医師監修│胃痛に効く市販薬の選び方やツボも紹介!

ストレスのせい?胃痛の原因と対処法&考えられる病気

藤澤孝志郎さん(総合内科専門医)
監修者
Dr.孝志郎のクリニック
藤澤孝志郎

公開日:2022.11.15

更新日:2023.11.13

軽い胃の痛みだからと、市販薬を飲んで我慢していませんか? 胃痛の原因や対処法、考えられる病気、市販薬について医師監修のもと解説します。中でもストレスは胃痛やみぞおちの痛みを引き起こす原因の一つ。胃の痛みは放置せず、早めの対処が肝心です。

監修者プロフィール:藤澤孝志郎さん(総合内科専門医)

監修者プロフィール:藤澤孝志郎さん(総合内科専門医)

Dr.孝志郎のクリニック院長。日本内科学会認定総合内科専門医。宮崎大学医学部卒業。医学教育の第一人者としても知られ「サマライズシリーズ」、「病態生理講座」、「ラストメッセージ」はその代表作。また、医学英語を取り入れたオリジナルの講座を国内でいち早く誕生させ多数の大学医学部で外部講師として活躍。今日までに海外出身者を含め約10万人の医学生と医師達がその講義を受けた。

著書に「内科系専門医試験 解法へのアプローチ第1集・第2集・第3集」(医学書院)、「糖尿病 自分で治す最強事典」(マキノ出版)、「世界一効率よく若返る!骨トレ!」(ビジネス社)など。監修は「肋骨締め」(KADOKAWA)など他多数。VOGUE JAPAN、an・an(アンアン)、Tarzan、ゆうゆう、ハルメクなど取材記事多数。

胃痛の原因、ストレスを我慢する人は要注意!

ストレスを我慢する人は胃痛を感じやすい

ストレスは、胃痛の原因として挙げられることが多いです。

ストレス社会と呼ばれる現代を生きる現代人は「人間関係のストレス」「仕事のストレス」「家庭のストレス」「介護のストレス」などさまざまな精神的ストレス、肉体的ストレスにさらされています。

さらに女性の場合、女性ホルモンバランスの変動に伴う「女性特有のストレス」もかかります。

少し古いデータとなりますが、2011年にエスエス製薬が行ったアンケート調査によれば、ストレスを我慢する人ほど、胃痛を感じやすい傾向にあることがわかっています。

「Q:あなたは職場や家庭で理不尽なことを言われても我慢することが多いですか?」という質問に対し、胃痛のある人と胃痛のない人では以下のような違いが見られたそうです。

【胃痛のある人】

  • かなりあてはまる……23.7%
  • あてはまる……27.9%
  • どちらかと言えばあてはまる……27.9%
  • どちらとも言えない……8.3%
  • どちらかというとあてはまらない……8.3%
  • あてはまらない……2.9%
  • まったくあてはまらない……1.0%

【胃痛のない人】

  • かなりあてはまる……6.1%
  • あてはまる……15.4%
  • どちらかと言えばあてはまる……37.5%
  • どちらとも言えない……15.1%
  • どちらかというとあてはまらない……16.7%
  • あてはまらない……7.7%
  • まったくあてはまらない……1.6%

アンケートでは、理不尽なことを言われても我慢すると答えた人が「胃痛のある人」では51.6%もいたのに対し、「胃痛のない人」の場合は21.5%と半分以下。

職場や家庭でのストレスを我慢している人の方が、胃痛を感じやすいという結果が出ています。

胃やみぞおちの痛みの原因

胃やみぞおちの痛みの原因

胃痛は、胃やみぞおちの痛みだけではなく、吐き気や胸焼けを伴うことも。症状の現れ方は人によって異なり、胃痛の症状としては以下のようなものがあります。

  • 胃が痛む、みぞおちが痛む
  • 胸焼けがする
  • 吐き気
  • ゲップがよく出る
  • 食欲不振や体重減少
  • 喉がつかえる感じ、喉の違和感
  • 空腹時、または満腹時に痛む
  • 何か食べた直後に痛くなる
  • 特定の食べ物・飲み物を摂取したときに痛む
  • 早朝や夜間など、決まった時間に痛みが起こる
  • 胃やみぞおちの痛みが断続的に続く など

胃やみぞおちの痛みは、ストレスや食生活・生活習慣の乱れなどなんらかの原因によって、胃酸過多(胃酸が必要以上に分泌される状態)や、胃粘膜防御機能低下が起こり、胃の粘膜が傷つくことで引き起こされます。

