女性特有のがんや死亡の原因となるがんを知ろう

50代以降の女性がかかりやすいがんについて解説

髙橋 聡美
監修者
城西内科クリニック院長
髙橋 聡美

公開日:2021.10.04

更新日:2023.04.13

がんは誰でもかかる可能性がある病気ですが、意外とがんについて知らないことは多いもの。今回は、50代以降の女性がかかりやすいがんにはどんな種類があるのか、がんの基礎知識について解説します。

監修者プロフィール:髙橋聡美さん(城西内科クリニック院長)

城西内科クリニック院長 髙橋 聡美(たかはし さとみ)さん

たかはし・さとみ 城西内科クリニック院長。順天堂大学医学部卒業、順天堂大学練馬病院糖尿病内分泌内科助教、医学博士、糖尿病療養指導医、臨床栄養学会指導医、内科認定医、米国マハリシ国際大学アーユルヴェーダ臨床医学ドクターベーシックコース終了、日本ホリスティック医学協会専門会員

肉体面への西洋医学による治療に加え、アーユルヴェーダの診断や自然栄養療法、運動療法、量子力学的知識を組み合わせた治療を、個々の体質とライフスタイルに合わせて実施。なるべく薬に頼らないホリスティックな医療を展開している。

女性のがん罹患数と死亡数の統計

女性のがん罹患数と死亡数の統計

日本人が一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人と言われています。ここでは、女性のがん罹患数とがん死亡数についてまとめました。罹患数とは、ある期間中に新たに診断されたがんの数のことです。

女性のがん罹患数の順位

女性がかかりやすいがんにはどのような種類があるのでしょうか。国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)によると、2018年の女性のがん罹患数は、多い順に「乳がん」「大腸がん」「肺がん」「胃がん」「子宮がん」でした。

女性のがん死亡数の順位

では、女性の死亡数が多いのは、どのがんなのでしょうか。国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)によると、2019年の女性のがん死亡数は、多い順に「大腸がん」「肺がん」「膵臓がん」「胃がん」「乳がん」でした。

女性は乳がんや婦人科領域のがんに注意

女性のがん罹患数とがん死亡数の順位には違いが見られますが、「乳がん」「大腸がん」「肺がん」「胃がん」については、がん罹患数、がん死亡数ともに5位以内に入っています。

女性特有のがんとしては、乳がんの他に、婦人科領域のがんが多く見られます。婦人科領域のがんの中でも多いのが「子宮がん」と「卵巣がん」です。

卵巣がんは、上記の統計では罹患数、死亡数ともに5位以内には入っていませんが、近年、罹患数が増えているがんの一つです。次の章から、女性がかかりやすく、特に注意したいがんについて解説します。

乳がん

乳がん

乳がんは、女性がかかるがんの中で最も罹患数が多い病気です。乳癌の最も強い危険因子は年齢で、中年以降(特に50歳以上)の女性に多いのですが、中には20代のケースも見られます。

稀に1%ほどですが、男性がなることもあります。また、遺伝的要素についても、母親、姉妹、娘などに乳癌になった方がいる場合、乳癌の発生リスクが2倍~3倍上昇するとも言われています。

症状には、乳房のしこりやくぼみ、乳頭からの分泌物などがあります。これらの症状があれば専門医を受診しましょう。乳がんの原因には、食生活などの生活習慣や遺伝的要因などが関わると考えられており、喫煙および飲酒は乳癌のリスクを高める一因となる可能性があるので注意したいところです。

乳がんは早期発見すれば高い確率で完治できる病気です。40歳を過ぎたら定期的に乳がん検診を受けましょう。また、日頃から乳房にしこりやくぼみ、乳頭の分泌物がないかなどのセルフチェックを行うことをおすすめします。

大腸がん

大腸がん

女性のがん死亡数が最も多い大腸がん。大腸がんの罹患数は40代から徐々に増え始め、加齢とともに増える傾向にあります。

大腸がんは、早期では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると、便に血が混じる、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返すなどの症状が出ることがあります。

大腸がんの原因には、肥満や過度な飲酒、喫煙の他、遺伝的要因なども関わると考えられています。大腸がんは早期発見すれば生存率がとても高い病気ですが、日本人女性は大腸がんの検診率が低いのが現状です。

40歳を過ぎたら積極的に大腸がん検診を受けましょう。また、日頃から便の色や形状などを見て、異常がないか確認することも有効です。

肺がん

肺がん

肺がんは治りにくいがんと言われ、予防と早期発見が重要です。肺がんは40代後半頃から罹患数が増え始め、加齢とともに増加する傾向にあります。

早期の段階では症状がないことが多く、進行すると咳や痰、動悸、胸痛、息苦しさなどを伴うことがあります。肺がんの大きな原因は喫煙であり、周囲のたばこの煙を吸うことによる「受動喫煙」も、肺がんのリスクを高めると考えられています。他に、遺伝的要因などもあるとされています。

