乾癬とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
乾癬とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年09月25日
この記事3行まとめ
✓乾癬は皮膚が赤くなり盛り上がる慢性の病気で、人にうつりません。
✓50代女性は発症のピークの一つ。ストレスや生活習慣も影響します。
✓治療法は多様化しており、症状をコントロールし上手に付き合うことが可能です。
乾癬とは?
乾癬は、「かんせん」という名前から誤解されがちですが、他人にうつる病気(感染症)ではありません。皮膚が赤くなる「紅斑(こうはん)」、皮膚が盛り上がる「浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)」、そして銀白色のかさぶたのような「鱗屑(りんせつ)」ができ、それがフケのようにポロポロと剥がれ落ちる「落屑(らくせつ)」が主な症状の、慢性の皮膚の病気です。
良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、長い付き合いになることも少なくありません。しかし、正しい知識を持ち、適切な治療を続けることで、症状をコントロールし、健やかな毎日を送ることは十分に可能です。特に、女性が50代以上を迎えるタイミングが発症のピークの一つとされており、更年期によるホルモンバランスの変化や、生活習慣、ストレスなどが影響することもあるため、ご自身の身体としっかりと向き合うことが大切になります。
よく見られる身体的症状
乾癬の症状は、私たちの身近なところに現れます。特に、ひじ、ひざ、腰まわり、そして頭皮など、普段から刺激を受けやすい場所に出やすいのが特徴です。
50代以上の女性が特に気になる症状としては、以下のようなものがあります。
- 皮膚の見た目の変化:くっきりと盛り上がった赤い発疹(紅斑)と、その上の銀白色のかさぶた(鱗屑)が最も代表的です。濃い色の服を着ると、肩のあたりにフケのように鱗屑が落ちて気になる、というお悩みもよく伺います。
- かゆみ:患者さんの約半数以上がかゆみを感じると言われています。我慢できずにかいてしまうと、症状が悪化したり、新たな発疹が出たりする「ケブネル現象」という特徴もあるため、注意が必要です。
- 爪の変化:爪が白く濁ったり、小さな凹みができたり、厚くなったりすることがあります。ネイルアートを楽しみたいのに、と気落ちされる方もいらっしゃいます。
- 関節の痛み:一部の方では、関節リウマチのように、手足の指や背骨、アキレス腱などに痛みや腫れ、こわばりを感じる「乾癬性関節炎」を合併することがあります。朝、起きた時に指が動かしにくい、といった症状から気づかれることもあります。
心理的な変化
乾癬は、体の症状だけでなく、私たちの心にも影響を及ぼすことがあります。見た目を気にするあまり、気持ちが落ち込んだり、人と会うのが億劫になったりすることは、決してめずらしいことではありません。
「この発疹が、他人の目にどう映っているのだろう」「温泉やプールに誘われたけれど、断ってしまった」…そんなふうに、知らず知らずのうちに、行動範囲を狭めてしまう方もいらっしゃいます。また、治療が長期間にわたることで、将来への不安を感じたり、孤独感を深めたりすることもあるでしょう。こうした心の負担は、時に症状そのものよりも辛く感じられるものです。ご自身の心の声にも耳を傾け、一人で抱え込まないことが大切です。
日本の乾癬患者さんは、約43万人から56万人いると推定されており、決してめずらしい病気ではありません。
- 男女比:全体的には男性に多い傾向(男女比2:1)が見られます。
- 発症年齢:男性は30から40代に発症のピークがありますが、女性の場合は10代と50代に発症のピークが二つあるのが特徴です。50代以上の女性にとって、乾癬は決して他人事ではない病気と言えるでしょう。
- 種類:最も一般的な「尋常性乾癬」が全体の約9割を占めます。その他、関節症状を伴う「乾癬性関節炎」、膿(うみ)を持つ発疹が現れる「膿疱性乾せん」、全身の皮膚が赤くなる「乾癬性紅皮症」など、いくつかの種類があります。特に「膿疱性乾癬(汎発型)」は国の指定難病となっています。
乾癬のさまざまな種類