ここからは、胃やみぞおちの痛みの原因についてご紹介します。

ストレスの影響による自律神経の乱れ

胃腸を含む消化器官の働きは、「交感神経」と「副交感神経」からなる「自律神経」が密接に関わっています。

ストレスを受けると自律神経が乱れ、胃粘膜を守る粘液が少なくなる一方で、胃酸が増加。胃を守る胃粘膜の抵抗力が弱まったところに胃を刺激する胃酸が増えるため、胃粘膜が傷ついて炎症や潰瘍が起こり、その結果、胃痛が起こります。

ピロリ菌感染

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染は、慢性的な胃痛を引き起こす原因の一つといわれています。胃炎や十二指腸潰瘍、胃潰瘍の患者の多くから、ピロリ菌が見つかっています。

胃粘膜に生息するピロリ菌は、胃酸から防御するために毒素やアンモニアを出していますが、これが胃粘膜を傷つけており、放置すると慢性胃炎につながることも。慢性胃炎は胃潰瘍の再発や胃がんを引き起こすリスクがあるため、注意が必要です。

ピロリ菌は胃カメラ検査によって、簡単に感染の有無を確認できます。検査でピロリ菌が見つかった人は除菌治療が推奨されており、保険適用で治療可能です。

食生活の乱れ・生活の乱れ

食べ過ぎや飲み過ぎなど、食生活の乱れは胃痛を引き起こす原因になります。

一度にたくさん食べ過ぎると消化が追いつかなくなり、食べ物が長時間胃に留まることで、負担が増加。さらに、消化のために胃酸が過剰分泌されることで胃粘膜が刺激されます。

暴飲暴食が原因の場合、胃痛の他にも胃酸が食道まで上がってくることで胸焼けを感じたり、胃もたれ、お腹が張ったような痛みを感じることがあります。

睡眠不足など生活の乱れも、胃酸過多の原因です。

喫煙、アルコール・カフェインなど嗜好品の影響

アルコールやコーヒーの取り過ぎ、辛い料理の食べ過ぎなど嗜好品や刺激物の影響で胃粘膜が刺激され、胃やみぞおちの痛みにつながることもあります。

また、タバコを吸う人も注意が必要です。喫煙は胃粘膜の血流を低下させる原因になります。

冷たいものの取り過ぎ

冷たいビールやアイスなど、冷たい食べ物や飲み物の取り過ぎも、胃痛を引き起こす原因の一つです。

胃や腸で食べ物を消化する際には、消化酵素が働きます。消化酵素が一番効率よく働く温度は37℃ほどですが、冷たいものによって急激に胃腸が冷やされると食べ物がよく消化できなくなり、消化不良につながるのです。

また、冷たい食べ物が胃腸に入ることで血管が収縮して血流が悪くなることも、消化不良の原因です。胃粘膜の血流が悪くなると胃壁を守るための粘液の分泌が不十分になり、胃酸が胃壁を傷つけることで、胃痛を引き起こします。

更年期など女性特有の原因

胃の働きは、自律神経に強く影響されます。

女性ホルモンは自律神経の働きにも影響を与えるため、女性は更年期や月経、月経前症候群(PMS)などのタイミングで胃痛や胃もたれ、むかつきなど胃の不調を感じることがあります。

胃痛を引き起こす病気

胃痛を引き起こす病気

ここからは、胃痛を引き起こす病気について解説します。

急性胃炎

胃粘膜が急性の炎症を起こした状態で、ストレスや暴飲暴食が原因となって起こります。急にキリキリとした胃痛が起こることが特徴です。

吐き気や胃の膨満感、吐き気が起こることもあります。

慢性胃炎

過度のストレスやピロリ菌感染、食生活の乱れが続くと慢性的な胃痛・胃もたれ・胸焼けなどが起こる慢性胃炎となることも。

慢性胃炎の約8割は、ピロリ菌が原因といわれています。

神経性胃炎(ストレス性胃炎)

神経性胃炎(ストレス性胃炎)は日本人の4人に1人が発症するともいわれており、長期間ストレスがかかり続けることが原因です。

胃痛の他にも、憂うつな気持ちになる、喉がつかえるなどの症状が見られます。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、食道へ胃酸が逆流することで起こります。

胃痛や胸焼け、喉の違和感、ゲップをすると酸っぱいものが上がってくる(呑酸)などの症状が特徴で、逆流性食道炎の場合、食後に症状が見られることが多いです。

胃けいれん

胃の筋肉が痙攣する胃けいれんも、胃痛の原因です。キュッと締め付けられるような痛みや吐き気、食欲不振が起こることもあります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃潰瘍(胃かいよう)・十二指腸潰瘍は慢性的な炎症を繰り返すことで引き起こされ、胃やみぞおちの痛み、腹痛に加えて、タール便(黒い便)が見られることもあります。

