あごニキビの原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】

あごニキビの原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】

公開日:2025年10月08日

あごニキビの原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】
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あごニキビでお悩みの50代・60代の女性のみなさんへ。この記事では、美容皮膚科医の久野賀子先生の監修のもと、あごニキビの原因や治療法について分かりやすくお伝えいたします。

久野賀子
監修者
久野賀子
監修者 久野賀子 PRIDE CLINIC

この記事3行まとめ

✓ あごニキビはホルモンバランスの乱れや乾燥、ストレスが主な原因です。
✓ 50代・60代は加齢や更年期の影響で、治りにくく繰り返しやすい傾向があります。
✓ 適切な治療とスキンケア、生活習慣の見直しで改善・予防が可能です。

あごニキビの正体とは?

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あごニキビは、医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚の病気の一種で、特にフェイスラインのUゾーン、あご周辺にできるものを指します。思春期にできるニキビとは異なり、20代以降にできる「大人ニキビ」の代表格です。

50代・60代の女性にとって、あごニキビは単なる肌トラブルではありません。この年代は、更年期に伴うホルモンバランスの大きな変化や、長年の生活習慣、肌の乾燥(バリア機能の低下)など、複数の要因が複雑に絡み合って発症しやすく、一度できると治りにくく、同じ場所に繰り返しできてしまうのが特徴です。しこりのように硬くなったり、炎症を起こして赤く腫れたり、痛みを伴うことも少なくありません。

よく見られる身体的症状

あごニキビには、いくつかの段階とそれに伴う症状があります。

  • 初期段階(コメド):毛穴に皮脂や古い角質が詰まった状態で、「白ニキビ」や「黒ニキビ」と呼ばれます。痛みや赤みはまだありませんが、触るとザラザラとした感触があります。
  • 炎症性ニキビ(赤ニキビ):詰まった毛穴の中でアクネ菌が増殖し、炎症が起きた状態です。赤く腫れ上がり、触れると少し痛みを感じることがあります。
  • 化膿性ニキビ(黄ニキビ):炎症がさらに進み、膿が溜まった状態です。中心に黄色い膿が見え、痛みが強くなります。無理に潰すと、ニキビ跡(色素沈着やクレーター)が残る原因になります。
  • 硬結・嚢胞(しこりニキビ):炎症が皮膚の深い部分(真皮層)まで達し、硬く盛り上がった状態です。強い痛みを伴い、治った後も跡に残りやすい最も重い症状です。

50代・60代では、肌のターンオーバー(新陳代謝)が遅くなるため、特に炎症を起こしたニキビや、治った後のニキビ跡が残りやすい傾向にあります。

心理的な変化

あごニキビは、常に人の目に触れやすい場所にできるため、見た目の問題から大きなストレスや悩みの種になります。

「またニキビができてしまった……」という憂鬱な気持ちになったり、人前に出るのが億劫になったり、メイクで隠そうとすることでさらに悪化させてしまう悪循環に陥ることもあります。

特に、これまで肌トラブルとは無縁だった方にとっては、突然の肌の変化に戸惑い、自信をなくしてしまう原因にもなりかねません。こうした心理的なストレスが、さらにホルモンバランスを乱し、ニキビを悪化させる一因となることも知られています。

統計データ(調査より)

厚生労働省による大規模な統計調査はありませんが、日本皮膚科学会の報告などによると、日本人の90%以上が生涯で一度はニキビを経験すると言われています。

かつてニキビは「若者のシンボル」とされていましたが、現在では20代、30代以降の「大人ニキビ」に悩む人が増加しています。ある調査では、ニキビに悩んだ経験がある女性は8割を超え、その悩みが10年以上続いている人も少なくないという結果も出ています。

しかし、これほど多くの方が悩んでいるにもかかわらず、ニキビで皮膚科などの医療機関を受診する人の割合は、全体の1割程度にとどまるというデータもあります。市販薬や自己流のケアで対処している方が多いのが現状ですが、特に治りにくい大人ニキビは、専門医による適切な診断と治療が改善への近道です。

