歯磨き粉のおススメは?歯間ブラシは使うべき?

それ間違いケアかも!歯周病を防ぐ歯磨きの方法Q&A

公開日:2021.07.31

更新日:2024.09.02

教えてくれた人:宮本日出(みやもと・ひずる)さん

教えてくれた人:宮本日出(みやもと・ひずる)さん

歯科医師、歯学博士、幸町歯科口腔外科医院院長。日本顎関節学会・代議員・指導医・専門医、厚生労働省認定歯科医師卒後臨床研修指導医教官。1965年、石川県金沢市に三人兄弟の末っ子として生まれ、猛勉強を始め、愛知学院大学歯学部に合格。のちに歯科医師免許取得。現在では、国内外に160篇以上の論文を発表し、複数のメディアにも登場するカリスマ歯科医となる。

歯周病を進ませてしまう間違った習慣をまずはチェック!

歯周病を進ませてしまう間違った習慣をまずはチェック!

(※歯周病がどんな病気か知りたい人は「歯周病の初期症状は?手遅れになる前に歯科医で治療を」を先にお読みください)

歯周病は、長い時間をかけて進行する恐ろしい病気です。多くの人は20代までに歯周病菌が定着し、免疫力が落ちてきた40代を過ぎてから、歯肉から血が出るなど症状が表れて歯周病にかかっていることに気付きます。

歯周病は完治させることができない病気ですので、歯科医での治療の目的も「寛解(症状が落ち着いて安定した状態)」を目指し、その後は口腔内の環境を悪化させないようにメンテナンスを続けることになります。

そのため歯周病を進行させないようにするには、日々の「歯磨き」がとても大切になってきます。

歯科医師の宮本さんは、「歯周病の人から、歯磨きについてよく聞かれる質問がある」と話します。

≪歯周病の人からよく聞かれる質問≫

  • どの歯ブラシが良いですか?
  • どの方法で歯磨きをしたら良いですか?
  • どの歯磨き粉を使ったら良いですか?
  • フロスと歯間ブラシは、どちらを使ったら良いですか?

これらの質問について、宮本さんは「全部NGです」とバッサリ否定します。

「歯周病になりがちな方は、歯磨きをする上でどれか一つだけの方法に決めようとします。しかし『歯周病という病気の対策は一つ』、つまり『一つの問題に解決方法は一つ』と考える思考回路自体が危険です。これは一つの料理に一つの調味料しか使わない、お出掛けの服は1種類だけ、みたいなことです。

歯並び次第で磨き方は変わりますから『一つの方法』で、磨き上げるには無理があります。自分に最適な歯磨きの方法は、歯科医院で必ず習いましょう」と宮本さん。

そもそも、歯周病の症状が進行してしまったということは、毎日行っていた「歯磨き習慣」が間違っていたということ。その点を踏まえた上で、抜本的に毎日の歯磨き方法を見直していきましょう。

虫歯になりにくい人は歯周病にもなりにくい?

虫歯になりにくい人は歯周病にもなりにくい?

Q「自分は虫歯になりにくいので歯周病も大丈夫ですよね?」

A…虫歯と歯周病の原因菌は異なりますから、歯がきれいでも歯周病が進行していることはよくあることです。虫歯菌は幼少期から定着しますが、歯周病菌はある程度年を取ってから定着します。また虫歯になりにくい人ほど、歯科医にかかる機会も少なく歯周病のリスクはさらに高まります。

歯周病菌は「歯槽膿漏」と呼ばれるように、歯肉を侵食していく病気です。歯ブラシでは、原因となる歯と歯の間や、歯肉のすき間に詰まった歯垢を取り切れませんので、20代から歯間ブラシ・フロス両方を使った口腔ケアは必要です。

歯磨きで歯周病は治せるもの?

歯磨きで歯周病は治せるもの?