乾癬は、その症状の現れ方によって、いくつかの種類(病型)に分けられます。最も多いのは「尋常性乾癬」ですが、他のタイプについても知っておくことが大切です。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
乾癬の患者さんの約90%を占める、最も一般的なタイプです。「尋常性」という言葉は、「普通」や「一般的」という意味です。頭皮、ひじ、ひざ、おしりなど、外部からの刺激を受けやすい部位に、境界がはっきりした赤い発疹(紅斑)ができ、その上に銀白色の鱗屑が付着します。
乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
皮膚の症状に加えて、関節に痛みや腫れ、こわばりなどが現れるタイプです。関節リウマチと間違われることもありますが、乾癬性関節炎は、指の第一関節(DIP関節)に症状が出やすい、アキレス腱の付着部に痛みが出る、といった特徴があります。放置すると関節が変形してしまうこともあるため、早期の診断と治療が重要です。皮膚科とリウマチ科が連携して治療にあたることもあります。
滴状乾癬(てきじょうかんせん)
風邪や扁桃炎(へんとうえん)などの感染症、特に溶連菌感染症の後に発症することが多いタイプです。胴体や手足に、水滴のような形をした小さな発疹が、急にたくさん現れます。子どもや若い世代に比較的多く見られます。きっかけとなった感染症を治療することによって症状は治まりますが、まれに再発を繰り返したり、尋常性乾癬に移行したりするケースもあります。
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
発熱や強い倦怠感とともに、皮膚が赤くなり、その上に膿(うみ)が入った小さな水ぶくれ(膿疱)が多数現れる、重症なタイプの乾癬です。膿疱は無菌性で、人にうつることはありません。急激に症状が全身に広がる「汎発性膿疱性乾癬」は、国の指定難病に認定されており、入院治療が必要になることもあります。
乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
尋常性乾癬が全身に広がり、皮膚の90%以上が赤くなってしまった状態です。発熱や倦怠感、むくみなどを伴い、体温調節が難しくなったり、脱水症状を起こしたりすることもあります。こちらも入院による集中治療が必要となる重症な状態です。
乾癬の原因とメカニズム
乾癬のはっきりとした原因はまだ完全にはわかっていませんが、個人の遺伝的な体質(乾癬になりやすい体質)に、さまざまな環境要因が加わることで発症すると考えられています。
1. 遺伝的要因
ご家族に乾癬の方がいると、ご自身も発症しやすい傾向があることが知られています。しかし、遺伝的な体質があるからといって、必ずしも発症するわけではありません。あくまで、発症の可能性のある「素因」を持っている、ということです。
2. 環境的要因
私たちの日常生活の中に、乾癬の引き金となるさまざまな要因が潜んでいます。
- 生活習慣の乱れ:高カロリー・高脂肪な食事、肥満、不規則な生活、睡眠不足などは、乾癬を悪化させる可能性があります。
- ストレス:仕事や家庭内の悩み、人間関係など、精神的なストレスは免疫のバランスを乱し、症状の悪化につながることがあります。
- 感染症:風邪や扁桃炎などの感染症が、乾癬の発症や悪化のきっかけになることがあります。特に、溶連菌感染による扁桃炎をきっかけとして、水滴のような形の発疹が全身に出る「滴状乾癬」が出ることがあります。
- 薬剤:一部の血圧の薬や痛み止めなどが、乾癬を誘発したり悪化させたりすることが報告されています。
- 物理的な刺激:衣類のこすれ、きつい下着のしめつけ、ケガ、日焼けなども、その部位に新たな発疹を作るきっかけ(ケブネル現象)となることがあります。
- 喫煙:喫煙は乾癬の悪化要因の一つと考えられています。
3. 心理社会的要因
50代以上の女性は、子どもの独立、親の介護、ご自身のキャリアの変化、そして更年期など、人生の大きな転機を迎える時期です。こうしたライフイベントに伴う心理的な負担や社会的な役割の変化が、知らず知らずのうちにストレスとなり、免疫のバランスを崩す一因となることも考えられます。
発症メカニズム
