。

骨量測定

更年期障害が疑われる場合、骨量測定も行います。女性の骨密度は、女性ホルモンの低下が起こる45歳前後から減少していきます。

女性ホルモンのエストロゲンは、骨の吸収を抑制する作用を持っており、これが欠乏することで骨粗鬆症につながるのです。骨粗鬆症の80%は女性で、50歳以上の女性の約24%が骨粗鬆症になるともいわれているため、注意しましょう。

その他

この他にも、身長や体重測定、血圧測定、心電図など心臓の検査、腹囲、甲状腺検査、血液の固まりやすさの検査、心理テストなどの検査を行うこともあります。

なお、ホルモン補充療法(HRT)で更年期障害の治療を行う場合、1年に1〜2回の検査が必要です。

その場合の検査項目としては、以下があります。病院の医師の治療方針などによっては、この他にもさらに追加の検査が必要になることもあります。

  • 問診
  • 血液検査
  • 血圧測定
  • 乳がん検診
  • 子宮がん検診
  • 婦人科超音波検査
  • 骨密度検査
  • 動脈硬化検査
  • 心電図
  • 尿検査 など

その他、動悸が見られる場合は循環器内科も受診して不整脈がないか検査するなど、自分の症状に合わせて婦人科以外の科でも見てもらうといいでしょう。

更年期障害の検査に関連するQ&A

更年期障害の検査に関連するQ&A

ここからは、更年期障害の検査に関連するQ&Aをご紹介します。

月経(生理)はきているが更年期症状がある…検査は必要?

「更年期の症状かと思っていたら他の病気だった」ということもあるため、月経がある場合も検査しておくといいでしょう。

更年期障害と勘違いされやすい器質的疾患には、以下のようなものがあります。

  • 甲状腺機能亢進症
  • 甲状腺機能低下症
  • 慢性関節リウマチ
  • 貧血
  • 脳下垂体異常
  • 褐色細胞腫
  • 強皮症
  • シェーグレン症候群
  • 副腎皮質機能低下症
  • 白血病 など

更年期症状はないが月経周期に変化がある場合は?

女性ホルモンのバランスは、40歳を過ぎた頃から乱れ始めます。すると、出血量が多くなる、だらだらと月経が続く、月経期以外に不正出血が起こるなどさまざまな月経トラブルが見られることも。

このような変化がある場合、日常に支障のあるような更年期症状がなくても、他の病気ではないことを確認するために検査をするといいでしょう。

更年期障害の病院の種類

更年期障害の検査や治療を行える病院の種類についてご紹介します。

レディースクリニック(婦人科)

レディースクリニック(婦人科)は、女性の診療に特化していることが特徴です。更年期症状や閉経について知識、治療実績が豊富な傾向にあり、親身なカウンセリングが期待できるでしょう。

一方で、がんなど専門的な治療は対応できないことがあります。

総合病院・大学病院

総合病院や大学病院は、精密検査のための機器など設備が揃っており、さまざまな症状や病気に総合的に対応できます。

診療科によっては専門医が在籍していることもあり、更年期外来を設けている病院も多いです。検査でがんが見つかった場合も、治療や手術が行えるでしょう。

更年期障害の検査・治療を受ける病院選びのポイント

更年期障害の検査・治療を受ける病院選びのポイント

ここからは、更年期障害の検査・治療を受ける病院選びのポイントをご紹介します。

専門性や実績

更年期障害は明確な定義がないため、総合的な視点での判断が求められます。更年期外来や女性外来など、専門性の高い病院であれば、実績豊富な医師による診察が期待できます。

検査・治療の設備

更年期障害の治療を行う場合、がん検査や骨粗鬆症検査が必要となることがあります。そのため、さまざまな検査設備が整っている病院を選ぶのも一つのポイントです。

持病がある場合は、入院設備のある病院も視野に入れて考えておくといいでしょう。

話しやすさなど人柄、相性、病院の環境

更年期障害では、精神症状が出ることもあります。自分が落ち着いてつらい症状を話せる医師であるか、院内は落ち着いて話せる環境かなど、話しやすさや相談しやすさも大切なポイントです。

アクセスのしやすさ

更年期障害の治療を行う場合、通院が必要になります。

更年期障害の症状がつらく、病院に通うのが億劫になってしまう可能性も考えられるため、自分が無理なくアクセスできる通いやすい病院を選ぶといいでしょう。

症状がつらい!そんなときは漢方薬がおすすめ

「症状がつらいから、更年期障害かどうか検査を受けて治療したい。でも、自分に合う婦人科を探す時間はないし、通院も面倒」そんなときは、日本産婦人科学会でも薬物治療として推奨されている漢方薬を飲むこともおすすめです。

更年期障害の治療では、HRT以外に漢方薬の使用も標準治療の一つになっています。

漢方薬は自然の生薬の組み合わせで作られており、心と体全体の乱れたバランスを回復させる働きを持つので、多彩な症状を訴える更年期女性に対しては特に有効とされています。

西洋薬と比べて副作用が少ないといわれていることもメリットです。

更年期症状があるときにおすすめできる漢方薬2つ

・加味逍遙散(かみしょうようさん)
更年期のいわゆる不定愁訴に対して使用される代表的な漢方薬です。イライラや不眠、ほてりやのぼせ、めまいなどに用いられます。比較的体力がない人から使用が可能な漢方薬です。

・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
更年期のホットフラッシュによく用いられる漢方薬です。不眠やイライラなどの精神神経症状がない場合に用いられ、血流を改善するため、冷えのぼせ、肩こり、腰痛、肌のくすみなどにも用いられます。

自分に合う漢方薬が分からないので不安に思う方もいることでしょう。漢方薬を探す際には、プロの力を借りるのが最も早くて安心できるのでおすすめです。かかりつけがない場合には、スマホで無料で症状や体質を相談でき、漢方薬を選択してくれる「あんしん漢方」などのサービスもあります。

もしかして更年期障害?つらい症状は早めに検査を!

更年期に見られる症状が重く、日常生活に支障が出ている場合は更年期障害の可能性が考えられます。つらい症状を我慢していると悪化してしまう可能性があり、また、他の病気が隠れている可能性もゼロではありません。

病院で検査をし、適切な治療を行えば更年期障害のつらい症状は緩和できます。悩んでいる場合は早めに病院に足を運び、検査を受けてみましょう。

監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)

横倉恒雄さん(横倉クリニック)

よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。

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