冬は認知症リスクが高まるって本当?寒い季節に意識したい脳のセルフケア
冬は認知症リスクが高まるって本当?寒い季節に意識したい脳のセルフケア
公開日:2026年02月06日
寒さが脳に与える影響
冬は体調が揺らぎやすく、外出の機会も減る季節。実は、認知機能低下や認知症リスクが高まる季節とも言われています。
より早期からの認知症予防(ブレインケア)を提唱する医師の今野さんによると、その背景には、次の3つの要因が考えられるそうです。
1.血圧が上がりやすい
気温が下がると血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります。
「高血圧は認知症の重大なリスク要因の一つです。血圧が上がると脳血管に負担がかかり、微細な脳出血などを引き起こし、脳血管性認知症のリスクを高める一因となります」(今野さん)
50代などの早期から血圧を安定させておくことが、脳の健康維持の大切な要因の一つです。
2.活動量の低下
寒くなると外出が減り、どうしても運動不足になりがちです。運動量が落ちると脳への血流が低下し、認知機能の衰えにつながります。
また、人と話す機会が減ることも脳の刺激不足につながります。
こうした生活リズムの変化は、50代にとって将来の脳の健康リスク要因になり得ます。
3.睡眠の質の低下
冬は日照時間が短いため、体内時計が乱れやすい時期です。体内時計の乱れは、寝付きの悪さや中途覚醒の原因になり、睡眠の質を低下させる可能性があります。
「睡眠の質が低下すると、脳のゴミと言われるアミロイドβの排出が妨げられ、将来の認知症リスクにつながるとされています」(今野さん)
アミロイドβは、脳内で作られるタンパク質の一種で、アルツハイマー型認知症の原因と考えられています。健康な人の脳でも作られる物質ですが、分解・排出されずに蓄積されてしまうと、認知機能の低下につながる可能性があります。
脳を元気にする4つの生活習慣
脳のストレス要因が増える冬ですが、その一方で、脳の健康維持のためにできることもたくさんあります。
ポイントは、生活習慣のちょっとした工夫です。今野さんに、冬に意識したい生活習慣でのセルフケアを教えてもらいました。
1.寒さを我慢せず、家の中でも体を冷やさない工夫を
気温が下がると血圧が上がりやすくなりますが、寒暖差による血圧の急激な変動も、脳にとって大きな負担になります。冬に脳血管のトラブルが増える背景には、この血圧の変動も関係しています。
WHO(世界保健機関)のガイドラインによると、室温は18度以上が推奨されているので、まずは家の中を心地よく保つことが大切。寒さを我慢せず、エアコンやヒーターなどの暖房器具を使い、重ね着やひざ掛け、カイロなどで「冷えをためない工夫」を。廊下や脱衣所など温度差が大きな場所は、小型ヒーターで暖めるなどして急激な血圧上昇を防ぎましょう。
また、どうしても寒暖差が生まれてしまう冬の外出時は、
- 暖かい部屋からすぐに外へ出ず、気温差がまだ少ない玄関で数十秒ほど体を慣らしてから移動する。
- マフラー、手袋、厚手の靴下などで、首元や手足など「冷えやすい部位」をしっかり防寒する。
などの対策を心掛けましょう。
2.寒い日こそ室内でできる運動で血流アップを
軽い運動は血流をアップさせ、脳の活性化につながります。
寒い冬は、無理に屋外で運動をしなくても大丈夫。テレビや動画を見ながらの「ながら体操」、踏み台昇降運動、階段の上り下りなど、室内でもできる運動を取り入れましょう。
運動量の目安は毎日15~20分ですが、1日5分程度でも意識して体を動かすと、血流アップ効果が期待できます。楽しく続けられそうな運動を見つけてみましょう。
3.朝日を浴びて体内時計を整える
毎朝カーテンを開けて朝日を浴びる習慣をつけることで、体内時計がリセットされ、夜の睡眠が整いやすくなります。
朝日を浴びる時間は、まずは15秒からでも効果的。できれば5~15分程度、目から光を取り入れるのが理想的です。曇りや雨の日でも光の量は十分にあるので、天候に関係なく毎朝の習慣にするといいでしょう。
就寝前のスマホは控える、入眠を促すナイトルーティンを取り入れるなどの工夫もおすすめです。
4.外出が減る季節でも、意識的に人と会話する
人との会話は脳に良い刺激をもたらしてくれます。
寒くて外出が億劫なら、電話やオンラインでの短い会話でもOK。家族や友人と少し話すだけでも脳の活性化につながります。
買い物やゴミ出しで会ったご近所さんに挨拶をする程度でも、脳に刺激を与えられますよ。
