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女性に多い音声障害「心因性失声症」の可能性も?
声が出ないのはストレス?原因・病気・対処法を解説
池上おひさまクリニック
大和行男
公開日:2023.07.31
更新日:2023.09.12
声がかすれる、声が出にくい気がする……。もしかしたら、声が出なくなる「音声障害」かもしれません。原因はさまざまですが、ストレスもその一つ。更年期の女性がかかりやすいと言われています。症状や声が出なくなる仕組み、対処法について解説します。
監修者プロフィール:大和行男さん
医療法人社団先陣会理事長、こころと美容のクリニック東京院長。資格は子どものこころ専門医、精神科専門医。お子さんから大人の方まで誰でもこころの診療を行っております。
https://www.kokoro-clinic.tokyo/
〒103-0027 東京都中央区日本橋3-3-3 八重洲山川ビル5階
03-6910-3975
声が出ない!「音声障害」の症状とは
声の不調は、医学的には「音声障害」や「嗄声(させい)」と呼ばれます。「音声障害診療ガイドライン2018年版」(日本喉頭科学会)によれば、以下が音声障害の定義です。
音声障害あるいは嗄声の定義として、音質、声の高さ、声の大きさ、発声努力などの変化により、コミュニケーションを損なう、あるいは生活の質が低下すること
出典:「音声障害診療ガイドライン2018年版」(日本喉頭科学会)
声の不調は、以下のようにさまざまな症状が見られます。
- 声が出ない(失声)
- 声が出しにくい
- 声がかすれる
- 声の出し方がわからない
- 声を出すのがしんどい、がんばって声を出さなくてはならない
- 歌うときに高い声が出ない
- 若いときのように声が出ない など
症状がどのように現れるかは人によって異なりますが、定義によれば、このような声の悩みはどれも医学的には音声障害となります。
声が出なくなる仕組み
声が出なくなる仕組みは、「器質的疾患」か「機能性発声障害」かによって異なります。ここからは、それぞれの声が出なくなる仕組みについて見ていきましょう。
器質的疾患で声が出なくなる仕組み
器質的疾患とは、喉や声帯の炎症やポリープ、腫瘍など体そのものに異常があることで症状が起こる状態のことです。
喉仏の中には、2枚の「声帯」という器官があります。声帯は息を吸うときに開き、息を吐き声を出すときに閉じる仕組みです。吐いた息が左右の声帯の間を通過する際、声帯が振動することで声が出ます。
声帯やその周囲に異常が起こると、「声が出ない」「声がかすれる」「声が詰まる」などの症状が起こります。
機能性発声障害で声が出なくなる仕組み
機能性発声障害とは、声帯など発声器官に炎症やポリープ、腫瘍など器質的な障害がないものの、声の障害が起こる状態のことです。
機能性発声障害の代表的なものとしては、心因性失声症があります。
ストレスで声が出ない症状は圧倒的に女性に多い
ストレスで声が出なくなる病気を「心因性失声症」といいます。心因性失声症は10代〜50代くらいまでと幅広い年代で発症しますが、圧倒的に女性に多く見られる病気です。
中でも、思春期や更年期など、ホルモンバランスの影響を受けて心や体の状態が不安定になる時期に発症しやすくなります。ストレスが多い状態で、突然声が出なくなった場合は「心因性失声症」が考えられるかもしれません。
声が出ない・声を出しにくい・声がかすれる原因
ここからは、声が出ない・声を出しにくい・声がかすれるなどの原因について解説します。
ストレス
心因性失声症が起こる原因のほとんどは、精神的なことにあるといわれています。
ストレスの多い生活が続いていたり、なんらかの出来事で精神的なショック(心的外傷)を受けたりすると、「声が出なくなる」「声を出しにくくなる」などの症状が見られることも。
職場や家族、親族との人間関係の悩みや、介護、死別といったライフイベントは大きなストレスとなることがあります。
ストレスによる心因性失声症の場合、「昨日まで普通に話せていたのに、突然声が出なくなった」「声の出し方もわからない」など突然起こることが多く、ストレスを抱え込みやすい人は注意が必要です。
なお、ストレスを自分では自覚していない場合でも、体のストレス反応として声が出なくなることもあります。
声帯の酷使
カラオケなどで歌い過ぎる、スポーツの応援や仕事などで大声を出し過ぎるなど、声帯を酷使すると炎症が起き、声枯れが起こります。
加齢
声帯は、加齢に伴って萎縮していきます。そのため、2枚の声帯の間に隙間ができ、息が漏れて声がかすれることがあります。
飲酒や喫煙
過剰な飲酒や喫煙は、喉の炎症の原因になります。
喫煙を繰り返すと声帯がむくんで腫れやすくなり、声枯れにつながることも。また、タバコの煙にはタールが含まれますが、これも声帯に炎症を引き起こす原因です。
病気によるもの
風邪やインフルエンザ、声帯ポリープ、喉頭がん、精神的な疾患などが原因で声が出なくなる、かすれるなどの症状が見られることがあります。
声が出ない・出しにくい・かすれるときに考えられる病気
ここからは、声が出ない・出しにくい・かすれるときに考えられる主な病気についてご紹介します。
心因性失声症
心因性失声症とは、ストレスが原因となって声が出なくなってしまう病気です。
食べ物を飲み込むときや咳払いをするときなど、反射では声帯が振動・開閉するのに、声を出そうとすると、うまく声が出なかったり、ささやき声のようになったりします。
心因性失声症は、精神医学的には「転換性障害(身体表現性障害)」の症状の一つと考えられています。
