手湿疹とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
手湿疹とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年09月25日
この記事3行まとめ
✓手湿疹は、洗剤や水仕事などの刺激で誰にでも起こりうるつらい症状です。
✓50代以上では皮膚の乾燥が進み、バリア機能が低下するため特に注意が必要です。
✓正しい知識でしっかり保湿・保護を。症状が長引く場合は皮膚科に相談しましょう。
手湿疹とは?
手湿疹は、その名の通り「手にできる湿疹」の総称です。多くは、水や洗剤、紙類などに頻繁に触れることで起こる「刺激」が原因で、皮膚のバリア機能が壊れてしまうことで発症します。いわゆる「手荒れ」が悪化した状態と考えると分かりやすいかもしれません。
特に50代以上の女性は、長年の家事や仕事に加え、年齢とともに皮膚のうるおいを保つ力が弱まりがちです。そのため、若い頃はなんともなかったような少しの刺激でも、かゆみや赤み、ひび割れなどのつらい症状に悩まされることが増えてくるのです。
よく見られる身体的症状
手湿疹の症状は、実にさまざまです。多くの場合、利き手の指先から症状が現れ、手のひら、手の甲へと広がっていきます。
- 乾燥とカサつき:手の皮膚全体のうるおいがなくなり、カサカサと乾燥します。
- 赤みとかゆみ:炎症が起き、赤みを帯びてむずがゆいような、時には我慢できないほどのかゆみを感じます。
- ひび割れ・あかぎれ:特に指の関節など、皮膚が乾燥して硬くなり、パックリと亀裂が入ってしまう状態です。水がしみて、強い痛みを伴うこともあります。
- じゅくじゅく:かき壊してしまうことで、患部から浸出液が出てじゅくじゅくした状態になります。
- 皮膚が硬くなる(角化):慢性化すると、手のひらの皮膚がゴワゴワと厚く硬くなることがあります。
これらの症状は、良くなったり悪くなったりを繰り返すことも特徴です。
心理的な変化
つらい症状は、私たちの心にも影響を及ぼします。かゆみで夜中に目が覚めてしまったり、痛みで家事や仕事に集中できなかったり。また、人前に手を出すのが恥ずかしいと感じ、気持ちが落ち込んでしまう方も少なくありません。
厚生労働省の調査(2023年)によると、皮膚疾患で通院している方のうち、女性は男性の約1.5倍にのぼります。特に手湿疹は、水仕事の機会が多い女性に顕著に見られる症状です。正確な統計はありませんが、多くの皮膚科医が、日常的に非常に多くの患者さんを診察していると報告しています。
手湿疹の原因とメカニズム
手湿疹の主な原因は、以下の3つに分けられます。
1. 生理学的要因
年齢を重ねるとともに、皮膚のバリア機能に大切な皮脂や天然保湿因子(NMF)、セラミドなどが減少していきます。これにより皮膚が乾燥しやすくなり、外部からの刺激を受けやすい状態になります。もともとアトピー性皮膚炎の体質がある方も、皮膚のバリア機能が弱いため手湿疹になりやすい傾向があります。
2. 環境的要因
手湿疹の最大の原因ともいえるのが、日々の生活の中に潜む環境的な要因です。
- 水仕事:食器洗いやお風呂掃除、洗濯など、水に触れる機会が多いほど皮膚の皮脂は奪われます。特にお湯は皮脂を溶かし出す力が強いため、より注意が必要です。
- 洗剤・石鹸・アルコール消毒液:これらの洗浄成分や殺菌成分は、汚れを落とすだけでなく皮膚のバリア機能まで壊してしまいます。
- 物理的な摩擦:紙を頻繁に扱う仕事や、段ボールの片付け、ガーデニングの土いじりなども、手の皮膚にとっては大きな刺激となります。
- アレルギー:特定の物質に触れることでアレルギー反応を起こし、手湿疹を発症することがあります。原因物質としては、ニッケルやクロムなどの金属、ゴム手袋、染毛剤、植物(ウルシなど)が知られています。
3. 心理社会的要因
50代以上になると、子育てが一段落する一方で、親の介護が始まったり、仕事での責任が重くなったりと、ストレスを感じやすい時期でもあります。ストレスは自律神経や免疫のバランスを乱し、皮膚の炎症を悪化させる一因となることが知られています。
発症メカニズム
私たちの皮膚は、表面にある「角層」がバリアとなって、外部の刺激や乾燥から体を守っています。しかし、前述のような原因によってこのバリア機能が壊れると、刺激物質が皮膚の内部に侵入しやすくなります。すると、体はそれを「異物」とみなし、追い出そうとして免疫細胞を集め、炎症反応を起こします。これが、かゆみや赤み、ぶつぶつといった湿疹の正体です。
リスク要因
- 水仕事や手洗いが多い職業(美容師、調理師、医療・介護従事者など)
- アトピー性皮膚炎の既往歴や家族歴
- 乾燥肌
- 金属アレルギーなどのアレルギー体質
- ストレスの多い生活
診断方法と受診について
次に、受診する場合の流れについて説明します。
いつ受診すべきか
市販薬を5〜6日使っても改善しない、かゆみや痛みが我慢できない、症状がどんどん広がっていく、といった場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。「たかが手荒れ」と放置していると、慢性化して治りにくくなってしまうことがあります。
診断の流れ
1. 問診で確認すること
医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。
- いつから、どのような症状がありますか?
