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- 歯周病の初期症状は?手遅れになる前に歯科医で治療を
多くの人が無自覚なまま進行させ、最終的には歯が抜け落ちるリスクがある「歯周病」。フロスや歯間ブラシは使わない、歯科医院にはほとんど行かないという方は要注意です。歯科医師の宮本日出さんが歯周病について解説します。また症状のチェックリストも。
歯周病とはどんな病気?何歳からかかる?
歯周病とは歯の病気ではなく、歯のまわりの組織である歯周組織が患う病気です。歯周組織は、セメント質、歯根膜、歯槽骨、歯肉の部分を指します。歯に歯周病菌がこびりつくことで膜を作り、その膜の中で徐々に菌が成熟し歯周組織に炎症を起こすことで歯周病が進行します。
多くの場合40代から口臭がきつくなったり、歯ぐきから血が出たりといった歯周病の症状が表れ始めます。
歯周病が恐ろしい理由は、無症状のまま長い期間をかけて進行するからです。症状の初期も自覚症状がなく、口臭や出血といった症状がある程度出ていたとしても、痛みはないので見逃すことが多く「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」と呼ばれます。そして最終的には歯が抜け落ちて失うことも。
歯周病はかつては「歯槽膿漏」と呼ばれていたので、その呼び名の方がなじみがある方も多いかもしれません。
年齢とともに歯周病患者は増える
歯周病になると、歯と歯肉の間にできた溝(歯周ポケット)が深くなります。厚生労働省の「平成28年 歯科疾患実態調査」によると、30代でも歯周ポケットが4mm以上ある人は30%程度います。30代以降、年齢とともに歯周病が悪化する人は増え、高齢になると歯を失う人も増えていくことがわかります。
しかし40代の方でも、自分はまだ歯周病じゃないと思っている方は多く、虫歯の治療を目的に歯科医院を訪れて歯周病だとわかることも多いです。
特に更年期は要注意
年齢を重ねるほど歯周病が悪化するのは、ずばり免疫力が下がるから。女性の場合は、閉経前後10年の更年期を境に歯周病が悪化する人が増えます。正しい口腔ケアを行わなければ、10年刻みで症状が進行していくものだと覚えておきましょう。45歳で歯周病が悪化し始め、55歳で自覚症状が表れ、それから10年後の65歳で歯が抜けます。
歯周病は、完治させることはできません。正しいセルフケアと歯医者による口腔ケアによって、歯周病菌の活動を抑え続ける必要があります。
歯周病の症状とは?初期症状とセルフチェックリスト
先ほど説明したように、歯周病は進行とともに症状がエスカレートします。
最初は歯肉の縁が部分的に赤く腫れますが、自覚症状はありません。炎症が進行して、歯肉が全体的に腫れ、歯と歯肉の内側の溝が深くなり歯周ポケットができます。炎症が進むほど、歯を支える歯槽骨が溶け、歯周ポケットは深くなります。歯周ポケットが深くなると歯肉は赤く(あるいは黒く)なり、出血しやすく膿(うみ)が出ることも。この膿が口臭の原因にもなります。
歯槽骨がさらに溶けてくると、支えを失った歯はぐらつくようになります。そして歯肉が下がってくるため、歯の根本が露出してまるで歯が伸びたように見えます。最終的に歯槽骨の溶解が進行し、歯が抜け落ちます。
≪歯周病チェックリスト≫
- 歯を磨くと出血がある
- 歯肉が赤い、あるいはドス黒い
- 歯と歯の間の歯肉が丸く腫れぼったい
- 歯と歯の間に隙間ができた
- 口臭が強くなった
- 歯が長く伸びた
- 歯並びが変わった
- 朝起きると口の中がネバネバする
- 硬いものが噛みづらくなった
上記のチェックリストのうち、一つでも当てはまる人は歯周病の疑いがあるため歯科医院で診察を受けた方がいいでしょう。
歯周病にかかる原因とは?キスでリスクが高まる
ではなぜ、歯周病になるのでしょうか?