胃がん

胃がんは早期の場合、ほとんど自覚症状がありません。進行すると胃痛や胃が張った感じ、腹痛、食欲不振、吐き気などが起こります。胃潰瘍と同様に、黒色便が見られることもあります。

胃がんはピロリ菌が最大の原因であるといわれているため、予防のためにもピロリ菌の検査を受けてみるといいでしょう。

アニサキス症

魚介類に寄生する寄生虫のアニサキスが原因のアニサキス症では、激しい痛みや吐き気、嘔吐が起こります。

アニサキス症は、生や加熱が不十分な魚介類を食べることで引き起こされます。

機能性ディスペプシア(FD)

胃痛や胃もたれ、むかつきなどの不快感があるものの、検査では原因がわからない場合は機能性ディスペプシア(FD)と診断されます。

機能性ディスペプシアはNUD、機能性胃腸障害、神経性胃炎とも呼ばれ、心理的ストレスが深く関連しているといわれています。

胃痛の対処法

胃痛の対処法

ここからは、胃痛の対処法をご紹介します。

食材選びに気をつける

胃の痛みは食べ物が原因となっていることがあるため、胃痛があるときは食材選びに気をつけましょう。

辛いもの、油っこいもの、冷たいものは胃の負担になるため胃痛があるときは避け、刺激の少ないものを選びましょう。

ツボ押し

ストレスなどが原因の胃痛を感じているときは、ツボ押しを試してみるのもおすすめです。以下のツボを指の腹部分で、気持ちがいいくらいの強さで10秒間くらいゆっくり押しましょう。

合谷(ごうこく)……親指と人差し指の付け根が交わる部分にあるツボ

内関(ないかん)……手首のしわから指3本分離れた場所にあるツボ

足三里(あしさんり)……膝の端から指4本分下の方にあるツボ

手三里(てさんり)……肘を曲げたときにできるしわから指3本分、手首側にあるツボ

手三里

市販薬を飲む

胃やみぞおちの痛みがあるときは、市販薬を飲むのも一つの方法です。市販薬にはさまざまな種類があるので、ドラッグストアで薬剤師に相談してみましょう。

症状別!市販の胃薬の種類と選び方

ここでは、胃痛や胃もたれなど、症状に合わせた市販薬の胃薬の種類と選び方をご紹介します。

  • 胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカー、M1ブロッカー)……胃痛、胃もたれ、むかつき、胸焼け など
  • 胃粘膜保護剤……胃痛、むかつき など
  • 制酸剤……胃痛、胸焼け など
  • 抗コリン薬……胃痛、胃酸過多 など
  • 鎮痛鎮痙剤……胃痛、疝痛(過剰なストレスによる胃けいれんなど、キリキリ差し込むような胃痛)
  • 消化酵素剤、健胃剤……消化不良、食後の胃もたれ
  • 総合胃腸薬……症状がはっきりしない場合、さまざまな症状が見られる場合

胃痛で病院に行くタイミングは?

胃痛で病院に行くタイミングは?

胃痛に限らず、どんな症状の場合でも「1か月」続いたら病院を受診しましょう。

また、発熱がある場合や激しく痛む場合、吐血や嘔吐を伴う胃痛、歩くと痛みが響く場合は緊急性が高い症状の可能性があるため、すぐに病院を受診する必要があります。

市販薬の胃腸薬を飲む場合は、飲み始めて2週間経ってもすっきりしなければ病院で医師に相談しましょう。胃腸の薬にはいくつもの種類があるため、薬が合っていないか、他の病気が隠れている可能性もあります。

軽い胃の痛みであれば「寝て起きていれば治る」と、我慢する人も多いかもしれません。

食べ過ぎたときに胃痛が起こり、一晩で治ってその後で特に不調を感じないのであれば問題ない可能性もありますが、そもそも胃腸は辛抱強い臓器です。

食べ物の消化を行う胃腸は、人間の中でも非常に重要な役割を担っており、生命維持のために最後の最後まで働こうとします。そのため、胃腸の本当の調子を自己判断することはできません。

胃痛は悪化する前に早めに対処することが大切

胃は我慢強い臓器であるため、放置すれば症状が悪化してしまう可能性もあります。

何か病気が隠れている可能性もあるため「ストレスのせいで胃が痛いだけ」などと決めつけず、胃の不調が続く場合は早めに病院を受診して検査を受けましょう。

※この記事は2022年11月の記事を再編集して掲載しています。

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