冬の食事で意識したいこと4選
将来の認知症リスクを遠ざけるには、食事の工夫も大切です。
脳の健康をサポートするタンパク質や発酵食品などを日常的に摂取するのに加え、冬はプラスαの工夫を取り入れていきましょう。
今野さんに、脳の健康を保つ「冬の食事の工夫」について教えてもらいました。
1.冬の“濃い味”に注意して、塩分は控えめに
冬の食卓は、鍋料理や汁物など塩分の多い料理が増えがちです。さらに、空気の乾燥によって口の中が乾き、唾液量が減ることで味覚が鈍くなり、無意識に濃い味を求めてしまう傾向も。これが塩分過多の原因となり、冬の高血圧リスクにつながります。
- 鍋料理の汁は飲み干さない。
- 調味料を減らして出汁のうま味やスパイスで満足感をアップさせる。
といった工夫で、塩分摂取量を控えめにしていきましょう。
「また、冬は水分摂取量が減りやすく、体内に塩分が留まりやすい時期でもあります。こまめな水分補給を心掛け、適度に体内の水分を排出するようにしましょう」(今野さん)
2.魚を週に2~3回食べる
青魚やアマニ油、えごま油などに含まれるオメガ3脂肪酸は、体内の炎症を抑え、認知機能の低下予防に役立ちます。
そんなオメガ3脂肪酸を含む食材の中でもおすすめなのが、冬が旬の青魚です。冷たい海水の中で育った青魚は脂がのっていて、EPA・DHAも増えると言われています。
- 冬が旬の青魚……ぶり、さば、いわしなど。
「認知症予防の研究でも、魚を定期的に摂取する習慣は、脳の体積維持や認知機能の低下抑制に関与することが多くの研究で示唆されています」(今野さん)
旬の魚をおいしくいただきながら、脳に元気をチャージしましょう。
3.冬野菜を積極的に食べる
冬野菜は、自らが凍らないように水分を減らすので味わい深くなり、認知症予防に良いと言われるビタミンA・C・Eなど、抗酸化ビタミンも濃くなります。
- おすすめの冬野菜……大根、かぶ、にんじん、春菊、白菜、ほうれん草、チンゲン菜、小松菜、ねぎ、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツなど。
味噌汁やスープなどでじっくり火を入れてうま味を引き出せば、薄味でもおいしく食べられ、減塩にもつながります。体を温める作用のある生姜や唐辛子と組み合わせるのもおすすめです。
4.知的健康の維持に役立つとされる栄養成分
脳の健康につながる成分として、以前からイチョウ葉エキス、DHA、クルクミン、レスベラトロール、カテキン、フェルラ酸、プラズマローゲンなどが知られています。ミツバチ産品のプロポリスもその一つ。
プロポリスは抗酸化作用、血圧改善作用、血栓予防作用などが報告されていて、認知機能の低下につながるさまざまなリスク要因の改善に役立つ可能性があります。
実際に高齢者を対象とした試験では、プロポリスの飲用を続けることで認知機能(言語記憶力)が改善されたという報告もあります。
「世界をリードする認知症の専門家からなるランセット委員会は、生活習慣に関連する14項目のリスク要因(※1)を生涯を通じて改善することで、認知症のリスクを最大で45%減らすことができると報告しています」(今野さん)
体を温めて血流をよくすること、室内でも体を軽く動かすこと、旬のうま味を楽しむこと――。こうした小さな積み重ねが、脳にとって大きな支えとなります。
季節に合った対策を意識しながら、脳の健康を守っていきましょう。
※1 <14項目の認知症リスク要因>
教育機会の不足(18歳まで)・難聴・高LDLコレステロール・うつ病・外傷性脳損傷・身体活動不足・糖尿病・喫煙・高血圧・肥満・アルコールの過剰摂取(18~65歳)・社会的孤立・大気汚染・視力障がい(65歳以上)
■取材協力:山田養蜂場 健康科学研究所
■監修者プロフィール:今野裕之(こんの・ひろゆき)さん

医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック名誉院長、一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長、医学博士。順天堂大学大学院卒。老化予防・認知症予防を専門とする。日本大学附属板橋病院・薫風会山田病院などを経て2016年にブレインケアクリニックを開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、患者一人ひとりに合わせた診療にあたる。著書に『最新栄養学でわかった!ボケない人の最強の食事術』(青春出版社刊)などがある。