あごニキビの原因とメカニズム

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主な原因

あごニキビの主な原因は、一つではありません。複数の要因が複雑に絡み合って発症します。

1. 生理学的要因

  • ホルモンバランスの乱れ:50代・60代の女性は、更年期や閉経に伴い、女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、相対的に男性ホルモン(アンドロゲン)が優位になります。男性ホルモンは皮脂の分泌を活発にし、角質を厚くする(角質肥厚)作用があるため、毛穴が詰まりやすくなり、ニキビの直接的な原因となります。
  • 皮脂の過剰分泌と乾燥:あごや口まわりは、皮脂腺が多い一方で、汗腺が少なく乾燥しやすいという特徴があります。肌が乾燥すると、皮膚は自らを守ろうとして逆に皮脂を過剰に分泌してしまいます。この過剰な皮脂が毛穴詰まりを引き起こします。
  • バリア機能の低下:加齢や乾燥、紫外線などの影響で肌のバリア機能が低下すると、外部からのわずかな刺激にも敏感に反応し、炎症を起こしやすくなります。

2. 環境的要因

  • 物理的な刺激:マスクの摩擦、頬杖をつく癖、マフラーやタートルネックの接触、無意識に顔を触るなど、あご周りは物理的な刺激を受けやすい部位です。これらの刺激が肌のバリア機能を低下させ、ニキビを誘発・悪化させます。
  • 不適切なスキンケア:洗浄力の強すぎるクレンジングや洗顔料の使用、ゴシゴシこする洗い方、逆に洗い残しなども肌への負担となります。また、油分の多い化粧品が毛穴を塞いでしまうこともあります。
  • 紫外線:紫外線は皮脂を酸化させ、炎症を悪化させるだけでなく、肌の乾燥やバリア機能の低下も招きます。

3. 心理社会的要因

  • ストレス:仕事や家庭、人間関係など、現代社会を生きる上でストレスは避けられません。50代・60代は、子どもの独立、親の介護、自身の健康問題など、ライフステージの変化に伴う特有のストレスを抱えやすい時期です。ストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、皮脂の分泌を増加させ、ニキビを悪化させる大きな要因です。
  • 生活習慣の乱れ:睡眠不足、栄養バランスの偏った食事(特に糖質や脂質の多い食事)、運動不足などは、ホルモンバランスの乱れや肌のターンオーバーの乱れに直結します。
  • 胃腸機能の低下:東洋医学では、あごや口周りのニキビは胃腸の不調のサインとも言われます。便秘や胃もたれなど、胃腸機能の低下が肌状態に影響を与えることもあります。

発症メカニズム

あごニキビは、以下のステップで発症・悪化します。

  • 毛穴の詰まり:ホルモンバランスの乱れや乾燥などにより、皮膚のターンオーバーが乱れ、古い角質が厚くなります(角質肥厚)。同時に、皮脂が過剰に分泌されます。この厚くなった角質と過剰な皮脂が混ざり合い、毛穴の出口を塞いでしまいます。これがニキビの始まりである「コメド(面皰)」です。
  • アクネ菌の増殖:塞がった毛穴の中は、皮脂を栄養源とするアクネ菌にとって絶好の繁殖環境です。酸素が少ない状態を好むアクネ菌が、ここで一気に増殖します。
  • 炎症の発生:増殖したアクネ菌が、炎症を引き起こす物質を作り出します。これに免疫細胞が反応し、赤く腫れた「赤ニキビ」や、膿が溜まった「黄ニキビ」といった炎症性のニキビへと進行します。

リスク要因

以下のような方は、あごニキビができやすい、あるいは悪化しやすい傾向があるため注意が必要です。

  • 閉経期、更年期を迎えている方
  • ストレスを強く感じている方
  • 睡眠時間が不規則、または短い方
  • 脂っこいものや甘いものをよく食べる方
  • 便秘がちな方
  • 頬杖をつく癖がある方
  • マスクを長時間着用する方
  • スキンケアで保湿が不十分だと感じる方

