咳止めのツボとは?症状・原因・治療法・よくある質問【専門家監修】

咳止めのツボとは?症状・原因・治療法・よくある質問【専門家監修】

公開日:2025年09月10日

咳止めのツボとは?症状・原因・治療法・よくある質問【専門家監修】
aijiro / PIXTA

一度出るとなかなか止まらないつらい咳。体力を消耗するだけでなく、周りの目も気になり、心身ともに大きな負担となりますよね。この記事では、鍼灸師・種市 敢太さんの監修のもと、咳止めに効果が期待できるツボについて、わかりやすくお伝えいたします。

種市敢太
監修者
種市敢太
監修者 種市敢太 BODYREMAKER鍼灸治療院

この記事3行まとめ
✔ 咳止めに効果的なツボには天突(鎖骨間のくぼみ)、尺沢(肘のシワ上のくぼみ)、中府(鎖骨外側下)などがあり、気持ちいい程度の強さで刺激する
✔ 東洋医学では咳は「気」の流れの乱れと考え、ツボの刺激で気のバランスが整うことで症状緩和が期待される 
✔ ツボ押しはあくまで補完的なセルフケアであり、2週間以上続く咳、高熱、血痰などの場合は必ず呼吸器内科を受診すべき

咳止めのツボとは?

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東洋医学では、咳は体表の「気」の流れが乱れることで起こると考えられています。ツボ(経穴)は、その「気」の通り道である経絡(けいらく)上に点在する、体の不調が反映されるスイッチのようなものです。咳止めに効くとされるツボを適切に刺激することで、乱れた気の流れを整え、気管や肺の働きを助け、つらい咳を和らげる効果が期待できます。

ただし、ツボの効果は咳の原因や体質によって個人差があります。あくまでセルフケアの一環として捉え、症状が長引く場合は専門医に相談することが大切です。

よく見られる身体的症状

咳の症状は、原因によって痰が絡む湿った咳(湿性咳嗽;しっせいがいそう)と、痰の出ない乾いた咳(乾性咳嗽;かんせいがいそう)に分けられます。50代以上の女性の場合、加齢による水分量の低下や、閉経に伴うホルモンバランスの変化から、のどの乾燥やイガイガ感を覚えやすく、空咳が出やすい傾向があります。

  • 喉のイガイガ感、むずがゆさ
  • 痰が絡む感じ
  • 咳による胸の軽い痛み
  • 咳き込みによる体力の消耗、疲労感

心理的な変化

長引く咳は、身体的な苦痛だけでなく、精神的にも影響を及ぼすことがあります。

  • 「また咳が出るかも」という不安感
  • 公共の場での咳に対する周囲への気遣いによるストレス
  • 夜間の咳による睡眠不足と、それに伴う日中の集中力低下や気分の落ち込み

厚生労働省の調査(2022年)では、多くの人が補完代替医療(鍼灸など)を利用しており、その目的の一つに症状の緩和が挙げられています。これは、多くの方が西洋医学だけでなく、東洋医学的なアプローチにも関心を持っていることを示唆しています。

止まらない咳の原因とメカニズム

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洋医学では、咳は単に喉や気管支の問題だけでなく、邪気や五臓六腑のバランスの乱れが原因と考えられています。主な原因は以下の3つです。

1. 外邪(がいじゃ)の侵入

風邪(ふうじゃ)や寒邪(かんじゃ)といった、外部からの邪気がう後頚部より体内に侵入し、肺の働きを妨げることで咳が出るとされています。いわゆる風邪やインフルエンザなどがこれにあたります。

2. 臓腑(ぞうふ)の不調

体内の水分代謝や栄養の巡りに関わる「脾(ひ)」や「腎(じん)」の機能が低下すると、余分な水分が「痰(たん)」となって肺に溜まり、湿性咳嗽の原因になると考えられています。加齢による機能低下も影響します。

3. 情動(じょうどう)の乱れ

ストレスや悩み事といった精神的な要因が「心(しん)」や「肝(かん)」に影響を与え、上半身に熱を停滞させてしまい「気」の流れを滞らせ、肺の働きに影響して咳を引き起こすこともあります。閉経などの体の変化や環境の変化が多い50代以上の女性にとっては、特に注意したい原因の一つです。

発症メカニズム

上記のような原因により、呼吸を司る「肺」の機能が失調すると、気の流れが滞り、咳となって現れます。ツボを刺激することは、この「肺」の働きを正常に戻し、気の流れをスムーズにすることで、咳を鎮めることにつながります。

リスク要因

  • アレルギー体質(花粉、ハウスダストなど)
  • 空気の乾燥
  • 喫煙(受動喫煙を含む)
  • ストレスや過労
  • 加齢による免疫力や筋力の低下

診断方法と受診について

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いつ受診すべきか

ツボ押しはあくまでセルフケアです。以下のような症状が見られる場合は、自己判断で対処せず、必ず医療機関を受診してください。

  • 咳が2週間以上続く場合
  • 38度以上の高熱を伴う場合
  • 呼吸が苦しい、息切れがする場合
  • 胸に痛みを感じる場合
  • 緑色や錆び色の痰、血が混じった痰が出る場合
  • 咳で夜も眠れない日が続く場合

