「ヘパーデン結節」「ばね指」…手指の痛み・不調を自分で防ぐ&治す!
「ヘパーデン結節」「ばね指」…手指の痛み・不調を自分で防ぐ&治す!
公開日:2025年12月10日
教えてくれた人:大井宏之(おおい・ひろゆき)さん

聖隷浜松病院 手外科 マイクロサージャリーセンター センター長
1987(昭和62)年、富山医科薬科大学(現・富山大学)卒業。2007年より現職。日本手外科学会手外科専門医。手の疾患の治療・手術のスペシャリストとして、NHK「きょうの健康」などにも出演。主著に『図解手指の痛み・しびれ解消事典』(学研プラス刊)がある。
50代の約5人に1人が手指の疾患を抱えています
実は50代では約5人に1人、70歳以上になると自覚症状がなくてもほぼ全員かが何らかの手指の疾患を抱えているというデータも。2011年から2013年にかけ、計1562名(平均年齢63.5歳)を対象に行われた研究では、男女とも70歳以上のほぼ100%に、へバーデン結節に代表される手の変形性関節症が見られました(グラフは女性の結果)。
まずは手指の“健康診断”を!不調に気付き、ケアしましょう

上のグラフのように、年齢とともに悩む方が増えてくる、手指の痛みや、しびれ・変形などの不調。実はその原因について「はっきりわからない点も多い」と話すのは、手外科のスペシャリストである大井宏之さんです。
「例えば、特に患者数が多いへバーデン結節や母指CM関節症などの『手の変形性関節症』。これは指の関節にある軟骨が加齢や摩耗ですり減り、関節に負担がかかることで痛みや腫れなどが生じるとされます。
一方でその発症には、閉経後の女性ホルモンの減少、糖尿病や高血圧の有無、遺伝的要素など、さまざまな因子が関係しているとされ、“疾患自体を予防する”ことは非常に難しいと言えます。だからこそ手指の変調に早く気付き、正しく対処することが大切です」と強調します。
手指の疾患の兆候は、痛みや腫れなど顕著なものだけではありません。例えば「手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)」(後述)では、「OKサインが作りにくい」「指先で物がつまみにくい」といったことも症状の一つ。他にも代表的な疾患のセルフチェック項目を次からまとめました。まずはセルフチェックで手指の健康診断をしてみましょう。
セルフチェック1:「ヘパーデン結節」「ブシャール結節」「母指CM関節症」

指の関節が変形する「ヘパーデン結節」「ブシャール結節」
【どんな病気?】
へバーデン結節は、手の変形性関節症の中で最も患者数が多い病気。指の第一関節に痛みや腫れが起こります。第二関節で同様の異常が起こるのはブシャール結節です。
【こんな人は注意!】
□指が痛くてペットボトルのふたなどが開けられない
□指先で物を持つと指が痛む
□指の関節が腫れたようにふくらみボコボコしている
親指の付け根が痛む「母指CM関節症」
【どんな病気?】
加齢や親指の使い過ぎが原因で起こるとされ、悪化すると関節が変形、癒着することも。親指を使って物を持つ、つまむ動作がしづらくなります。
【こんな人は注意!】
□親指の第二関節が反りかえっている
□親指の付け根に痛みや腫れがある
□親指に力を入れる動作で、親指の付け根に痛みが生じる

セルフチェック2:「ばね指」「ドケルバン病」「手根管症候群」

指の曲げ伸ばしで痛む「ばね指」
【どんな病気?】
腱鞘炎の一つで、曲げ伸ばしの際、指がばねのように跳ね上がるのが特徴。パソコンや楽器演奏、農業などで指を酷使する人に多く見られる疾患です。
【こんな人は注意!】
□指の曲げ伸ばしがしづらい
□指の動きに引っかかりを感じる
□曲げた指を伸ばそうとすると跳ね上がる
親指側の手首が痛む「ドケルバン病」
【どんな病気?】
主に親指の使い過ぎで、手首の親指側の腱と腱鞘(腱が通る管)がこすれ、炎症が起こる腱鞘炎の一つ。スマホの片手操作も原因とされます。
【こんな人は注意!】
□親指を動かすと、手首の親指側に痛みがある
□物を持つと手首がビリッとする
□親指を握り込んで手首を小指側に反らすと痛む(下イラスト)

親指から薬指にかけてしびれる「手根管症候群」
【どんな病気?】
手指にしびれが出る代表的な疾患です。親指から薬指だけに症状が現れるのが特徴で、感覚が鈍ったり、親指の付け根の筋肉が痩せたりすることも。
【こんな人は注意!】
□親指から薬指にしびれや違和感がある
□指先で物をつまむ動作がしにくい
□OKサインでうまく丸を作れない(下イラスト)

手指の健康こそが暮らしの質を決める
「手指のトラブルは直接命に関わることではないので、放置している方も多いのが現状です。しかし、手指の働きはあらゆる日常動作の要。その健康を害することは、暮らしの質を大きく落とします」と指摘する大井さん。
対策の一つとして、次回からハルメク世代が特に気を付けたい「へバーデン結節」「手根管症候群」「ばね指」の簡単なセルフケアを紹介しています。「もちろん心配なことがあれば医師に相談を。手外科がベストですが、近くになければ整形外科を受診しましょう」
次回は、特に気を付けたい手指の疾患3つと、進行を防ぐ正しい対処法 を紹介します。
取材・文=新井理紗(ハルメク編集部)、イラストレーション=ツキシロクミ
※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年5月号を再編集しています