歯周病は細菌感染が原因で、その菌は20種類以上であり、特に悪性度の高いのはP.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス菌)です。この菌は人から人へ、唾液を通じて感染します。
歯周病の症状が出るまでには、歯周病菌が口腔内に定着するまでと、菌が繁殖して歯肉組織を攻撃し始めるまでの2段階があります。
歯周病は強い菌のため、幼い頃に体に入っても定着せずに流れます。子どもの頃は、歯周病菌よりも弱い虫歯菌が溜まっていきます。だから子どもは、歯周病にはならず虫歯になりやすいのです。
歯周病菌が人に定着するのは18〜20歳とされています。大皿や鍋をみんなで直箸で食べたり、飲み物を共有したりキスをしたりすることで、徐々に弱い菌が蓄積されて、強い歯周病菌も口腔内に定着するようになります。
特にキスは直接唾液を交換するため、最も歯周病菌が罹患しやすい行為です。この期間に多くの人とキスをすればするほど、悪性の歯周病になるリスクは高くなります。まさに「チューは1秒、ケガ一生」です。
一度定着した歯周病菌は離れない
口内に定着した細菌が集まると、「歯垢(プラーク)」になります。歯や歯の間、歯の根本に付着しているネバネバした黄白色の粘着物です。
歯垢(プラーク)は時間とともに量が増えます。さらに口腔内で酸素が少ない状態になると、歯垢の中で酸素を嫌う嫌気性菌が多くなります。この嫌気性菌が歯肉組織に攻撃し、体の中に侵入しようとします。
これに対して、白血球が菌の侵入を抑えようと反撃するため、歯肉からの出血・発赤・腫脹などの炎症の症状が起きるのです。しかも歯周病菌は、血液中の鉄分が大好物。治療をせず出血をそのままにしておくと、歯周病菌が歯周ポケットの中に潜り込み、どんどんと歯周組織を破壊していき炎症を繰り返すという悪循環が起きてしまうのです。一度体に定着した歯周病菌は離れません。菌が定着してから、歯間ブラシ・フロスを使わず歯垢を落とし切れない歯磨きを何十年と続けると、入れ歯にまっしぐらになってしまうのです。
歯が抜けるだけじゃない!歯周病は全身に悪影響をもたらす
進行すると出血したり、最終的には歯が抜けてしまう歯周病。実は口の中だけでなく、全身に悪影響をもたらすことがわかっています。炎症によって出てくる毒性物質が歯肉の血管から全身に入り、さまざまな病気を引き起したり、悪化させたりするのです。
例えば血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせたり(糖尿病)、早産・低体重児出産・肥満・血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)にも関与しています。
<動脈硬化>
歯周病によって産生された炎症性物質が血液内に入ると血管の壁を刺激して慢性炎症を起こします。すると血管内にアテローム(おかゆ状の沈着物)ができて、血液が狭くなり血液の流れが悪くなり、それが進行すると動脈硬化になります。
<腸内環境>
腸内細菌には善玉菌、悪玉菌、日和見菌(中間の菌)があり、密接に関係しながら腸内の環境バランスをとっています。腸内細菌の中には歯周病菌がいて、この歯周病菌が腸内細菌叢のバランスを悪化させます。
<糖尿病>
歯周病は糖尿病の併用病です。歯周病の進行により産生する炎症性物質が血液の中に入るとインスリンの働きを低下させるため、血糖値が下がりにくくなります。歯周病を改善すると、糖尿病をコントロールしやすくなります。
<心臓病>
歯周病が引き起こす動脈硬化により、心臓に血液を送る血管が細くなったり(狭心症)、詰まったり(心筋梗塞)します。また心臓の内膜に歯周病菌がつくと、心内膜炎を起こし生命に関わる危険性もあります。
<骨粗鬆症>
骨密度が低くなり、骨がもろくなる病気が骨粗鬆症ですが、歯周病によって産生される炎症性物質が全身に骨の代謝に悪影響を及ぼします。特に更年期障害を過ぎた女性では気を付けたい病気です。
<内蔵肥満>