これらのリスク要因に心当たりがある場合は、生活習慣を見直すことが、あごニキビの予防・改善の第一歩となります。

診断方法と受診について

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次に、受診する場合の流れについて説明します。

いつ受診すべきか

市販薬を試しても改善しない、同じ場所に繰り返しできる、痛みが強い、しこりのようになっているなど、以下のような症状が見られる場合は、自己判断でケアを続けるのではなく、早めに皮膚科などの医療機関を受診しましょう。放置するとニキビ跡が残ってしまう可能性もあります。

  • 炎症が強く、赤みや痛みがひどい
  • 膿を持っている
  • 触ると硬いしこりになっている
  • 2週間以上セルフケアをしても改善しない、または悪化する
  • ニキビが広範囲に広がっている
  • ニキビ跡(色素沈着や凹み)が心配

診断の流れ

皮膚科では、主に視診(目で見て診断すること)によって診断が行われます。特別な検査が必要なケースは稀ですが、症状や原因に応じて丁寧な診察が進められます。

1. 問診で確認すること

医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。スムーズに答えられるよう、事前にご自身の状況を整理しておくと良いでしょう。

  • いつからニキビが気になり始めましたか?
  • どのような症状がありますか?(赤み、痛み、膿など)
  • ニキビは良くなったり悪くなったりを繰り返しますか?
  • 生理周期と関連はありますか?
  • 現在、何か治療をしていますか?(市販薬、他の病院の薬など)
  • 普段、どのようなスキンケアをしていますか?
  • 睡眠や食事、ストレスの状況など、生活習慣について
  • 他に治療中の病気や、内服している薬はありますか?

2. 身体検査

問診に続き、医師がニキビの状態を直接観察します。ニキビの種類(白ニキビ、赤ニキビ、黄ニキビなど)、炎症の程度、分布範囲、ニキビ跡の有無などを詳しく確認します。この際、メイクは落として受診するのが望ましいですが、難しい場合は診察室で拭き取ることも可能です。医師の指示に従ってください。

3. 代表的な検査例

通常、あごニキビの診断で特別な検査を行うことは多くありません。しかし、他の皮膚疾患(例えば、酒さや毛嚢炎など)との区別が難しい場合や、ホルモンバランスの乱れが強く疑われる場合には、以下のような検査が追加で行われることがあります。ただし、これらは医師が必要と判断した場合に限られます。

  • 血液検査:ホルモンバランスの状態や、全身の炎症反応などを調べるために行われることがあります。
  • 細菌培養検査:ニキビの原因菌を特定するために、膿の一部を採取して検査することがあります。

受診時の準備

受診の際は、以下のものを準備しておくと診察がスムーズに進みます。

  • 保険証
  • お薬手帳:現在使用している薬(塗り薬、飲み薬、サプリメントなど全て)がわかるもの。
  • 症状のメモ:いつから、どのような症状が、どんな時に悪化するかなどを簡単にまとめたメモ。スマートフォンの写真なども役立ちます。
  • 普段使っている化粧品:もし可能であれば、商品名がわかるものや、パッケージを持参すると、成分の確認に役立つ場合があります。

受診すべき診療科

あごニキビの相談は、まずは皮膚科を受診するのが一般的です。皮膚科では、ニキビ治療の基本である保険診療(塗り薬や飲み薬)を受けることができます。

もし、ホルモンバランスの乱れが強く関わっていると考えられる場合や、月経不順などの症状も併発している場合は、婦人科への相談も選択肢の一つです。また、ニキビ跡の治療など、より美容的な改善を希望する場合は、美容皮膚科が専門となります。

どの科を受診すればよいか迷う場合は、まずはお近くの皮膚科に相談してみましょう。かかりつけ医がいる場合は、まずそこで相談するのも良い方法です。地域の保健所や医療機関案内サービスで、お近くの皮膚科を探すこともできます。