- 症状は良くなったり悪くなったりしますか?
- 職業や、よく手を使う作業について教えてください。
- アレルギーはありますか?
- 現在、治療中の病気や使っている薬はありますか?
2. 手の診察
医師が、手の湿疹の状態を詳しく観察します。どのような湿疹が、どの範囲に広がっているかなどを確認します。プライバシーには十分に配慮して診察が行われますので、ご安心ください。次に、必要に応じて詳しい検査を行うことがあります。
3. 代表的な検査例
- パッチテスト:アレルギーが疑われる場合に、原因物質を特定するために行います。原因と思われる物質を背中などに貼り、48時間後と72時間後に皮膚の反応を調べます。
- 血液検査:アトピー素因の有無などを調べるために行うことがあります。
- 真菌検査:症状が似ている手白癬(水虫)との鑑別のために、皮膚の角層を一部採取して顕微鏡で調べることがあります。
受診時の準備
受診の際は、お薬手帳を持参しましょう。また、普段お使いのハンドクリームや、原因として思い当たる製品(化粧品、洗剤など)があれば、それも持っていくと診断の助けになります。いつから、どんな時に症状が悪化するかなどをメモしておくと、医師に伝えやすくなります。
受診すべき診療科
手湿疹の専門は「皮膚科」です。かかりつけの皮膚科がない場合は、お住まいの自治体の保健所や医師会のホームページなどで探すことができます。
手湿疹の治療法
皮膚科では、問診や検査の結果をもとに、一人ひとりの症状や原因に合わせた治療方針を決定します。医師とよく相談し、納得して治療を進めることが大切です。
薬物療法
手湿疹の治療の基本は、ステロイド外用薬(塗り薬)で炎症をしっかりと抑えることです。
- ステロイド外用薬:炎症を抑える最も効果的な薬です。症状の強さや部位に合わせて、適切な強さの薬が処方されます。医師の指示通りに、適切な量を適切な期間使うことが重要です。
- 保湿剤:皮膚のバリア機能を回復させるために、ヘパリン類似物質や尿素などが配合された保湿剤が処方されます。症状が改善した後も、保湿を続けることが再発予防につながります。
- 抗ヒスタミン薬(飲み薬):かゆみが強い場合には、かゆみを抑えるための飲み薬が処方されることがあります。
ご自身で判断せず、必ず医師の診断のもとで薬を使用してください。
非薬物療法
- 光線療法(紫外線療法):ステロイド外用薬で効果が不十分な場合や、慢性化して皮膚が厚くなっている場合に行われることがあります。
- 原因物質の除去・回避:アレルギーが原因の場合は、その物質を避けることが最も重要です。
これらの治療法も、必ず医師の指導のもとで行ってください。
生活習慣による管理
薬による治療と並行して、生活習慣を見直すことも非常に重要です。特に、保湿と保護を徹底することが、症状の改善と再発予防の鍵となります。
治療期間と予後
症状の程度によりますが、適切な治療とセルフケアを行えば、通常、数日から数週間で症状は改善に向かいます。しかし、一度傷ついた皮膚のバリア機能が完全に元通りになるには、さらに長い時間が必要です。見た目がきれいになったからといってすぐに薬や保湿をやめてしまうと、わずかな刺激で再発しやすくなります。
特に水仕事など、原因となる刺激を日常生活から完全に取り除くのが難しい場合、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返す傾向があります。根気強く治療とセルフケアを続け、「症状をコントロールし、上手に付き合っていく」という視点を持つことが大切です。
予防法と日常生活での注意点
一次予防(発症予防)
- こまめな保湿:手洗い後、水仕事の後、お風呂上がり、寝る前など、1日に何度もハンドクリームを塗る習慣をつけましょう。
- 手の保護:水仕事の際は、綿の手袋をした上からゴム手袋をはめる「二重手袋」がおすすめです。
- 刺激の少ない製品を選ぶ:食器用洗剤や石鹸は、肌にやさしいタイプを選びましょう。
二次予防(早期発見・早期治療)
「少しカサつくな」と感じたら、それは手湿疹のサインかもしれません。早めに保湿ケアを徹底し、症状が改善しない場合は我慢せずに皮膚科を受診することが、悪化させないためのポイントです。