乾癬は、単なる肌の病気ではなく、「免疫」の働きに異常が生じることで起こる病気です。私たちの体を異物から守るはずの免疫システムが、何らかのきっかけで過剰に活性化し、自分自身の皮膚の細胞を攻撃してしまいます。
この攻撃によって皮膚に炎症が起こり、皮膚の細胞が異常な速さで増殖します。通常、皮膚の細胞は約4~8週間のサイクルで生まれ変わりますが、乾癬の皮膚では、そのサイクルがわずか4~5日程度に短縮されてしまいます。このため、未熟な皮膚細胞がどんどん積み重なり、盛り上がった紅斑や、剥がれ落ちる鱗屑といった特徴的な症状が作られるのです。
リスク要因
乾癬の発症や悪化のリスクを高める要因を理解することは、予防や症状のコントロールにつながります。
- 遺伝的素因:ご家族に乾癬の方がいる場合。
- 肥満:特に内臓脂肪の増加は、炎症を引き起こす物質を放出し、乾癬を悪化させることが知られています。
- 生活習慣病:糖尿病、高血圧、脂質異常症などを合併している方は、乾癬のリスクも高いとされています。
- ストレスの多い生活:心身のストレスは免疫系に直接影響します。
- 喫煙・過度の飲酒:これらは乾癬の悪化因子として知られています。
- 不適切な食生活:脂肪分の多い食事や、バランスの偏った食事。
これらのリスク要因を一つでも減らしていくことが、健やかな肌を保つための第一歩となります。
診断方法と受診について
次に、病院を受診する場合の流れについて説明します。
いつ受診すべきか
以下のような症状が見られる場合は、自己判断せず、早めに皮膚科を受診しましょう。
- フケが急に増え、市販のシャンプーを試しても改善しない。
- ひじやひざなどに、カサカサして少し盛り上がった赤い発疹ができた。
- 発疹にかゆみを伴い、掻くと白い粉のように皮がむける。
- 爪が変形したり、白く濁ったりしてきた。
- 皮膚の症状とともに、関節に痛みやこわばりを感じる。
診断の流れ
皮膚科では、主に視診(目で見て診断すること)で診断が行われますが、必要に応じて詳しい検査を行うこともあります。
1. 問診で確認すること
医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。ご自身の言葉で、ありのままを伝えてください。
- いつから、どのような症状がありますか?
- 症状は体のどこに出ていますか?
- かゆみや痛みはありますか?
- 症状が良くなったり悪くなったりしますか?
- ご家族に同じような症状の方はいらっしゃいますか?
- 最近、ストレスや生活の変化はありましたか?
- 現在、治療中の病気や、服用している薬はありますか?
- これまでにどのような治療を試しましたか?
2. 身体検査
次に、医師が発疹の状態を詳しく観察します。発疹の形、色、大きさ、鱗屑の状態などを丁寧に確認し、乾癬に特徴的な所見があるかどうかを判断します。頭皮や爪など、ご自身では見えにくい場所もしっかりと診察します。身体検査は、診断を確定するための重要なプロセスです。
3. 代表的な検査例
ほとんどの場合は問診と視診で診断がつきますが、他の皮膚の病気との区別が難しい場合には、以下のような検査を行うことがあります。
- 皮膚生検:局所麻酔をして、病変部のごく一部(米粒数個分程度)を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。乾癬に特徴的な組織の変化を確認することで、確定診断につながります。
- 血液検査:乾癬そのものを診断する項目はありませんが、他の病気との鑑別や、治療法の選択、副作用のチェックなどのために行われることがあります。
これらの検査は、より正確な診断と安全な治療のために行われます。
受診時の準備
受診の際には、以下のものを準備しておくとスムーズです。
- 保険証・お薬手帳:現在服用中の薬がわかるように、必ず持参しましょう。市販薬を使用した場合にも、その商品名がわかるようにしましょう。
- 症状のメモ:いつから、どこに、どんな症状が出たか、どういう時に悪化するかなどを簡単にメモしておくと、医師に的確に伝えられます。スマートフォンのカメラで症状を撮影しておくのも良い方法です。
- 聞きたいことのリスト:不安なこと、疑問に思うことを事前にリストアップしておくと、聞き忘れを防げます。