転換性障害とは、身体には問題はないものの、ストレスや葛藤など心理的な要因がきっかけとなって、さまざまな身体症状が現れる症状のことです。
「声が出なくなる(失声)」他にも「急に歩けなくなる(失歩)」「立てなくなる(失立)」「手が挙がらなくなる」といった症状が見られることがあります。
心因性失声症の治療は早い段階で始めるほど予後が良いといわれているため、心因性失声症が疑われる場合は、早めに病院を受診して適切な治療を受けることが大切です。
社交不安症
「静かな場所で電話をしようとしたら急にしゃべれなくなった」「人前で話すときに声が詰まって出ない」など、全く声が出ないわけではなく、特定の場面でうまく声が出せない場合は、「社交不安症」の可能性が考えられます。
社交不安症とは、人に見られている場所や多くの注目が集まる状況で何かすることを過剰に恐れる病気です。「失敗するのではないか」「恥をかくのではないか」と強い不安や心配、恐怖、緊張を感じます。
社交不安症が続くと、人と関わることが苦痛になってしまったり、自分に自信を持てなくなったりすることも。性格の問題と混同されることもありますが、治療可能な病気であるため病院を受診して適切な治療を受けることが大切です。
痙攣性発声障害
痙攣性発声障害も、ストレスが原因の一つとして考えられる病気です。声帯が自分の意思に反して閉じてしまうことで、声が詰まる、声が途切れる、声がかすれるなどの症状が起こります。重症になると、うまく会話ができなくなってしまうことも。
痙攣性発声障害は、ボトックス注射(ボツリヌストキシン注射)で声帯筋の緊張を和らげる方法や、手術によって治療します。
喉頭炎・急性喉頭炎
声の出し過ぎ、アレルギー反応、喫煙や飲酒などの影響で喉頭の粘膜に炎症が起こることを「喉頭炎」といいます。ウイルスや細菌感染によって炎症が起こった場合は「急性喉頭炎(風邪など)」と呼ばれます。
喉頭炎・急性喉頭炎では声帯周辺が炎症を起こして腫れるため、声がかすれたり出なくなったりすることがあります。細菌感染の場合は抗生剤の内服もしくは点滴投与が必須となります。
声帯ポリープ・声帯結節・ポリープ様声帯
喉の使い過ぎや喫煙者に多く見られるのが、声帯ポリープ・声帯結節・ポリープ様声帯です。
喉の衛生状態が悪くなることで出来物ができると、声帯がうまく振動しなくなる、隙間ができて声が出なくなる、かすれるなどの症状が起こります。うまく喉を休めたり、なるべく口腔内を清潔に保つようにしましょう。
声帯麻痺(反回神経麻痺)
声帯麻痺(反回神経麻痺)とは、声帯を動かす筋肉をコントロールする神経である「反回神経」が麻痺した状態のことです。片方だけが動かなくなることもあれば、両方が動かなくなることもあります。
原因不明の場合もありますが、感染や外傷、悪性腫瘍などの病気が声帯を動かす神経を麻痺させることで起こることもあります。
喉頭がん・下咽頭がん
喉頭がんや下咽頭がんも、声がかすれる症状(嗄声)が現れることがあります。がんができる場所によっても現れる症状が異なりますが、飲み込むときの違和感、喉の痛みなども見られます。
声が出ない・出しにくい・かすれるときの対処法
ここからは、声が出ない・出しにくい・かすれるときの対処法をご紹介します。
ストレスに対処する
声が出ない原因がストレスの場合、声帯や喉に異常は起きていません。そのため、以下のような方法でストレスを減らしたり、ストレス発散したり、対処するといいでしょう。
- 質の高い睡眠を取る
- 規則正しい生活を心がける
- 3食しっかり栄養バランスの整った食事を食べる
- ストレス解消法やリラックス方法を見つける
- 適度な運動を習慣化する
- 瞑想を行う など
喉に刺激を与えない
急性喉頭炎や声帯ポリープの場合、声を出すのを控える、飲酒や喫煙を控える、香辛料の摂取を控えるなど、喉に刺激を与えないことで自然治癒するケースもあります。
風邪の場合は、解熱鎮痛剤や炎症を抑える薬も使って治療します。
ボイストレーニング
加齢が主な原因となって起こる声帯萎縮は、声帯を正しく使えるようにするボイストレーニングを行うことで、症状の改善が期待できます。
病院で治療を受ける
病院での音声障害の治療としては、以下のような方法があります。音声障害の種類によって適した治療は異なるため、信頼できる医師に相談して適切な治療を受けることが大切です。
- 薬物療法
- 手術
- 音声指導(音声訓練)
- 超音波ネブライザー
- 声の衛生管理・生活指導
声が出ないときは何科を受診すればいい?
突然声が出なくなった場合、まずは耳鼻咽喉科を受診して、体に異常がないかを確かめましょう。体に問題がなければ、心療内科や精神科を受診するといいでしょう。
声が出ない症状を放置すると、悪化したり、日常生活に支障が出たりする可能性もあるため、「声が出ない症状が繰り返し起こる」「声が出ない状態が長く続く」という場合は、早めに病院を受診することが大切です。
声が出ない原因に合った治療を受けることが大切
声が出なくなる原因は、声帯や喉などに問題がある場合だけでなく、ストレスの影響によって症状が起こることもあります。
女性に圧倒的に多く見られるという心因性失声症は、急にしゃべれなくなる、突然声が出なくなるという症状も見られる病気です。心因性失声症の治療は早ければ早いほど良いといわれているため、早めに病院を受診しましょう。
※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。
※この記事は2023年7月の記事を再編集して掲載しています。
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