日常生活の工夫
手湿疹の悪化を防ぎ、改善につなげるには、日々の生活の中でのこまやかな工夫が欠かせません。具体的なシーン別に見ていきましょう。
- 手洗いはぬるま湯で:熱いお湯は皮脂を奪いすぎるため避けましょう。石鹸を使った後は、すすぎ残しがないように丁寧に洗い流します。
- 指輪を外す:指輪と皮膚の間に洗剤などが残り、かぶれの原因になることがあります。水仕事や手洗いの際は外す習慣をつけましょう。
シーン別・手の守り方
料理をするとき:ハンバーグをこねる、アクの強い野菜を切るなど、手に刺激が加わる作業の際は、薄手のビニール手袋(ポリエチレン製など)を使うと良いでしょう。米とぎも、泡立て器を使えば手に負担がかかりません。
- 掃除・洗濯のとき:カビ取り剤や漂白剤などの強力な洗剤を使う際は、必ずゴム手袋を。洗濯物を干すときも、濡れた衣類に触れることで手が荒れることがあります。乾いたものを取り込む際以外は、手袋を意識すると安心です。
- 趣味を楽しむとき:ガーデニングで土や肥料に触れる際は、専用の手袋を着用しましょう。絵手紙や書道などで墨汁を使う際も、指先が汚れやすいので注意が必要です。
- 就寝時:夜は、日中のダメージを修復する絶好のチャンス。保湿剤をたっぷり塗った後、綿の手袋をして眠る「おやすみ手袋」は、保湿効果を高めるのにおすすめです。手袋が苦手な方は、まずは指先だけのタイプから試してみてはいかがでしょうか。
季節ごとの注意点
手湿疹は、季節によっても症状が変化します。それぞれの季節に合わせた対策を知っておきましょう。
- 春:スギやヒノキなどの花粉が飛散する季節。花粉が皮膚に付着することで、アレルギー反応が起き、かゆみや湿疹が悪化することがあります。外出から帰ったら、手を洗うだけでなく、顔や髪についた花粉も洗い流すようにしましょう。
- 夏:汗をかきやすい季節。汗に含まれる塩分やアンモニアが刺激となり、あせものようにかゆみが出ることがあります。汗をかいたら、こまめに濡れたタオルでやさしく拭き取り、その後は保湿を忘れずに行いましょう。また、冷房の効いた室内は空気が乾燥しているため、夏でも保湿は必須です。
- 秋:夏に受けた紫外線のダメージと、急激な湿度の低下により、一年で最も肌が乾燥しやすい季節とも言われます。症状が落ち着いていても油断せず、保湿ケアを一段と強化しましょう。
- 冬:一年で最も空気が乾燥し、手湿疹が悪化しやすい季節です。水仕事でお湯を使う機会も増えるため、皮膚の皮脂は奪われがち。保湿はもちろん、手袋での保護を徹底し、加湿器などで室内の湿度を適切に保つことも大切です。手湿疹を起こしやすい方は、外出時には常に手袋を着用することを心掛けましょう。
十分な睡眠とバランスの取れた食事:体の内側から皮膚の健康を支えることも大切です。
【食生活のヒント】健やかな皮膚を作る栄養素 バランスの良い食事が基本ですが、特に意識して摂りたいのが、皮膚の材料となる「タンパク質」、皮膚の新陳代謝を助ける「ビタミンB群」、そして抗酸化作用で皮膚の老化を防ぐ「ビタミンA・C・E」です。
- タンパク質:肉、魚、卵、大豆製品
- ビタミンB群:豚肉、レバー、うなぎ、納豆
- ビタミンA:緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃなど)
- ビタミンC:パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ
- ビタミンE:ナッツ類、アボカド これらの食材を日々の食事に上手に取り入れて、体の内側からも手湿疹に負けない肌作りを目指しましょう。
心と体をいたわるメンタルケア
「病は気から」という言葉があるように、心の状態は体の健康に深く関わっています。特に、手湿疹のように見た目に現れ、症状が長引く病気は、知らず知らずのうちにストレスを溜め込みがちです。つらい症状と上手に付き合っていくために、心と体をいたわる時間も大切にしましょう。
リラクゼーション法を取り入れる