「こんなことを聞いてもいいのかしら」とためらう必要はありません。どんな些細なことでも、遠慮なく相談してください。
受診すべき診療科
乾癬が疑われる場合は、皮膚科を受診してください。乾癬の治療経験が豊富な専門医を見つけることが良い治療への近道です。かかりつけの内科医に相談して、地域の皮膚科を紹介してもらうのも良いでしょう。また、多くの自治体では、保健所や公式ウェブサイトで医療機関の情報を提供していますので、参考にしてみてください。
乾癬の治療法
治療方針の決定
乾癬の治療目標は、症状をコントロールし、生活の質(QOL)を高めることです。治療方針は、症状の重症度、発疹の範囲、患者さん自身のライフスタイルや希望などを総合的に考慮して、医師と患者さんが話し合いながら決定します。一方的に治療法を決められるわけではありませんので、ご自身の考えや不安な点は、遠慮なく医師に伝えましょう。
薬物療法
乾癬の治療の基本は薬物療法です。様々な選択肢があり、近年、治療法は大きく進歩しています。
- 外用療法(塗り薬):症状が比較的軽い場合や、範囲が狭い場合の中心的な治療法です。「ステロイド外用薬」は炎症を抑える効果が高い薬で、効果の強さにランクがあり、症状や部位によって使い分けます。「活性型ビタミンD3外用薬」は皮膚の細胞の異常な増殖を抑える薬で、ステロイド外用薬と組み合わせて使うことも多くあります。
- 光線療法(紫外線療法):塗り薬だけでは効果が不十分な場合や、発疹の範囲が広い場合に行います。医療機関で、治療用の紫外線を患部に照射する方法です。
- 内服療法(飲み薬):中等症から重症の患者さんや、関節症状がある場合などに用いられます。免疫の働きを調整する薬や、皮膚の細胞の増殖を抑える薬などがあります。
- 生物学的製剤(注射・点滴):内服療法など、既存の治療で十分な効果が得られない重症の患者さんに使われる比較的新しい治療法です。乾癬の症状を引き起こす原因物質(サイトカイン)の働きをピンポイントで抑えるため、高い効果が期待できます。
注意:どの薬物療法も、医師の診断と処方に基づいて行うことが不可欠です。自己判断で薬を中断したり、量を変更したりすることは絶対にやめましょう。
非薬物療法
薬物療法と並行して、あるいは補助的に行われる治療法です。
- 心理療法・カウンセリング:乾癬によるストレスや気分の落ち込みが強い場合に、専門家によるカウンセリングが有効なことがあります。
- 運動療法:適度な運動は、ストレス解消や肥満の改善につながり、乾癬の症状にも良い影響を与えることが期待されます。特に、関節症状がある場合は、専門家の指導のもとで行うことが重要です。
注意:これらの療法も、まずは主治医に相談し、ご自身の状態に適しているかを確認してから始めましょう。
生活習慣による管理
治療の効果を高め、症状を安定させるためには、日々の生活習慣を見直すことが非常に重要です。
- 食事:バランスの取れた食事を基本とし、暴飲暴食を避けましょう。脂肪分の多い食事や香辛料の強い食事は、症状を悪化させる可能性があるため、控えめにするのが賢明です。
- 体重管理:肥満は乾癬の悪化因子です。適度な運動とバランスの良い食事で、適正体重を維持するよう心がけましょう。
- 禁煙:喫煙は乾癬を悪化させることがわかっています。禁煙は、肌だけでなく全身の健康にとっても重要です。
- 節酒:アルコールの過剰摂取も、症状を悪化させる可能性があります。適量を守りましょう。
治療期間と予後
乾癬は長く付き合っていく病気です。残念ながら、現在の医療では「完治」させることは難しいとされています。しかし、治療法の進歩は目覚ましく、適切な治療を継続することで、症状がほとんどない、あるいはまったくない状態を長期間維持すること(寛解)は十分に可能です。焦らず、根気強く治療を続けることが、良い状態を保つための鍵となります。
予防法と日常生活での注意点
一次予防(発症予防)
乾癬の遺伝的素因を持っている場合でも、発症の引き金となる環境要因を避けることで、発症を予防できる可能性があります。
- バランスの取れた食事を心がける。
- 適度な運動を習慣にし、肥満を防ぐ。
- 十分な睡眠をとり、ストレスを上手に発散する。
- 禁煙し、飲酒は控えめにする。
- 風邪などの感染症予防(手洗い、うがい)を徹底する。
二次予防(早期発見・早期治療)