Q「歯周病は歯磨きで治せますか?」

A…「治せません。そもそも歯周病は完治しません」

歯周病は、歯肉や歯の表面に付着したプラークの中や歯石のまわりにいる細菌が原因で起こります。

治療では、歯にこびりついた菌膜(バイオフィルム)や歯石を取り除く必要がありますが、自宅では取り除くことはできないため、歯科医で治療する必要があります。

また歯周病は完治できず、「寛解」を目指す病気です。病気の症状は消えても、将来的に症状が出る可能性がある場合は「寛解」と言います。歯周病菌を口の中から完全に排除することはできません。治療して歯周病が寛解した後は、歯磨きとプロケアの両輪で十分に管理しましょう。そうすれば歯周病の症状が再発することを防げます。

歯科医に行ったら注意される、嫌なことがあると本能的に感じているのかもしれませんが(笑)、あなたが困らないで済む歯科医を選び、ぜひプロと一緒に歯周病治療を行ってください。

歯磨きはどのタイミングがいい?

歯磨きはどのタイミングがいい?

Q「歯磨きはどのタイミングで行えばいい?」

A…毎食後、歯磨きを。特に夜は入念に!

毎食後、歯磨きは行った方がいいでしょう。歯磨きが思うようにできない場合は、うがいで代用してください。歯周病菌に効果のある洗口液もあります。

歯周病は寝ている間に進行しますから、寝る前の歯磨きにはじっくりと時間をかけて、隅々までしっかり丁寧に歯磨きしましょう。僕の場合は、液体歯磨き→音波式電動歯ブラシによる歯磨き→手磨き→フロス→歯間ブラシ→洗口液の順にケアをして、毎晩20分はかけています。でも、これは僕の場合です。慣れれば時間は短くなるでしょうし、歯並びによってはもっと時間がかかる人もいるでしょう。

正しい歯ブラシの持ち方は?

正しい歯ブラシの持ち方は?

Q「歯ブラシは、しっかり握って磨けばいいんですよね?」

A…ドラえもんのようなグーの手で歯ブラシを握るのは間違い!ペンを持つように優しく握って!

歯ブラシを握り、力を入れて磨くと、歯の表面だけを磨いてしまい歯と歯の間にいる歯周病菌を清掃できませんから、歯周病が進行してしまいます。歯ブラシは鉛筆を持つように親指と、人差し指・中指の指先で持って力を入れ過ぎず、細かく動かすように意識しましょう。

よりキレイに歯磨きをするなら、鏡を見ながら歯ブラシの毛先がどこに当たっているかを確認しながら磨くことを習慣にしましょう。

鏡を見ながら歯磨き

フロスを使っていたら、歯間ブラシは不要?

フロスを使っていたら、歯間ブラシは不要?

Q「フロスを使っていたら、歯間ブラシは使う必要はないですよね?」

A‥‥フロスと歯間ブラシは使用目的が違うので、両方とも使ってください。

フロスは必ず、毎日行いたいケアです。アメリカ歯科医師会が出したメッセージで「フロス・オア・ダイ?(フロスをしますか?あるいはフロスをせずに死にますか?)」というものがありました。ショッキングな内容からフロスの重要性がわかりますよね。

しかし意外と勘違いしている人が多いのが、フロスと歯間ブラシの使い分け。実は下記のようにそれぞれ役割が違います。40歳を超えて「大人」になったら、フロスも歯間ブラシも、両方使いましょう。

  • フロス…歯と歯の接触面の汚れを落とすもの
  • 歯間ブラシ…歯ブラシが届かない歯と歯の間の汚れをかき出すもの

フロスと歯間ブラシの違い

歯間ブラシはどのサイズを選べばいい?

歯間ブラシはどのサイズを選べばいい?
DENT.EX 歯間ブラシ(ライオン歯科材株式会社)

Q「歯間ブラシがいろいろあって、どのサイズを買おうか悩みます」

A…歯間ブラシは最少サイズから試してみて

ドラッグストアには、さまざまなサイズの歯間ブラシが販売されていますが、初めて購入するなら一番小さいサイズの4S~SSのものを購入してみてください。「歯の隙間にちょうどいい」からワンサイズ小さくしたものが最適なサイズです。

サイズが合わない太い歯間ブラシを使っていると歯肉が退縮し、1~2か月ですき間が広がり黒く見えるようになる上に、歯に物が挟まりやすくなりまるので気を付けてください。