- 式呼吸:椅子に座って、あるいは横になって、おへその下に意識を集中させます。鼻からゆっくり息を吸い込みお腹を膨らませ、口からゆっくりと息を吐き出しお腹をへこませます。これを数分間繰り返すだけで、心身の緊張がほぐれます。
- 好きな香りに包まれる:アロマテラピーもおすすめです。ラベンダーやカモミールなど、リラックス効果のある精油の香りは、高ぶった神経を鎮めてくれます。アロマディフューザーを使ったり、ティッシュに1滴垂らして枕元に置いたりするのも良いでしょう。
趣味や楽しみを諦めない 「手が痛いから」「人に見られるのが恥ずかしいから」と、好きだったことを諦めていませんか。例えば、ガーデニングなら手袋を工夫する、編み物なら一度に編む時間を短くするなど、少しやり方を変えるだけで、続けられることがあるかもしれません。何かに夢中になる時間は、つらい症状を忘れさせてくれる貴重なひとときです。
悩みを一人で抱え込まない つらい気持ちを誰かに話すだけで、心は軽くなるものです。ご家族や親しい友人に、今の気持ちを素直に打ち明けてみましょう。また、最近ではSNSなどで、同じ病気の悩みを持つ人たちのコミュニティもあります。共感し合える仲間を見つけることも、大きな支えになるはずです。
家族・周囲のサポート
手湿疹のつらさは、経験した人にしか分からないものです。もしご家族が手湿疹で悩んでいたら、「たかが手荒れ」と言わずに、水仕事などを少し代わってあげるなどの配慮があると、ご本人の負担も気持ちも楽になるはずです。
よくある質問(FAQ)
Q1: 手湿疹は他の人にうつりますか?
A: いいえ、手湿疹は感染症ではないため、他の人にうつることはありません。どうぞご安心ください。ただし、症状が似ている「手白癬(水虫)」はうつることがありますので、正確な診断のためにも一度皮膚科を受診されることをおすすめします。
Q2: どんなハンドクリームを選べば良いですか?
A: 保湿成分である「ヘパリン類似物質」「セラミド」「ワセリン」などが含まれているものがおすすめです。尿素配合のクリームも効果的ですが、ひび割れがあるとしみることがあります。香料や着色料などが含まれていない、低刺激性の製品を選ぶと良いでしょう。色々試して、ご自身が心地よく使えるものを見つけるのが一番です。
Q3: 水仕事の時に手袋をすると、かえって蒸れてかゆくなります。
A: よくあるお悩みですね。その場合は、まず薄い綿の手袋をしてから、その上にゴム手袋を重ねる「二重手袋」を試してみてください。綿の手袋が汗を吸い取ってくれるので、蒸れやかゆみが軽減されますよ。
Q4: ステロイドの塗り薬は、副作用が怖いのですが…
A: 皮膚科で処方されるステロイド外用薬は、医師が症状に合わせて適切な強さと使い方を指導してくれます。再発するのが怖いからと、症状のないときにずっと使用することはおすすめできませんが、ステロイドの副作用よりも、手湿疹の状態が長く続くことの方が肌へのダメージは大きくなります。
指示通りに正しく使えば、決して怖い薬ではありません。自己判断で塗るのをやめたり、量を減らしたりすると、かえって症状が長引くことがあります。不安な点は、遠慮なく医師や薬剤師にご相談ください。
Q5: 治ったと思っても、またすぐに再発します。
A: 手湿疹は、残念ながら再発しやすい病気です。症状が良くなっても、原因となる刺激に触れ続ければ、皮膚のバリア機能が再び壊れてしまいます。すぐに再発する方に多いのが、治療期間が短すぎることです。年齢によって異なりますが、皮膚が生まれ替わるのには1月半から2ヶ月ほどかかります。数日ステロイド外用薬を使用して一見よくなっても、まだ肌のダメージは残っており、バリア機能が十分ではないため再発しやすくなります。
きれいになってからもバリア機能が回復するまで2~3週間ほど治療を継続するとよいでしょう。大切なのは、症状がなくなった後も、保湿と保護のケアを「予防」として続けることです。根気強く付き合っていきましょう。
それでも再発しやすい場合は、治った後も週に2~3回数日おきにステロイドを使用して再発を予防する“プロアクティブ療法”で再発を予防するのも良いでしょう。週に2~3回の使用でしたら、長期間ステロイド外用薬を使用しても副作用の心配はありません。
Q6: 食べ物で気をつけることはありますか?
