そのもの忘れ、大丈夫?認知症リスクを遠ざけるために今すぐできる対策5選

そのもの忘れ、大丈夫?認知症リスクを遠ざけるために今すぐできる対策5選

公開日:2025年09月11日

そのもの忘れ大丈夫?「もの忘れ」と「認知症の違い」と、今すぐできる認知症対策

帰省などで感じる親の変化。「ひょっとして認知症かも…?」と不安に感じるかもしれません。そこで、「もの忘れ」と「認知症」の違いや、認知機能改善につながる対策を、より早期からの認知症予防(ブレインケア)を提唱する医師の今野裕之さんに伺います。

今野裕之さん(ブレインケアクリニック名誉院長)
監修者
今野裕之
監修者 今野裕之 ブレインケアクリニック名誉院長

見逃さないで!親の認知症サイン

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しばらくぶりに会う両親の様子を見て、「もの忘れが多くなったような……」などと感じることはないでしょうか?

年齢を重ねれば、もの忘れが多くなったり、若い頃のように動けなくなったり、誰でも変化は起こるものですが、中には気を付けたい変化もあります。

より早期からの認知症予防(ブレインケア)を提唱する医師の今野さんは、「次のような変化が見られたら、認知症サインの可能性があります」と話します。

1.記憶に関する変化

  • 同じ話を何度もする、同じ質問を繰り返す……ついさっき話したばかりの内容を忘れ、あたかも初めて話すかのように同じ話や質問を繰り返す。
  • いつも探し物をしている……ものの置き忘れが極端に増え、「鍵がない」「財布がない」などと探している場面が増える。認知症が進行すると、「誰かに盗まれた」という「もの盗られ妄想」を起こすことも。
  • 約束を忘れる……人と会う約束や、通院の予約そのものを忘れてしまう。

2.日常生活の行動に関する変化

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  • 家電の操作に戸惑う……テレビのリモコンや炊飯器、電子レンジなど、長年使ってきたものの操作に戸惑うようになる。
  • 料理の段取りが悪くなる……料理の品数が減ったり、同じメニューばかりになったりする。
  • 身だしなみに無頓着になる……同じ服を何日も着ていたり、入浴を面倒臭がったりする。
  • 夏でも厚着をしている……温度の変化を感じにくくなり、暑い日でも厚着をしていたりすることがある。
  • 日付や曜日、時間、季節がわからなくなることがある。

3.性格や意欲に関する変化

  • ボーっとしていることが多い……今まで好きだった趣味や活動に関心を示さなくなり、一日中ボーっとテレビを見ているといったことが増える。
  • 性格が変わる……以前と比べて頑固になったり、些細なことで家族を疑ったりするような変化が見られる。

認知機能が低下してくると、記憶や日常生活、性格など、さまざまな変化が出てきます。記憶にあるかつての姿と、目の前の様子にギャップを感じることがあれば、「不安に感じた行動」をノートやメモに書き出してみて。現状の整理につながりますし、自身の今後のライフプランを改めて考えるきっかけにもなります。

「もの忘れ」と「認知症」の違いって?

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とはいえ、認知症の初期段階では、加齢によるもの忘れとの見分けがつきにくいものです。加齢よるもの忘れと認知症を見分けるポイントはあるのでしょうか?

今野さんは、「もの忘れと認知症の症状は、似ているようで違います」と言います。

もの忘れと認知症の症状の違いについて、今野さんに具体例をいくつか教えてもらいました。

もの忘れと認知症の違い

「もの忘れは、加齢によって脳の機能が低下し、記憶力の低下や、思考の整理がうまくいかなくなる状態です。体験したことの一部を忘れることもありますが、忘れているという自覚はあり、日常生活に支障をきたしません」

「一方で認知症は、脳の機能の低下が進み、記憶障害に加えて判断力や実行機能なども低下するので、日常生活に明らかな支障が生じます。体験したこと自体を忘れてしまうので、忘れた自覚もないのです」(今野さん)

もの忘れを放っておくと認知症になる!?

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親御さんの症状が認知症ではなくもの忘れであれば、そこまで心配しなくてもよいのでしょうか?

今野さんは、「加齢による生理的なもの忘れは、老化現象の一つ。それ自体が、直接的に認知症を引き起こすわけではありません」と解説します。

「ただし問題なのは、ご本人やご家族が『最近もの忘れが増えたな』と感じている症状が、単なる老化ではなく、MCI(軽度認知障害)の始まりの可能性があることです」(今野さん)

MCI(軽度認知障害)とは、もの忘れなどの認知機能障害はあるけれど、日常生活への影響はないか、あっても軽度なものである状態のこと。

「MCI(軽度認知障害)の初期の段階では、もの忘れとの見分けが難しいとされています。とはいえ、その状態を放置してしまうと、脳内の病理的な変化が進行し、認知症へと移行するリスクが著しく高まります。

健常な高齢者が1年間で認知症に移行する割合は1~2%程度ですが、MCI(軽度認知障害)の人では1年間で約10%が認知症に移行すると言われています。5年間で見ると、約半数が認知症に移行するという報告もあります」(今野さん)

MCI(軽度認知障害)の段階で早めに対策をすれば、認知機能低下の改善や、認知症への進行を予防できる可能性があります。

親御さんのもの忘れが気になったら、脳の元気につながる対策を教えるなど、できそうなサポートを検討してみましょう。

もの忘れ改善&認知症対策につながる5つの対策!周囲ができるサポートは?