歯周病の症状がある人は、歯間ブラシを通すと出血するでしょう。汚れをかき出したいので、そのまま口が真っ赤になってもいいので歯間ブラシを通しましょう。

出血は歯茎の表面から起こるのではなく、歯周ポケット(歯茎の歯に接する内側)から起こります。歯肉が擦り傷(潰瘍)状態になって、歯間ブラシの刺激でたまっていた血が出てきたり、傷口が開き出血しています。歯科医でのケアとともに、歯間ブラシを使ってキレイな状態を保てるようになれば、出血しなくなるので安心してください。

歯周病の症状を悪化させない歯磨きの手順は?

Q「歯周病を悪化させない歯磨き方法を教えてください」

A…朝はいつも通りでOK、でも夜はしっかりケアを。夜の歯磨きの手順は、5つに分けて考えてましょう。

歯磨きの手順1:液体歯磨きを使って、口の中をぐちゅぐちゅとゆすぎます。

歯磨きの手順1:液体歯磨きを使って、口の中をぐちゅぐちゅとゆすぎます。

液体歯磨きは、殺菌剤の「CPC(塩化セチルピリジニウム)」が配合されているものがいいでしょう。プラーク(浮遊バイキン)の消毒に効果的です。ドラッグストアで購入できるもので、おすすめの液体歯磨き次の3つです。

おすすめ液体歯磨き
「GUM(ガム)」(サンスター)
「ディープクリーン」(花王)
「ピュオーラ」(花王)

ちなみに「液体歯磨き」と「洗口液」は異なるものです。液体歯磨きは歯磨きをするときに使い、洗口液は仕上げにゆすぐものですので、注意してくださいね。ボトルの使い方にも、液体歯磨きなら「すすいだ後にブラッシングする」や「お口に含んでブラッシングする」、洗口液なら「すすぐだけ」と明記されているはずです。

手順2:音波式電動歯ブラシで磨く

手順2:音波式電動歯ブラシで磨く

次に歯の汚れを落としていきます。ただ振動するタイプの電動歯ブラシや歯ブラシだと磨いた部分しかキレイにすることができませんが、音波式電動歯ブラシなら、ブラシの毛先が接していないやや深い部分のプラーク(歯垢)も落とすことができます。鉛筆を持つ程度の軽い握りで持ち、歯の表面の汚れを落とすイメージで当てて使ってください。

おすすめの音波式電動歯ブラシ
「HYDROSONIC PRO(ハイドロソニック プロ)」(クラプロックス)
「オーラルB」(ブラウン)
「ソニッケア」(フィリップス)

一番のおすすめは「ハイドロソニック プロ」。「ソニックケア」は特に振動の刺激が強く唾(つば)が飛び散りますので注意がいります。「ハイドロソニック プロ」は、清掃効果はソニッケアと同等な上、刺激がマイルド(段階調整可能)で飛散が少ないです。

手順3:歯ブラシで歯と歯の間、歯と歯茎の境目を中心に歯磨きする

手順3:歯ブラシで歯と歯の間、歯と歯茎の境目を中心に歯磨きする

電動歯ブラシで落ちない歯と歯の間の汚れ、歯と歯茎の境目を歯ブラシで落としていきます。オススメの歯ブラシは、ブラシが毛先がツンツンした「テーパー毛」です。パッケージには「歯周病タイプ」と書かれているはず。

硬さは「柔らかめ」が良いです。ちなみに、ブラシが平たいラウンドタイプは歯の表面の汚れをよく落とせますので虫歯ケアに向いており、歯周病ケアには向いていません。

歯ブラシを動かすときはブラシの先端を、歯と歯茎の表面に対して45度に当てて歯周病菌をかき出します。

おすすめの歯ブラシ
「ルシェロ」(ジーシー)のシリーズ
「GUM(ガム)デンタルブラシ 3列コンパクトヘッド」(サンスター)

※「ルシェロ」は、歯科医や東急ハンズなどで販売されています。

おすすめ歯磨き粉
「デントヘルス薬用ハミガキSP(医薬部外品)」(ライオン)
「システマ ハグキプラス プレミアムハミガキ(医薬部外品)」(ライオン)