あごニキビの治療法

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治療方針の決定

あごニキビの治療は、ニキビの進行度や肌の状態、患者さん自身のライフスタイルなどを総合的に考慮して、医師と相談しながら方針を決定します。治療のゴールは、現在あるニキビを治すことだけでなく、ニキビ跡を防ぎ、新しいニキビができにくい肌状態(寛解維持)を目指すことです。根気強く治療を続けることが大切になります。

薬物療法

皮膚科でのニキビ治療は、塗り薬(外用薬)と飲み薬(内服薬)が中心となります。ご自身の判断で薬の使用を中止したりせず、必ず医師の指示に従ってください。

外用薬(塗り薬)

  • アダパレン:毛穴の詰まりを改善する薬。ニキビの初期段階であるコメドに効果的で、新しいニキビをできにくくします。使い始めに乾燥やヒリヒリ感が出ることがあります。
  • 過酸化ベンゾイル:アクネ菌に対する抗菌作用と、角質を剥がす作用があります。赤ニキビに効果的です。
  • 抗菌薬(抗生物質):アクネ菌を殺菌し、炎症を抑える薬。赤ニキビや黄ニキビなど、炎症が強い場合に使用します。長期間使用すると耐性菌の問題があるため、漫然と使用せず、炎症が落ち着いたら他の薬に切り替えていきます。
  • その他:イオウカンフルローションなど、昔から使われている薬が処方されることもあります。

内服薬(飲み薬)

  • 抗菌薬(抗生物質):炎症が広範囲に及ぶ場合や、塗り薬だけでは効果が不十分な場合に処方されます。
  • ビタミン剤:皮脂の分泌をコントロールするビタミンB2やB6、肌の新陳代謝を助けるビタミンCなどが処方されることがあります。
  • 漢方薬:ホルモンバランスや体質改善を目的に、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などが処方されることがあります。
  • ホルモン療法:他の治療で効果が見られない重症の場合や、月経周期との関連が強い場合に、低用量ピルなどが婦人科で処方されることがあります。

非薬物療法

保険診療の薬物療法と並行して、あるいはニキビ跡の治療などを目的に、美容皮膚科などで以下のような治療が行われることがあります。これらは基本的に自費診療となります。ご自身の判断で安易に受けるのではなく、必ず医師とよく相談してください。

  • ケミカルピーリング:酸性の薬剤を肌に塗り、古い角質や毛穴の詰まりを取り除く治療法。肌のターンオーバーを整えます。
  • 面皰圧出(めんぽうあっしゅつ):専用の器具を使って、毛穴に詰まった皮脂や膿を押し出す処置です。炎症が悪化する前に中身を出すことで、治りを早め、ニキビ跡を予防する効果が期待できます。
  • 光治療・レーザー治療:特定の波長の光やレーザーを照射し、アクネ菌を殺菌したり、皮脂腺の働きを抑制したり、赤みを改善したりします。ニキビ跡の治療にも用いられます。

生活習慣による管理

薬による治療と合わせて、日々の生活習慣を見直すことが、あごニキビの根本的な改善には不可欠です。

  • バランスの取れた食事:特定の食品が直接ニキビの原因になるという科学的根拠は限定的ですが、栄養バランスの偏りは肌状態に影響します。特に、糖質や脂質の多い食事は皮脂の分泌を増やす可能性があるため、摂りすぎには注意しましょう。肌の材料となるタンパク質や、新陳代謝を助けるビタミン・ミネラルを豊富に含む、野菜、果物、魚、大豆製品などを積極的に取り入れたバランスの良い食事を心がけましょう。
  • 質の良い睡眠:睡眠中に分泌される成長ホルモンは、肌の修復や再生に欠かせません。毎日6〜7時間程度の質の良い睡眠を確保するよう努めましょう。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は、睡眠の質を低下させるため控えるのが賢明です。
  • ストレスケア:自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。軽い運動や趣味の時間、ゆっくりと入浴する、友人と話すなど、心身をリラックスさせる時間を作りましょう。

治療期間と予後

あごニキビの治療は、残念ながらすぐに結果が出るものではありません。肌のターンオーバーの周期を考えても、効果を実感するまでには少なくとも3か月程度はかかると考えて、根気強く治療を続けることが重要です。