診断の流れ

医療機関では、咳の原因を特定するために、以下のような診察や検査が行われます。

1. 問診で確認すること

医師は、あなたの体の状態を詳しく知るために、さまざまな質問をします。

  • いつから咳が出始めたか
  • 咳の性質(乾いた咳か、湿った咳か)
  • 咳が出やすい時間帯(朝、夜、食後など)
  • 他の症状(熱、鼻水、喉の痛み、息苦しさなど)
  • アレルギーの有無、喫煙歴、既往歴

2. 身体検査

聴診器で胸の音を聞き、呼吸の状態を確認します。喉や鼻の状態を視診することもあります。

3. 代表的な検査例

必要に応じて、胸部X線(レントゲン)検査、呼吸機能検査、血液検査、アレルギー検査などを行い、肺炎や喘息、その他の病気が隠れていないかを調べます。

受診時の準備

  • 症状の経過をまとめたメモ(いつから、どんな咳が、どんな時に出るかなど)
  • お薬手帳(現在服用中の薬がわかるもの)
  • マスク着用

受診すべき診療科

まずは、かかりつけの内科や呼吸器内科を受診しましょう。鼻や喉の症状が強い場合は、耳鼻咽喉科も選択肢になります。どこに相談すればよいかわからない場合は、お住まいの自治体の保健所や相談窓口に問い合わせてみるのも良いでしょう。

止まらない咳の治療法

ぺかまろ / PIXTA

治療方針の決定

医療機関での治療は、原因となっている病気の治療が基本となります。ツボ押しは、これらの治療と並行して行う、症状緩和のための補完的なセルフケアとして位置づけられます。

西洋医学的な治療

  • 薬物療法:咳止め(鎮咳薬)、痰を出しやすくする薬(去痰薬)、気管支を広げる薬、抗生物質、抗アレルギー薬など、原因に応じて処方されます。自己判断で市販薬を使い続けず、必ず医師の診断を受けましょう。
  • 吸入療法:喘息などでは、ステロイド薬などを直接気道に届ける吸入療法が行われます。

東洋医学的なアプローチ(補完療法)

  • ツボ押し:ご自身で手軽に行えるセルフケアです。リラックスして、気持ち良いと感じる程度の強さで押すのがポイントです。
  • 鍼灸治療:専門家である鍼灸師が、症状や体質に合わせて経穴(ツボ)に鍼(はり)や灸(きゅう)で刺激を与え、体全体のバランスを整えます。

代表的な咳止めのツボ

  • 天突(てんとつ):左右の鎖骨の真ん中にあるくぼみ。激しい咳や喉の不快感に。※強く押すと気管支に刺激が入るので軽めに押すのがポイント
  • 尺沢(しゃくたく):肘を曲げたときにできるシワの上で、親指側にあるくぼみ。長引く咳や喉の痛みに。
  • 孔最(こうさい):尺沢から手首に向かって指4本分ほど下がったところ。風邪による急な咳に。
  • 中府(ちゅうふ):鎖骨の外側の指一本分下。呼吸を楽にし、痰を切りやすくすると言われます。

ツボ押しの注意点

  • 強く押しすぎない(「痛気持ちいい」程度が目安)
  • 食後すぐや飲酒後は避ける
  • 妊娠中の方や持病のある方は、事前に医師に相談する

生活習慣による管理

止まらない咳の症状を緩和するためには、日々の生活習慣を見直すことも重要です。

  • 十分な水分補給(喉を潤す)
  • 室内の加湿(湿度50~60%が目安)
  • バランスの取れた食事と十分な休養
  • マスクの着用(喉の保湿、感染予防)
  • 首周りの保温(ストールを利用して直接頚部に風や冷えが当たらないように)

予防法と日常生活での注意点

おじよん / PIXTA

一次予防(発症予防)

  • こまめな手洗い、うがい
  • 人混みを避ける
  • 禁煙
  • 適度な運動で免疫力を高める

二次予防(早期発見・早期治療)

  • 咳が長引く場合は早めに受診する
  • 風邪かな?と思ったら、悪化する前に体を休める

日常生活の工夫

  • のど飴やハーブティーで喉を潤す
  • 就寝時に上半身を少し高くして寝る
  • マフラーやスカーフで首元を温める

家族・周囲のサポート

咳が続くと、本人は精神的にもつらいものです。「大丈夫?」という優しい声かけや、室内を加湿したり、温かい飲み物を用意したりといった、さりげない気遣いが大きな支えになります。

よくある質問(FAQ)

makaron / PIXTA

1: 咳をすぐに止めたいのですが、即効性のあるツボはありますか?