もし発症してしまった場合でも、早期に発見し、治療を開始することで、症状の悪化や拡大を防ぐことができます。
- 皮膚に気になる変化を見つけたら、早めに皮膚科を受診する。
- 自己判断で市販薬を使い続けず、専門医の診断を受ける。
- 症状日記をつけるなど、ご自身の症状の変化を把握しておく。
日常生活の工夫
乾癬と上手に付き合いながら、生活の質を保つためには、日々のちょっとした工夫が大切です。
- 衣類:肌への刺激が少ない、綿などの柔らかい素材を選びましょう。締め付けの強い下着や衣類は避けるのが無難です。鱗屑が気になる場合は、白や淡い色の服を選ぶと目立ちにくくなります。
- 入浴:熱いお湯や長湯は、肌の乾燥を招き、かゆみの原因になります。ぬるめのお湯にし、体を洗うときはナイロンタオルなどでゴシゴシこすらず、石鹸をよく泡立てて手で優しく洗いましょう。
- 保湿:入浴後は、肌が乾燥しないうちに、処方された保湿剤や低刺激の保湿クリームを全身に塗りましょう。特に空気が乾燥する冬場は、こまめな保湿が重要です。
- ストレスケア:趣味の時間を持つ、友人とおしゃべりをする、軽い運動をするなど、ご自身に合った方法でストレスを発散させましょう。
家族・周囲のサポート
ご家族や周囲の方々の理解とサポートは、患者さんにとって大きな力となります。
- 病気への理解:まず、乾癬が「うつらない病気」であることを正しく理解してもらいましょう。
- 精神的な支え:見た目を気にしたり、治療に不安を感じたりしている時に、話を聞いて共感してもらえるだけで、心は軽くなります。
- 治療への協力:食事のメニューを工夫したり、薬を塗るのを手伝ったり(特に背中など)、通院に付き添ったりといった具体的なサポートも助けになります。
よくある質問(FAQ)
Q1: 乾癬は人にうつりますか?
A: いいえ、絶対にうつりません。「かんせん」という名前から誤解されやすいのですが、ウイルスや細菌による感染症ではありません。ご自身の免疫システムの異常によって起こる病気です。ですから、ご家族や友人と温泉やプールに入ったり、タオルを共有したりしても、うつる心配はまったくありません。
Q2: 乾癬は治りますか?
A: 残念ながら、現在の医学では乾癬を「完治」させる根本的な治療法はまだ見つかっていません。しかし、悲観する必要はありません。治療法は近年大きく進歩しており、適切な治療を続けることで、症状がほとんどない、あるいは全くない状態を長期間保つことは十分に可能です。高血圧や糖尿病のように、上手にコントロールしながら付き合っていく病気だとお考えください。
Q3: 食事で気をつけることはありますか?
A: 特定の食べ物が直接の原因になるわけではありませんが、食生活は症状に影響を与えることがあります。一般的に、脂肪分の多い食事や、唐辛子などの香辛料を多く使った刺激の強い食事は、症状を悪化させる可能性があると言われています。一方で、野菜や青魚(サバ、イワシなど)を積極的に摂る、バランスの取れた食生活を心がけることが推奨されています。何よりも、暴飲暴食を避け、腹八分目を心がけることが大切です。
Q4: ストレスで悪化するというのは本当ですか?
A: はい、本当です。多くの方が、強いストレスを感じた後に症状が悪化したり、再発したりすることを経験しています。ストレスは自律神経やホルモンのバランスを乱し、免疫システムに影響を与えるためです。お一人で抱え込まず、信頼できるご友人やご家族に話を聞いてもらったり、趣味に没頭する時間を作ったりと、ご自身なりのストレス解消法を見つけることが、症状の安定につながります。
Q5: 治療にはどのくらいの費用がかかりますか?
A: 治療費は、治療法によって大きく異なります。外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)、生物学的製剤による治療は、いずれも健康保険が適用されます。ただし、生物学的製剤による治療を受ける場合は、医療費が高額になることがあります。その場合でも、「高額療養費制度」などを利用することで、自己負担額を一定の金額に抑えることができます。詳しい費用については、治療を開始する前に、主治医や病院の相談窓口、ご加入の健康保険組合などに確認することをおすすめします。
Q6: 民間療法やサプリメントは効果がありますか?
