1分間「殺菌ベロ回し」・5

歯科医が解説!磨き残しを防ぐ正しい歯磨きの仕方

公開日:2020.09.19

更新日:2021.11.08

この連載では、銀座並木通りさゆみ矯正歯科デンタルクリニック81院長・坂本紗有見さんが口腔ケアについて解説します。最終回のテーマは、磨き残しを防ぐ「正しい歯磨きの仕方」です。プラークコントロール、シュガーコントロールも学びましょう。

「一筆書き」の歯磨き法
「一筆書き」の歯磨き法

「1日1度」のリセットで歯の健康は守れる

これまで4回にわたって、だ液がドバドバ出る「殺菌ベロ回し」や歯科矯正で積極的に口腔ケアをするメリットについてお伝えしてきましたが、「美口」を保つためには、やっぱり毎日の歯磨きが大切です。

本来であれば、歯の1本1本を丁寧にブラッシングするくらいでないと、プラークを十分に除去することはできません。しかし、多忙な現代人にとって、毎日3度の歯磨きを徹底するのは、意外と難しいこと。食事のたびにこの手間ひまを確保するのは容易ではないでしょう。

そこでおすすめしたいのが、1日1度の“集中ケア”です。

もちろん、3度の歯磨きを毎回、時間をかけて丁寧に行う余裕があるのならそれに越したことはありません。しかし、そうでない場合はプラークが発生する前のギリギリに、徹底的に汚れを落とすことで「美口」を維持できます。

プラークは汚れの付着からおよそ8時間で発生するとされています。そこで、3度の歯ブラシに毎回全力を費やさなくても、「1日に1度だけ徹底的に磨く」と決めて実行すれば、ある程度の効果は維持できるでしょう。

おすすめは就寝前の“集中ケア”&柔らかい歯ブラシ

時間のない朝や昼は、多少駆け足の歯磨きになるのはやむを得ません。それでもざっと食べかすを洗い流しておき、夕食後の歯磨きだけは手を抜かずにやるのです。

つまり1日に1度、就寝前の最後の歯磨きで口のなかをリセットすることで、むし歯や歯周病をケアしようというわけです。

この際、毛が細くて柔らかい(ただし毛先は細くない)大きめの歯ブラシを使うことで、効率よく食べかすを取ることができるでしょう。

毎日必ず行わなければならない歯磨きだからこそ、できるだけ面倒くさくしないことが続ける秘訣なのです。

歯磨きのポイントは、歯のすべての面を磨くこと!

歯の磨き方というのは人それぞれで、歯科医が指導する磨き方を完璧に実践している人はおそらく少数派でしょう。

大切なのは、歯のひとつひとつの形状をイメージして、1本の歯のすべての面をブラッシングすることです。

歯の表面。
裏側。
両サイド。
そして上面。

この際、自分の歯や歯ぐきの状態に合わせて、歯ブラシの当て方をアレンジする必要があります。特に歯と歯の間は重要で、歯間ブラシやフロスを活用し、しっかり磨きましょう。

歯周ポケットのある人は斜め45度にブラシを当て、ポケット内の歯周病菌をかき出すように磨きます。そうでない人は、歯ぐきを傷つけないように、歯に対して垂直にブラシを当てて磨けばよいでしょう。


歯並びの悪さが気になる人は、その部分のみ縦にブラシを当てて磨くなど、ケースバイケースで磨き方を変えることで、より効果的なブラッシングを行うことができます。

こうしてすべての面をブラシで十分にこすり、食べかすや脂などをしっかり落とせば、プラークの発生を抑えることができます。

磨き残しを防ぐ「一筆書き」の歯磨き法をチェック!

歯磨きをするときは、一筆書きの要領で右から左に、あるいは左から右にと順に磨いていくのが、磨き残しを避けるコツ。頭のなかで、U字型に配列されている歯並びをイメージしてみてください。

まずは下の歯列の裏側を、右からじっくり左にかけて磨いていき(逆方向でも可)、左端まで到達したら表面側に折り返して右へ向かう。右端に到達したら、上の歯へ移動して同じように裏側から表側へと順に磨きます。

とくに規則性を持たずにブラシを上下左右に動かすだけでは、どうしても磨き残しが発生してしまいます。

その日の汚れはその日のうちに除去するために、ぜひ覚えておいてください。そして、これに加えて定期的に歯科クリニックに足を運び、歯石を取ってもらったり、歯周ポケットのなかをクリーニングしてもらえば万全でしょう。

プラークコントロールとシュガーコントロールも意識を

ちなみに、こうした歯磨きによってプラークを完全にゼロにすることは、まず不可能です。大切なのはプラークの増殖を、健康に悪影響を及ぼさない程度に抑えることで、これを「プラークコントロール」と呼びます。

他方、糖質がむし歯の原因を呼び込むとはいえ、完全に糖質ゼロで生活をするのもやっぱり不可能。糖質不足はむしろ不健康です。そこで重要なのは、日頃からむし歯や歯周病になりにくい食生活を心がけることで、こちらを「シュガーコントロール」と呼びます。

具体的には、余計な間食を避けたり、甘いものの過剰摂取を控えるなど、食事以外での糖質摂取をしっかり制御することが大切。つまり、むし歯菌の養分になるものを少なくし、菌の繁殖を抑えることが重要です。

私たちが、普段よく口にする食べ物や飲み物に含まれる砂糖などは、むし歯菌の大好物。糖分の含まれる食べ物や飲み物をとる回数が少なければ、むし歯になるのを予防できます。

ちょっとした心がけで十分です。甘いジュースやコーラなどは、回数を減らすか、ノンシュガーのお茶にかえたり、コーヒーは砂糖をいれないだけで、十分変わります。
 
プラークコントロールとシュガーコントロール。この2つをぜひ、日常のなかで意識してみてください。

とはいえ、自力で歯の健康状態を保つには、どうしても限界があります。自分の目では見えない奥の歯など、すみずみまで汚れを落とし、発生したプラークを取り除くには、やはり定期的な歯科検診を受けるのがベストです。

矯正で歯並びを整え、歯磨きと殺菌ベロ回しを日々行い、定期的に歯科医に通うことで、いつまでも「美口」を保てるよう心掛けましょう。

※本記事は、歯科医・坂本紗有見 著『1分間「殺菌ベロ回し」』(株式会社アスコム/1200円・税別)より一部抜粋して構成しています。


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