A: はい、即効性が期待できるとしてよく知られているのが「天突(てんとつ)」です。左右の鎖骨の真ん中にあるくぼみにあり、指で軽く押さえるように刺激すると、咳の発作を和らげる効果が期待できます。ただし、効果には個人差があり、あくまで一時的な対処法とお考えください。

Q2: 夜、咳が止まらなくて眠れません。どうすればいいですか?

A: 夜間の咳は本当につらいものです。まずは、枕を高くして上半身を起こし気味にすると、気道が広がり呼吸が楽になります。部屋が乾燥している場合は、加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして湿度を保ちましょう。首元を温めるのも効果的です。「尺沢(しゃくたく)」という肘のツボを優しくマッサージするのもおすすめです。

Q3: 痰が絡む咳に効くツボはありますか?

A: はい、痰が絡む場合は、体内の水分代謝を整えるツボが効果的とされています。すねの外側にある「豊隆(ほうりゅう)」や、膝の内側にある「陰陵泉(いんりょうせん)」などが代表的です。咳そのものを止めるツボと合わせて試してみてください。

Q4: ツボはどのくらいの強さで、どのくらいの時間押せばいいですか?

A: 「痛いけれど気持ちいい」と感じるくらいの強さが最適です。息を吐きながらゆっくり5秒ほど押し、息を吸いながらゆっくり離す、というのを数回繰り返してみてください。爪を立てず、指の腹で優しく押すのがコツです。

Q5: 子どもにもツボ押しをして大丈夫ですか?

A: はい、お子さんにもツボ押しは可能です。ただし、大人のように強く押すのではなく、優しくなでたり、さすったりする程度にしてください。特に皮膚がデリケートなので、力加減には十分注意してあげましょう。

Q6: ツボ押しをしても咳が改善しません。

A: ツボ押しは万能ではありません。2週間以上咳が続く、熱や息苦しさなど他の症状がある、といった場合は、喘息や肺炎など他の病気が隠れている可能性も考えられます。セルフケアで改善しない場合は、自己判断を続けず、必ず呼吸器内科などの医療機関を受診してください。

Q7: アレルギー性の咳にもツボは効きますか?

A: アレルギー反応を直接抑えることは難しいですが、ツボ刺激によって自律神経のバランスが整い、気道の過敏な状態が和らぐことで、咳の症状が楽になる可能性はあります。アレルギー治療と並行して、体質改善の一環として試してみる価値はあるでしょう。

Q8: 咳止めに良い食べ物や飲み物はありますか?

A: 喉を潤し、体を温めるものがおすすめです。はちみつ大根や、生姜湯、カリンのど飴などが伝統的で、よく知られています。ただし、はちみつは1歳未満の乳児には与えないでください。水分補給をこまめに行うことが何よりも大切です。

Q9: 鍼灸院で咳の治療を受けたいのですが、どうやって選べばいいですか?

A: まずは、国家資格である「はり師」「きゅう師」の免許を持つ施術者がいる治療院を選びましょう。ウェブサイトで呼吸器系の症状に対する治療経験が豊富かを確認したり、実際に電話で問い合わせて、症状について親身に相談に乗ってくれるかを確認したりするのも良い方法です。

Q10: 咳が続くと、何か重い病気ではないかと不安になります。

A: 長引く咳はご不安ですよね。咳の原因はさまざまですが、その多くは風邪や気管支炎など、適切な治療で改善するものです。しかし、中には注意が必要な病気のサインである可能性も否定できません。いたずらに不安を募らせるよりも、専門医に相談して原因をはっきりさせることが、安心への一番の近道です。どうぞお一人で悩まず、医療機関にご相談ください。

まとめ

Pangaea / PIXTA

つらい咳を和らげる「ツボ」についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。ツボ押しは、薬に頼りたくない時や、治療の補助として手軽に試せる心強いセルフケアです。

大切なポイント

  • 咳止めには「天突」「尺沢」などのツボが効果的。
  • ツボ押しは「痛気持ちいい」強さで、リラックスして行う。
  • 咳が長引く、他の症状がある場合は、必ず医療機関を受診する。
  • 日常的な加湿や水分補給、体を温める工夫も大切。

年齢を重ねると、若い頃のようにすぐには体調が回復しないこともあります。咳が長引くと、心も体も疲れてしまいますよね。そんな時は、今回ご紹介したツボ押しを試しながら、ご自身の体をいたわる時間を作ってみてください。そして、決して一人で抱え込まず、つらい時は専門家である医師を頼ってください。この記事が、みなさんの健やかな毎日を取り戻す一助となれば幸いです。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

 かかりつけ医について詳しく知る(厚生労働省)

監修者プロフィール:種市 敢太さん

BODYREMAKER鍼灸治療院 院長。はり師、きゅう師、メンタルケアカウンセラー®︎。全日本鍼灸学会、伝統医療看護連携学会、顔面神経学会所属、日本整形内科学研究会所属。東京都台東区浅草橋に拠点を構えるBODYREMAKER鍼灸治療院では、伝統的な鍼灸技術と最先端の医療テクノロジーを丁寧に融合した施術を提供している。

HALMEK up編集部
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