A: 科学的に効果が証明されている民間療法やサプリメントは、残念ながら現在のところありません。中には、高額なだけで効果がなかったり、かえって症状を悪化させたりするものも存在します。健康食品やサプリメントを試したい場合は、必ず事前に主治医に相談してください。医師の管理のもとで、標準的な治療をしっかりと続けることが、症状改善への一番の近道です。
Q7: 乾癬は遺伝しますか?
A: 乾癬になりやすい「体質」が遺伝することはありますが、病気そのものが必ず遺伝するわけではありません。欧米のデータでは、親が乾癬の場合、子どもが発症する確率は4~5%程度と言われています。ご家族に乾癬の方がいても、必ずしも発症するわけではありませんし、反対に、血縁者に誰もいなくても発症する方もたくさんいらっしゃいます。
Q8: かゆみがひどくて眠れません。どうしたら良いですか?
A: 強いかゆみは非常につらい症状ですよね。まずは、かゆみを抑えるための飲み薬(抗ヒスタミン薬など)を主治医に処方してもらうのが良いでしょう。また、日常生活では、肌を冷やす(冷たいタオルを当てるなど)、保湿をしっかり行う、爪を短く切って掻き壊しを防ぐ、といった工夫も有効です。アルコールや香辛料の強い食事はかゆみを増強させることがあるので、控えるようにしましょう。
Q9: どの病院を選べば良いですか?
A: まずは、お近くの皮膚科を受診してください。その上で、もし症状が重かったり、診断や治療が難しかったりする場合には、乾癬の治療を専門的に行っている医療機関を探すのも一つの方法です。かかりつけ医からの紹介状があると、よりスムーズに受診できます。
Q10: これから先、ずっとこの病気と付き合っていくのが不安です。
A: そのお気持ち、よくわかります。先の見えない不安を感じるのは当然のことです。でも、どうか一人で悩まないでください。乾癬の治療は、この10年で劇的に進歩しました。次々と新しい治療法が登場し、多くの患者さんが症状をコントロールしながら、発症前と変わらない生活を送っています。信頼できる主治医とよく話し合い、ご自身に合った治療法を見つけることが大切です。また、同じ病気を持つ仲間と交流できる患者会に参加してみるのも、心の支えになるかもしれません。希望を持って、一歩ずつ進んでいきましょう。
まとめ
つらい乾癬の症状は、原因を知り、適切に対処することで、和らげることができます。ご自身の症状やライフスタイルに合わせたケアを見つけることが大切です。
大切なポイント
- 癬はうつらない病気。正しい知識で誤解や偏見をなくしましょう。
- 治療の目標は「完治」ではなく、症状をコントロールし「快適な毎日」を送ること。
- 生活習慣の見直し(食事、運動、禁煙、ストレスケア)は、薬と同じくらい大切な治療の一部です。
- 不安なこと、分からないことは一人で抱えず、医師や家族、信頼できる人に相談しましょう。
これまでご自身のことは後回しで、家族のために、仕事のために、と懸命に走ってこられたのではないでしょうか。ふと立ち止まった今、ご自身の身体に現れたサインに、戸惑い、不安を感じているかもしれませんね。でも、それは「これからは、もっと自分を大切にしていいんだよ」という、ご自身の身体からのメッセージなのかもしれません。
乾癬という病気は、私たちに生活を見直すきっかけを与えてくれます。これを機に、食事を楽しみ、体を動かし、心から笑う時間を、もっともっと大切にしてみませんか。信頼できる主治医というパートナーと共に、焦らず、ご自身のペースで、新しい一歩を踏み出していきましょう。私たちには、この変化を乗り越え、より豊かに、しなやかに生きていく力が備わっているのですから。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。
監修者プロフィール:中野 貴光さん

よしクリニック(東京都練馬区) 院長。日本形成外科学会形成外科専門医。日本熱傷学会熱傷専門医。日本レーザー医学会レーザー専門医。日本手外科学会手外科専門医。日本形成外科学会小児形成外科分野指導医。医学博士。形成外科・皮膚科・美容皮膚科・美容外科の医療を提供する「よしクリニック」にて、4種類の専門医をもつマルチな形成外科医として、幅広い知識と高い技術をもって診察にあたっている。