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もの忘れの改善や、認知症予防に役立つ対策を、今野さんに教えてもらいました。もしご自身も気になっているなら、実践してもOK!親が取り組みやすいよう、私たち周囲の人たちができるサポートも併せて紹介します。

1.ウォーキング
ウォーキングや早歩きなど少し息が上がるくらいの運動は、脳の血流を改善して、神経細胞の成長を促す「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質を増やすことがわかっています。

週に3回以上、1日30分程度のウォーキングを続ければ、認知症の危険因子を減らせる可能性があるほか、生活習慣病の予防にもつながります。

<私たちができるサポート>
近くに住んでいるなら、「散歩に行こうよ」と誘って、一緒にウォーキングを楽しんでみるといいでしょう。地域のシルバー向けスポーツジムを調べて、「見学に行ってみない?」と提案するのもおすすめです。家が離れているなら、万歩計やスマートウォッチをプレゼントしてみても。「今日はどれくらい歩いた?」と、電話で話すきっかけにもなります。

2.新しい趣味に挑戦する
楽器、絵画、パソコン、外国語、料理など新しい趣味に挑戦すると、脳の使われていなかった部分が活性化し、神経ネットワークが複雑になって脳の予備能力が高まります。これにより、たとえ脳に多少の変化が起きても、症状として現れにくくなります。

<私たちができるサポート>
近くに住んでいるなら、一緒に趣味の教室に行ってみてはいかがでしょう?新しい場所に一人で行くのは不安でも、誰かと一緒なら始めやすいですし、親子のコミュニケーション促進にもつながります。また、「孫とスマホでテレビ電話ができるように、やり方を教えるよ」などの声掛けで、一緒に新しい機器の操作に挑戦してみるのも一手。

3.いろいろな人と交流する

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他者とのコミュニケーションは、話す、聞く、考えるといった脳のさまざまな機能を同時に使う、とても高度な知的活動です。

家族や友人との会話、趣味のサークルや地域の集まりへの参加を促して、人と交流する機会を増やしましょう。認知症の大きなリスク要因である社会的孤立を防ぐことにもつながります。

<私たちができるサポート>
近くに住んでいるなら、孫を連れて頻繁に顔を見せ、多世代での交流の機会を作ってあげるのがおすすめ。離れて暮らしているなら、用事がなくても定期的に電話をし、「最近どう?」といった何気ない世間話を楽しみましょう。同窓会や地域のイベント情報を伝え、「行ってみたら?」と背中を押すのもいいでしょう。

4.質の良い睡眠の確保
睡眠中、特に深い眠りの間に、アミロイドβなどの脳の老廃物が脳内から洗い流されることがわかっています。睡眠不足や、睡眠の質の低下は、この浄化システムを妨げ、認知症のリスクを高める可能性があります。

毎日できるだけ同じ時刻に寝て起きる、日中は太陽の光を浴びて活動する時間を作る、寝る前のカフェインやスマホは控える……など、睡眠の質を良くする習慣を心掛けましょう。

<私たちができるサポート>
日中の散歩や活動に誘って、昼夜のメリハリをつける手助けを。心配事で眠れないようであれば、じっくり話を聞いてあげて。遮光カーテンを一緒に選ぶなど、寝室の睡眠環境を整えるお手伝いをするのもおすすめです。

5.脳に良い食事を心掛ける

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魚(特に青魚)、野菜、果物、オリーブオイル、ナッツ類、発酵食品を積極的に取りながら、肉の油身やバター、甘いものは控える「地中海食」「伝統的な和食」を参考にした食事を心掛けましょう。

これらの食材に含まれる不飽和脂肪酸(DHA・EPA)、ビタミン、ポリフェノールには、抗酸化・抗炎症作用があり、脳の神経細胞をダメージから守る効果が期待できます。

<私たちができるサポート>
離れて暮らしているなら、「体に良いらしいよ」とオリーブオイルやナッツ、旬の野菜・果物などを実家に送る。近くにいるなら、一緒に買い物に行ったときにそうした食材をおすすめしてあげるといいでしょう。魚を使った健康的なレシピを教えたり作ってあげるのも、脳に良い食事を意識するきっかけになります。

脳の元気をサポートするには、ミツバチ産品のプロポリスもおすすめです。プロポリスは抗酸化・抗炎症作用などが報告されていて、もの忘れを自覚する高齢者を対象とした試験でも、飲用を続けることで認知機能スコアが緩やかに改善されたという結果が出ています。

認知機能の他に、血圧改善作用や血栓予防作用なども報告されているので、「健康でいてほしいから」と、飲みやすいサプリメントをプレゼントするのもいいですね。

生理的なもの忘れは、年齢を重ねると誰にでも出てくるものです。大切なのは、それを放っておかずに脳にいい対策を早めに取り入れること。ご両親のために何かできることはないかと探していたなら、ぜひ参考にしてみてください。

取材協力:山田養蜂場 健康科学研究所

■監修者プロフィール:今野裕之(こんの・ひろゆき)さん

医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック名誉院長、一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長、医学博士。順天堂大学大学院卒。老化予防・認知症予防を専門とする。日本大学附属板橋病院・薫風会山田病院などを経て2016年にブレインケアクリニックを開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、患者一人ひとりに合わせた診療にあたる。著書に『最新栄養学でわかった!ボケない人の最強の食事術』(青春出版社刊)などがある。

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