難聴、耳鳴りを防いで一生「耳の聞こえ」を守る!#2

気を付けて!耳の不調の原因と隠れた病気

気を付けて!耳の不調の原因と隠れた病気

公開日:2024年01月17日

気を付けて!耳の不調の原因と隠れた病気

耳の不調は“誰もが直面する”トラブルです。特に難聴は50代を境に急増し、80代の約9割が抱えるなど、老化にともなう発生頻度が最も高い症状です。今回はその原因と、耳の不調が引き起こすトラブルや、背景にある病気についても紹介します。

教えてくれた人:杉浦彩子(すぎうら・さいこ)さん

教えてくれた人:杉浦彩子(すぎうら・さいこ)さん

1973(昭和48)年、愛知県生まれ。医学博士。98年、名古屋大学医学部卒業。刈谷きこえのクリニック院長。国立長寿医療研究センター非常勤医師。主著に『誰にも訪れる耳の不調・難聴を乗り越える本』(さくら舎刊)がある。

耳の不調(難聴)はなぜ起こる?

「老化によるトラブルの中でも特に多いのが、加齢性難聴です」と話すのは、高齢者に起こる聴覚障害の専門家であり、医学博士の杉浦彩子さん。

「難聴は老化により内耳にある有毛細胞などが劣化することで起こります。症状が徐々に進み、無自覚のまま聞こえが悪化するケースが後を絶ちません」(杉浦さん)。この“自覚しにくさ”の原因は、人間の脳が「優秀すぎるせい」と解説します。

「加齢性難聴では、高い音(日本語ではカ・サ・タ・ハ行の発音)から聞こえにくくなるため、例えば『加藤さん』と『佐藤さん』の聞き分けが難しくなります。

しかし音として聞こえていない言葉も、文脈や過去の慣例に照らして脳が自動的に“補完”してしまい、会話の不自由に気付けない方が多いのです」

実際、2015年の日本補聴器工業会の発表によれば、国内の推定難聴者(当時)1994万人のうち、聴力の低下を自覚しているのは約半数しかいないという結果が出ています。

耳の構造は3つに分かれ、連動して聴力を保っています

耳の不調(難聴)はなぜ起こる?

音は、空気の振動として外耳道に入り、中耳に位置する鼓膜や耳小骨を伝わって、内耳の有毛細胞により電気信号に変換された後、聴神経を経て脳に「音」として認識されます。それぞれが緻密に連携しているため、一部の不具合が耳の不調を引き起こします。

加齢だけじゃない!耳の不調(耳鳴り)の原因

難聴とともに耳の不調で多い症状が、 「耳鳴り」。実際には音が出ていないのに、「キーン」という高音など異音を感じる症状です。原因は解明されていませんが、耳鳴りがある方の8割から9割は“難聴持ち”なのだそうです。

「難聴によって脳に届く音の刺激が減ると、側頭葉にある聴覚野が“何とか音をキャッチしよう”と過剰に働き、耳鳴りにつながるといわれています。特に静かな環境で気になりやすいため、睡眠障害を引き起こし、それがさらに耳鳴りを悪化させる悪循環に陥ることも少なくありません。

耳の不調の原因は、加齢だけではありません。大きな音によるダメージ、乱れた生活習慣による血流障害、さらにストレスや自律神経の乱れなども関わっています。それらの危険は、毎日のちょっとした工夫や意識で遠ざけることもできます。耳の聞こえを守る習慣を、ぜひ取り入れてみてください」(杉浦さん)

耳の不調が原因でこんなトラブルが起こります

耳の不調が原因でこんなトラブルが起こります

耳の不調は、うつ病などの心の不調や認知症リスクの上昇を招き、健康と生活の質を大きく損ないます。耳の不調を感じたら、まずは早めに耳鼻咽喉科を受診し、必要に応じて補聴器などで聞こえを補うこと。さらに、「不調を感じる前からの対策が重要」と杉浦さんは指摘します。

人間関係の悪化

耳に不調があると、会話中の聞き返しや聞き間違いなどが増え、互いにイライラを抱えがちになり、人間関係の悪化を招くことも。

認知症リスクの上昇

難聴の場合、音を正常に聞き取れないために脳への刺激が減り、記憶力や思考力の低下を招き、認知症リスクにつながるとされます。

うつ病などの心の不調

耳の不調で「聞こえ」に不安が生じると、人と話すのが億劫になり、家に引きこもりがちに。結果、うつ病など心の不調も招きます。

このように、耳の不調を放置すると、単に「聞こえが悪くなる」ことで生活が不便になるだけではなく、認知症リスクの増大や、コミュニケーションが取りづらくなることでの“精神面の悪影響”も問題になります。

耳の不調の背景にあるこんな病気にも注意!

メニエール病

内耳のむくみが原因の病気で、難聴や耳鳴り、めまいなどを引き起こします。中高年の女性に特に多く見られ、ストレスや疲労が引き金になるとも言われています。

突発性難聴

血流障害で有毛細胞が弱ることなどが原因で、突然片耳の聞こえが悪くなる病気。60代が発症のピークです。有毛細胞が死滅すると聴力が戻らないため、極力早く治療を始めることが重要。

外耳道のトラブル

高齢で耳あかの排出機能が弱っている方などは、外耳道に耳あかが詰まる耳垢栓塞(じこうせんそく)を起こしがち。一方で、誤った耳掃除は外耳道炎につながるので、正しくケアしましょう。

次回は、この先耳の不調を遠ざけるため、今日から意識したい「耳を休める」習慣について紹介します。

取材・文=新井理紗(編集部)、イラストレーション=ねもときょうこ

※この記事は、雑誌「ハルメク」2023年5月号を再編集しています
 


動画でチェック!「聞こえ」を守る 新習慣講座

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ハルメク世代の耳トラブルに詳しい医師の杉浦彩子(すぎうら・さいこ)さんが、最新の研究でわかってきた耳の老化を防ぐ生活習慣や正しいケア方法を動画で詳しく解説します。

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