医師が教える!最新の健康常識#1
【前編】それ間違いかも!「免疫力を上げる」目からウロコの健康常識
【前編】それ間違いかも!「免疫力を上げる」目からウロコの健康常識
公開日:2025年12月25日
教えてくれたのは、医師・和田秀樹(わだ・ひでき)さん

1960(昭和35)年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。高齢者専門の精神科医として35年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。『80歳の壁』『70歳の正解』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。
免疫力を上げると思っている健康常識が免疫力を下げる!?
高齢者専門の精神科医として、これまで延べ6000人の患者を診てきた和田秀樹さん。
「多くの人が信じている健康常識が、高齢者にとっては役に立たないどころか体の害になることが珍しくありません」と指摘します。
「例えば、コレステロール値は低い方がいいと信じられていて、薬を飲んでいる人も多いでしょう。ところが、さまざまな疫学調査でコレステロール値は高めの方が長生きできることが明らかになっています」と和田さん。長年の経験とデータから、最新の健康常識を解説してもらいます。
間違い健康常識1:検査の数値は正常値に保つ
【正】正常な数値は人それぞれでいい

検査の数値が正常値かどうかを気にする人は多いですが、「正常値なら長生きできるという根拠はない」と和田さん。
例えば血糖値の指標ヘモグロビンA1c。日本では5.6%未満が正常とされますが、米国の大規模調査で7~7.9%が一番死亡率が低いことが明らかになりました。
「何が正常値なのか実はよくわかっていないのが実情。大事なのは数値よりも自分が元気かどうか。特に高齢になると血糖値や血圧はやや高めの方が活力を維持できるというのが実感です」
間違い健康常識2:コレステロール値は下げた方がいい
【正】女性がコレステロールを下げるのは、ほぼいいことなし
「コレステロールは免疫細胞の材料になるので無理に減らすと免疫力が落ち、がんのリスクが高まります。ハワイの研究では、コレステロール値が高い方ががんで死ぬ人が少ないとわかりました」と和田さん。
コレステロールは性ホルモンの材料にもなるため若さを保つのに重要で、数値が高い方がうつ病にもなりにくいといいます。「コレステロールが高いと心疾患の発症率が高まるといわれますが、特に女性はほとんど影響がない。コレステロールを下げるのはほぼ百害あって一利なしです」
間違い健康常識3:塩分・糖分は控えた方がいい
【正】足りない方が害が大きい。食べたいものを食べて免疫力アップ

血圧が高いと「塩分を1日6g未満に」と指導されますが、「高齢になると体内のナトリウム濃度が下がって疲労感が増し、重症化すると昏睡状態に陥る『低ナトリウム血症』になるリスクがある」と和田さん。
17か国の大規模研究では1日10~15gの塩分摂取が最も死亡率が低く、10gより低くなるほど死亡率が上がることがわかりました。「塩分も糖分も、年を取ると足りないことの方が害が大きい。食べたいものをしっかり食べて免疫力を上げましょう」
目からウロコでしたでしょうか? 医師が教える最新の健康新常識…4から6の項目は後編記事でお伝えします。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、撮影(和田さん)=日高奈々子、ヘアメイク=野村博史(加賀さん)、イラストレーション=カトウミナエ
※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年5月号を再編集しています。




