- ハルメク365トップ
- 美と健康
- 健康
- だる重疲れの原因「脳の疲労」を回復させる睡眠術
朝起きたときに倦怠感がある人は、脳の疲労が取れていない証拠。 自律神経をつかさどる脳を休めないと、熟睡できずしっかりと脳疲労を取れません。脳疲労を取ることができる、快眠をもたらす睡眠のポイント10個を解説します。
監修者プロフィール:梶本修身さん
かじもと・おさみ 東京疲労・睡眠クリニック院長。医師・医学博士。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。1962(昭和37)年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。2003年から産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。主な著書に『すべての疲労は脳が原因Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(集英社新書)など。
普段感じている疲れの原因は、脳疲労
「疲れの正体は、脳にあります。具体的には、脳の視床下部や前部帯状回にある自律神経の中枢の疲れであり、体が疲れているというのは錯覚であることが多いのです」と話すのは、疲労医学の第一人者で東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身(かじもとおさみ)さん。
梶本さんが実験で自転車を4時間こぎ続けた人の状態を調べたところ、筋肉や内臓は開始前と数値にほぼ変化はなかった一方、脳、特に自律神経の中枢は明らかな変化が見られました。
体温を上げ過ぎないように汗をかき、酸素を多く体に取り込むために心拍数を上げるといった生命活動機能をコントロールするのはすべて自律神経。運動を続けると自律神経に負荷がかかり、疲れてしまうのです。疲れた自律神経は「命を守らねば」と防衛本能を働かせます。すると、眉間付近にある眼窩前頭野(がんかぜんとうや)へ司令を送り、これ以上運動させないよう「体が疲れた」と勘違いをさせます。これが普段感じている疲れの実態です。
50代女性のパワー値は、野生動物なら倒れてしまうレベル
さらに、年齢ととともに自律神経自体のパワー値が減り、耐えうる負荷の大きさも小さくなっていきます(グラフ参照)。年齢を重ねるにつれて疲れやすくなる原因がこのパワー値の低下です。パワー値は、50代になると20代の頃の3分の1に。梶本さんによると「野生動物の世界では500を切ると生きていけない」のに、50代女性の平均は約500。野生動物なら倒れてしまう値にまで低下しているわけですから、毎日疲れるのは当然のことなのです。
「当然だから仕方ない」と何も対策を講じないで放置しておくと、疲れがたまってつらいだけではなく「脳の細胞が酸化してサビがたまり、脳の老化を招く可能性もあります」(梶本さん)。
脳の疲労回復のために「脳を休める睡眠術」が重要な理由
では、どんな対策ができるのでしょうか。
自律神経には緊張・興奮状態で働く交感神経と、リラックスしたときに働く副交感神経があります。自律神経の中枢は、交感神経が優位になったときにフル稼働し、疲労につながります。
「リラックスして副交感神経が優位になる時間を増やすことが、疲れ対策には効果的です」(梶本さん)。
「最近なんだか疲れやすい」という人は、実は脳が疲れているのかもしれません。疲れの原因は自律神経の中枢がある「脳」が鍵となります。体に指令を出し続ける脳は眠っているときにしか休むことができないので、まずは、深くぐっすり眠ることが重要です。
自分がいかに疲れているかは、朝目覚めたときの倦怠感が目安。倦怠感があるようなら、それは脳が疲れている証拠です。疲労回復のために最も重要なのが、睡眠。脳の疲れは寝ることでしか回復できません。しかし、「年を重ねるにつれ眠りが浅くなってきた」という人はどうしたらよいのでしょう?
「加齢の影響による睡眠の質の低下もありますが、よかれと思って続けてきた眠り方が実は逆効果だった、ということもあるかもしれません。これから伝える快眠習慣をぜひ実践してみてください。朝起きたときのスッキリ感が違うはずです」
疲労を軽くする方法は、日常生活の中にたくさんあります。大事なのは「合理的に手抜きをすること」と梶本さん。特にアラフィフ世代の女性には「何もしない時間をぜひ持ってほしい」と言います。「仕事・家事は際限がないため、ついずっと働き続けてしまう。ボーッとすることは『怠惰』ではなく、脳の老化予防のためにも必要です」
本記事では毎日の生活の中で今すぐ始められる、「脳を休める快適睡眠テクニック」をご紹介。生活に取り入れやすいものから、さっそく実践してみましょう。
就寝前にトライ!快眠をいざなう6つの習慣
1 ベッドや布団は一人で眠れる環境にする
隣で寝ているパートナーの体温が移ったり、動きが伝わったり、いびきがうるさかったりすることがストレスとなり、睡眠の妨げに。疲れ対策のためには、ダブルベッドで一緒に寝るより、一人で寝られる環境を整えることをおすすめします。
2 就寝前に白湯を1杯飲む
トイレに起きたくなくて寝る前の水分摂取を控えるのはNG。睡眠中、脱水状態を起こすと自律神経に負荷とストレスがかかり、眠りを浅くする要因に。白湯で胃腸を温めると副交感神経が優位になり、眠りにつきやすくなります。
3 ベッドタイムに寝酒はしない
アルコールには覚醒作用があり、眠りにつけたとしても途中で目覚めやすいので、脳が休まるほど深くは眠れません。また、アルコールによって気道周辺の筋肉が弛緩するため、自律神経に負荷とストレスをかける大きないびきの原因になります。