メタボリックシンドロームとは、内蔵型肥満に加え高血圧、高血糖、脂質異常など動脈硬化の危険因子が2つ以上重なった状態を言います。歯周病が進んでいる人はこれの発症が1.6倍高まります。2016年、政府はメタボの初期疾患が歯周病であると発表しました。
<脳梗塞>
脳梗塞とは脳の血管が詰まったり、心臓にできた血栓が脳に送られて血管が詰まったりする病気です。歯周病の症状がある人は、そうでない人の2.8倍も脳梗塞になりやすいことがわかっています。
<(アルツハイマー型)認知症>
マウスに歯周病菌を投与したところ、アルツハイマー型認知症の原因物質のタンパク質「アミロイドβ」が、投与していないマウスに比べ10倍も検出され、記憶力も低下することがわかっています。実際でも歯周病の症状がある人は、認知症が多く発症しています。
その他にも(誤嚥性)肺炎、関節リウマチ、低体重児出産・早産など、歯周病と全身にさまざまな病気との関連がわかってきています(その数は100種類以上)。
そのため口腔ケアを受けることで、健康寿命を伸ばすことができます。特に女性では、65歳を超えて口腔ケアを続けて受けていると、6年後の生存率は10%以上も高くなることがわかっています。
認知症も53%低下し、誤嚥性肺炎が57%、ウイルス性肺炎が90%抑えられ、全身のフレイルの発症リスクが減ります。
歯周病を治療する歯科クリニックの探し方
歯周病は完治しない病気です。また本人が自覚していなくても、歯周病の症状が出ている可能性は十分にあります。2001年ギネス世界記録で「全世界で最も蔓延している病気は歯周病である。 地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」と記載されていますから、自分だけは大丈夫と楽観視しないでください。世界を見渡しても、歯周病にかかっていない人は数えるほどしかいません。
症状が悪化してから歯科医院に行くのではなく、かかりつけの歯科医を持ち、定期的に通院をして口腔ケア(プロフェッショナル・ケア)を受けるようにしましょう。また日常では、正しいセルフケアを身に付けましょう。>>歯周病の治療方法について詳しく知りたい方は、「歯周病かも?セルフチェックから治療法、歯磨き方法も」をお読みください。
歯周病の治療は、保険適応で行えます。歯周病を治療する病院を探すときは、厚生労働省の「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」かどうかをチェックしてみるといいでしょう。
「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」は平成28年4月より新設された、症状が落ち着いた歯周病の治療を継続する制度で、決められた一定の基準を満たした歯科医院のみ厚生労働省から認可を受けられます。「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」であれば、重度の歯周病症状の方の治療が終わった後の、いわゆるメンテナンスを目的とした歯周病治療も保険適用で安心して受けることができます。
歯周病は症状の進行を止めて、症状が悪化しないようにメンテナンスを続けることが大切です。また歯周病の悪化のしやすさは個人差があります。そのため通院すべき頻度は、一人一人異なります。期間の短い人は1か月の間隔、長くても半年に1回はかかりつけの歯科医院に通院しましょう。
次回は、「歯周病を予防・悪化させない歯磨き方法」をお伝えします。
取材先・監修者プロフィール:宮本日出(みやもと・ひずる)さん
歯科医師、歯学博士、幸町歯科口腔外科医院院長。日本顎関節学会・代議員・指導医・専門医、厚生労働省認定歯科医師卒後臨床研修指導医教官。1965年、石川県金沢市に三人兄弟の末っ子として生まれ、猛勉強を始め、愛知学院大学歯学部に合格。のちに歯科医師免許取得。現在では、国内外に160篇以上の論文を発表し、複数のメディアにも登場するカリスマ歯科医となる。
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