配合されている「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)」が、菌膜の中に入り込んで、菌膜の中で殺菌作用を施します。

ブラシは広がると使い物になりませんから、ブラシの状態を見て定期的に買い替えましょう。1か月が交換の目安です。

手順4:フロスを使った歯間清掃

手順4:フロスを使った歯間清掃

歯ブラシで歯の表面の汚れを落としたら、次にフロスを使って、歯と歯の当たる部分の清掃をします。ここの部分は、フロスでないとキレイにできません。フロスを強く押し込むとその下の歯茎を傷めるので、優しく動かしながら歯の隙間に入れてください。

おすすめのフロス
「スーパーフロス」(オーラルB)

フロスの先端がゴムでコーティングされているので、歯と歯の間にフロスが入りにくい場合は、針を通すように歯間に簡単に通せます。フロスを歯間に入れてから、左右に動かすと同時に手前に引いたり、奥に入れるように動かします。

二股になったプラスチックにフロスがついているY字のもの

奥歯は、二股になったプラスチックにフロスがついているY字のものが使いやすいですよ。

手順5:歯間ブラシを使った歯肉の清掃

手順5:歯間ブラシを使った歯肉の清掃

最後は歯間ブラシで歯と歯の間の歯肉をキレイにします。歯周病の症状は、100%この部分から始まりますから、しっかりと行ってください。

ここで、歯間ブラシの裏ワザを。歯間ブラシは1か所の隙間をキレイにしたら、その度に水洗いをするのですが、水洗後は洗口液につけてから歯間を清掃すると、歯間ブラシの清掃力に加え、洗口液の薬の効果も期待できます。

おすすめ歯間ブラシ
DENT.EX 歯間ブラシ(ライオン歯科材株式会社)

おすすめ洗口液
「リステリン」(ジョンソン・アンド・ジョンソン)


以上が、夜寝る前に行いたいケアです。

ケアに必要な時間は人それぞれですが、ケア後のスッキリ感を覚えたらそれを基準にしましょう。歯科医でケアしてもらった後は、さらにスッキリ感が加わりケアの大切さに気付くはず!

歯周病対策におすすめの歯磨き粉や含有成分は?

歯周病対策におすすめの歯磨き粉や含有成分は?

Q「歯周病対策の歯磨き粉、どれを買えばいいかわかりません」

A…IPMP(歯周病)という成分が記載されているものを選んで!

イソプロピルメチルフェノール(IPMP)は歯周病菌が潜む菌膜の表面に入り込む薬剤で、菌膜中で殺菌効果を発揮します。菌膜の薬に対するバリア機能は強力で、いかなる抗生物質などの薬物も効きません。IPMPは貴重な成分です。また虫歯予防の観点だと、塩化セチルピリジニウム(CPC)が入っていないものは使う必要はないです。

おすすめは、「デントヘルス薬用ハミガキSP(医薬部外品)」、「システマ SP-T」、知覚過敏の方は「システマ センシティブ」、すべてライオンから発売されています。

歯磨きのときの最適な歯ブラシの角度は?

歯磨きのときの最適な歯ブラシの角度は?

Q「歯ブラシは45度に当てるのか、90度に当てればいいのかわかりません」

A…歯ブラシを当てるなら歯周病予防は45度、虫歯予防は垂直に!

歯ブラシを垂直に当てる方法は、歯ブラシの面が歯にしっかり当たり、歯の表面の清掃効果が高いので、虫歯予防に効果的です。一方、45度に角度をつけた場合は、毛先が歯と歯茎の隙間に入りこみやすく、歯周病対策に効果的です。

一方、垂直に当てた状態で歯と歯茎の間をキレイにしようとすると歯茎を傷つけてしまい、歯周病を悪化させる危険性があります。反対に斜め45度に当てると、歯の表面の清掃効果が上がりませんので、歯の表面が思ったよりキレイにならず、虫歯対策にならない可能性もあります。

磨き残しがないように、自分の歯に合わせて角度を調整しながらスッキリ磨き上げましょう!

取材・文=竹上久恵(ハルメクWEB編集部)

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