4 目覚ましは優しい音にセット
目覚まし時計やスマートフォンのアラーム機能の音は、鳥の声といった優しい音に設定を。大きな音でびっくりして起きると、睡眠中に活動レベルが下がっていた交感神経が優位になり、血圧も心拍も急上昇。自律神経に負荷がかかります。
5 ベッドで携帯電話を操作しない
「布団に入ってからもスマートフォンやタブレットを何となく触ってしまう」という人も少なくないのでは? 液晶画面の強い光は交感神経を優位にするため、布団に入る30分前には「携帯電話断ち」する習慣をつけましょう。
6 寒い季節の電気毛布は就寝直前に電源オフ
寒い季節に冷たい布団に入るのは自律神経に負荷がかかるため、就寝前に電気毛布などで布団の中を温めておくのは安眠のために有効。でも、一晩中電源を入れていると寝汗をかき、脱水症状を引き起こすことも。寝る前の電源オフをお忘れなく。
睡眠時間や寝姿勢は?睡眠中の快眠ポイント4つ
7 睡眠時間は最低でも6時間は必要
睡眠中、浅い「レム睡眠」と深い「ノンレム睡眠」が90~120分単位で交互に繰り返されていて、脳の疲れを取るにはノンレム睡眠が3~4回必要。疲れを翌日に持ち越したくないなら、最低6時間は寝るよう心がけましょう。
8 眠る時の姿勢はあおむけではなく横向きで
「あおむけ寝」は舌が下がって気道をふさいでいびきをかきやすく、眠りが浅くなりがちです。舌が気道をふさがない「横向き寝」がいびきには効果的。特に右側を下にして寝ると、消化吸収がスムーズになってより熟睡できます。
9エアコンやタイマーを活用
極度な温度差は血圧を上げるなど、自律神経に負荷をかけるので適宜エアコンを活用しましょう。夏場は部屋を冷やしすぎず、快適に過ごせる温度を保つような温度設定でエアコンをつけておきましょう。
冬場だと、温かな布団から起きて冷えた部屋に出ると自律神経にダメージが。暖房のタイマーをセットし、起床時間の30分前から部屋を暖めておくのがベストです。
10 手は布団の外へ出して寝る
手が温まると交感神経が優位になって寝つきが悪くなります。手は布団から少し出しておくくらいが、寝つくにはちょうどいいです。一方で、足を温めると副交感神経が優位になるため、足の冷えにはご注意を。
取材・文=小林美香(編集部)
※この記事は、「ハルメク」2018年2月号を再編集しています。また掲載情報は取材時点のものであり、最新の情報は施設等へお問い合わせください。
■もっと知りたい■
- 「睡眠負債」とは?寝だめではなく睡眠の質改善で解決
- 【医師監修】疲労回復の方法や対策を解説!
- 大人にも効果的な昼寝の方法とは?時間と寝方が大事
- 取れない疲れに効く!鶏胸肉疲労解消レシピ
- 夜におすすめ!筋肉をほぐす快眠「リンパストレッチ」
- 睡眠の質を上げるなら「横向き寝」&首は「S字」に!
- 質の良い睡眠を取る方法は?心と体をほぐす入眠前習慣
- 睡眠改善のプロ伝授!快眠できる枕選びとおすすめの枕
※雑誌「ハルメク」は書店ではお買い求めいただけません。詳しくは雑誌ハルメクのサイトをご確認ください。
雑誌「ハルメク」
女性誌売り上げNo.1の生活実用情報誌。前向きに明るく生きるために、本当に価値ある情報をお届けします。健康、料理、おしゃれ、お金、著名人のインタビューなど幅広い情報が満載。人気連載の「きくち体操」「きものリフォーム」も。年間定期購読誌で、自宅に直接配送します。雑誌ハルメクサイトはこちら
-
子に遺すべき資産は?
「現金」か「不動産」か…どっちが得?メリット・デメリットは?相続や親族間のトラブルに悩まされないためにしておくべき準備とは -
突然の我慢できない尿意
実は多くのハルメク世代が悩んでいる「尿トラブル」…中には上手に対策をしている人も!気軽にできる対策って? -
個人情報管理できてる?
銀行口座・保険・クレジットカードなど、「デジタルの情報」をきちんと管理できていますか?煩雑にしていると思わぬ落とし穴が… -
お金の管理が簡単に!
三井住友銀行アプリに「シンプルモード」が新登場!スマホ操作が苦手な人でも簡単に使える便利機能が満載です! -
認知症セルフチェック
「もの忘れが増えた」「名前が思い出せない」という症状に心当たりがある方は要注意!それ、「認知機能のレベル低下」が原因かもしれません… -
健気な姿がかわいい!
「思わず笑顔になる」と巷で話題の「永遠の2歳児・ニコボ」!ハルメク世代の2人に、ニコボとの生活にハマる理由をお聞きしました! -
生前親に●●聞き忘れると
老親の契約や登録しているサービス、これらを子が把握していないと将来ムダな出費や面倒なトラブルに発展する可能性が!特に見落としがちなのは… -
50代~お金の増やし方
将来を見据えて、50代から「まとまった資金の調達」が重要になります。どんな選択肢があるか、ご存知ですか? -
60日で英語が話せる!
英語をマスターするのに「完璧」はいらない!初心者でも60日で英語が話せるようになる、驚きの3つのコツとは? -
今なら無料でお試し!
将来、自分の認知機能が低下するリスクがあるか、簡単に予測できるサービスが誕生。今なら無料で先行利用できます! -
おひとり様の備えはOK?
この先「おひとり様」になったら意外な落とし穴がいっぱい…。そんな不安に備える、おひとり様専用お助けサービスが誕生! -
50代から1日1分脳トレ
認知機能を衰えさせないためには、早い時期から「脳を活性化」させることが大切。脳トレ効果がグッとアップするコツって?