肺がん予防のためには、まずは禁煙し、適度な飲酒や栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。また、早期発見のために、40歳を過ぎたら定期的に肺がん検診を受けましょう。

胃がん

胃がん

胃がんの罹患数は減少傾向にあります。胃がんの最も大きな原因は「ピロリ菌」とされていますが、環境の整備などによりピロリ菌の感染率が減少しているためです。

胃がんは60代以降に多く見られ、この世代の人はピロリ菌に感染している可能性が高いと考えられています。症状は、みぞおちの痛みや吐き気の他、黒い便が出ることもあります。胃がんの原因は、ピロリ菌の他に、塩分の取り過ぎや喫煙なども関連すると言われています。

胃がんは早期発見することで死亡リスクをぐんと下げられる病気です。胃がんを予防するために、まずは一度ピロリ菌検査を受けることをおすすめします。ピロリ菌は薬での除菌が可能です。また、早期発見に有効とされているバリウム検査や胃カメラ検査も定期的に受けましょう。

子宮がん

子宮がん

婦人科領域のがんの中でも罹患数が多い子宮がん。子宮がんには、子宮内膜にできる「子宮体がん」と、子宮の入り口にできる「子宮頸がん」があります。

子宮体がん

このがんは通常、閉経後に生じ、90%以上は50歳以上の女性に発生します。原因として、脂肪摂取量の多い食生活習や肥満、糖尿病、高血圧、遺伝的要因などが関わると言われています。減量、定期的な運動、健康的な食事を心がけましょう。

症状としては、初期段階から多量の不正出血が見られます。閉経後に性器出血がある人の3人に1人は子宮内膜がんが原因と言われており、閉経後に性器出血があった場合は、速やかに医師の診察を受ける必要があります。子宮体がんは早期に発見できれば、5年生存が70~95%と治癒を期待できる病気です。

なお、一般的な子宮がん検診とは子宮頸がんの検査を指すもので、子宮体がんの検査は含まれないことが多いのが実情です。子宮体がんの検査には、子宮内膜の細胞を採取して検査する子宮内膜細胞診や、超音波検査などが必要です。

子宮頸がん

子宮頸がんとは、子宮の入り口付近にできるがんです。通常20~30代に多い病気ですが、50代以降にかかることもあり、死亡率は高齢になるほど高まる傾向にあります。

原因は、性交時に感染するヒトパピローマウイルス(HPV)による感染が主ですが、他に喫煙にも注意が必要です。子宮頸部の分泌物から、タバコに含まれるニトロサミンなどの発がん物質が確認されており、受動喫煙によっても、がんの発生率が2、3倍にも増加すると言われています。

症状は、不正出血を引き起こすことがありますが、がんが大きくなるか広がるまで何の症状もみられない場合もあります。

そのため、定期的に検診を受けることをお勧めします。子宮頸部細胞診は、まだ症状がみられないケースも含めて子宮頸がんの最大80%を正確に検出できます。

子宮頸がんは早期発見で完治する確率が高まる病気です。不正出血などの症状があればすぐに婦人科受診を、なくても定期的な検診を受けましょう。

卵巣がん

卵巣がん

卵巣がんは40~60代の女性に多いがんですが、20歳前後の若い世代がかかるケースも見られます。初期段階ではほとんど自覚症状がなく、進行すれば下腹部に張りやしこりを感じることがあります。

最近は、日本人女性の卵巣がんの罹患数が増加傾向にあります。卵巣がんの原因には、食生活や排卵誘発剤の使用、遺伝的要因などが関連すると考えられています。

卵巣がんは早期発見が難しく、進行すれば完治が難しい病気です。現状では効果的な卵巣がん検診はないため、早期発見のためには、子宮がん検診の際に、超音波検査や内診で卵巣の状態を調べることが一つの方法となります。

加えて、少しでも症状があれば婦人科を受診しましょう。卵巣がんなど、婦人科領域の病気の予防や早期発見には、何かあればすぐに相談できるかかりつけの婦人科を見つけておくのがおすすめです。

がんは誰でもかかる可能性があり、50代以降になると罹患数が増加するがんもあります。がんは早期に発見し、適切な治療を受けることで生存率が高まります。健康寿命を延ばすためには、生活習慣の見直しでがんの予防に努めるとともに、定期的な検診やセルフチェックで早期発見につなげましょう。

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