A: 特定の食物アレルギーが原因でない限り、食事で手湿疹が直接悪化することは少ないと考えられています。しかし、皮膚の健康を保つためには、ビタミンやミネラルをバランス良く摂ることが大切です。特に、皮膚の材料となるタンパク質や、新陳代謝を助けるビタミンB群、抗酸化作用のあるビタミンC・Eなどを意識して摂ると良いでしょう。
Q7: ストレスも関係ありますか?
A: はい、大いに関係があると考えられています。ストレスは自律神経のバランスを乱し、免疫力を低下させ、かゆみを感じやすくさせることがあります。お忙しい毎日だとは思いますが、好きな音楽を聴いたり、ゆっくりお風呂に浸かったりと、ご自身をいたわる時間を作ることも、大切な治療の一つですよ。
Q8: アルコール消毒はしない方が良いですか?
A: 感染症対策としてアルコール消毒が必要な場面はありますが、手湿疹にとっては強い刺激になります。消毒した後は、必ずハンドクリームで保湿するように心がけてください。可能であれば、低刺激性の消毒液を選んだり、流水と石鹸での手洗いを優先するなどの工夫も有効です。保湿成分入りの手指消毒用アルコールを使用するのも良いでしょう。
Q9: 利き手ばかりひどくなるのはなぜですか?
A: 利き手は、物を持ったり、作業をしたりと、どうしても使う頻度が高くなります。そのため、外部からの刺激を受ける機会が多くなり、症状が出やすく、また治りにくくなる傾向があります。意識して利き手を休ませる時間を作るのも良いかもしれません。
Q10: もう何年も治りません。一生このままなのでしょうか?
A: 長く続くと、本当に気持ちが滅入ってしまいますよね。でも、決してあきらめないでください。原因を正しく突き止め、ご自身の肌に合った治療法とセルフケアを見つけることで、症状をコントロールすることは可能です。信頼できる皮膚科の先生と一緒に、根気強く治療を続けていきましょう。
まとめ
大切なポイント
- 湿疹は、刺激と乾燥で皮膚のバリア機能が壊れることで起こります。
- 治療の基本は「ステロイド外用薬」と「保湿」。医師の指示通りに使いましょう。
- 症状がなくても保湿と保護を続け、再発を予防することが何より大切です。
- つらい時は一人で抱え込まず、皮膚科医に相談しましょう。
毎日、家族のために、仕事のために、がんばってきた「手」。その手が悲鳴をあげているのが、手湿疹なのかもしれません。鏡に映る自分の手を見て、ため息をついてしまう日もあるでしょう。でも、その手は、あなたの人生そのものです。たくさんの人を愛し、支え、素晴らしいものを創り出してきた、世界で一番美しい手なのです。どうか、これからはご自身の体を、そしてその手を、うんといたわってあげてください。正しいケアで、手はきっと応えてくれます。あなたの手が、また自信をもって輝ける日が来ることを、心から願っています。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。
監修者プロフィール:中野 貴光さん

よしクリニック(東京都練馬区) 院長。日本形成外科学会形成外科専門医。日本熱傷学会熱傷専門医。日本レーザー医学会レーザー専門医。日本手外科学会手外科専門医。日本形成外科学会小児形成外科分野指導医。医学博士。形成外科・皮膚科・美容皮膚科・美容外科の医療を提供する「よしクリニック」にて、4種類の専門医をもつマルチな形成外科医として、幅広い知識と高い技術をもって診察にあたっている。