症状が改善した後も、再発を防ぐためにスキンケアや生活習慣の改善を継続することが大切です。医師の指示に従って治療を続ければ、多くの場合、ニキビは改善し、コントロール可能な状態になります。

予防法と日常生活での注意点

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一次予防(発症予防)

あごニキビを未然に防ぐためには、日々のセルフケアが重要です。

  • 正しいスキンケア:
  • 洗浄:メイクや日焼け止めは、その日のうちにクレンジングで丁寧に落としましょう。洗顔は、よく泡立てた洗顔料で肌をこすらず、泡を転がすように優しく洗います。すすぎ残しがないよう、ぬるま湯で十分に洗い流してください。
  • 保湿:洗顔後は、肌が乾燥しないうちに、すぐに化粧水で水分を補給し、乳液やクリームで水分が逃げないように蓋をします。「ニキビができるから」と油分を避けるのではなく、ご自身の肌質に合った保湿剤で、水分と油分のバランスを整えることが大切です。
  • 紫外線対策:季節や天候を問わず、一年中、日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。ニキビ肌に使える、低刺激性の製品を選ぶのがおすすめです。
  • バランスの取れた食事と十分な睡眠:前述の通り、体の内側からのケアが肌の状態を左右します。

二次予防(早期発見・早期治療)

ニキビができてしまったら、悪化させないことが何よりも大切です。

  • 触らない、潰さない:気になっても、ニキビを触ったり、自分で潰したりするのは絶対にやめましょう。手についた雑菌で炎症が悪化したり、皮膚を傷つけてニキビ跡の原因になったりします。
  • 早めの受診:炎症が起きて赤くなったり、痛みが出てきたりしたら、なるべく早く皮膚科を受診しましょう。早期に治療を始めることで、治りも早くなり、跡に残るリスクを減らすことができます。

日常生活の工夫

  • 物理的刺激を避ける:頬杖をつく癖をやめる、髪の毛が顔にかからないようにする、タートルネックなど首周りの衣類が直接あごに触れないようにするなど、意識的に刺激を減らしましょう。
  • マスクとの付き合い方:マスクを着用する際は、通気性の良い素材(シルクやコットンなど)を選んだり、こまめに新しいものに交換したり、人がいない場所では時々外して蒸れを防ぐなどの工夫をしましょう。
  • 寝具を清潔に保つ:枕カバーやシーツは、皮脂や汗が付着しやすいものです。こまめに洗濯し、清潔な状態を保ちましょう。

家族・周囲のサポート

あごニキビの悩みは、ご本人にしか分からないつらさがあります。ご家族や周囲の方は、「たかがニキビ」と軽視せず、その悩みに耳を傾け、共感する姿勢が大切です。

「気にしすぎだよ」といった言葉は、本人をさらに追い詰めてしまう可能性があります。ストレスがニキビを悪化させる一因でもあるため、本人がリラックスできる環境を整え、治療に前向きに取り組めるよう、温かく見守ることが何よりのサポートになります。

よくある質問(FAQ)

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Q1: あごにだけニキビができるのはなぜですか?

A: あごは、ホルモンバランスの影響を受けやすい部位であるため、大人ニキビができやすい場所です。特に50代・60代は更年期などでホルモンバランスが乱れがちになることに加え、あごは皮膚が薄く乾燥しやすい一方で皮脂腺は多いため、毛穴が詰まりやすいという特徴があります。

また、マスクの摩擦や頬杖など、物理的な刺激を受けやすいことも一因です。

Q2: 食べ物が原因であごニキビができますか?

A: チョコレートやナッツ、揚げ物など、特定の食べ物が直接ニキビの原因になるという明確な科学的根拠は、現在のところ限定的です。しかし、糖質や脂質の多い食事に偏ると、皮脂の分泌を増やす可能性は指摘されています。

特定の食品を断つことよりも、様々な食材をバランス良く摂り、健やかな肌を作るための栄養を補給することが大切です。

Q3: 治っても同じ場所に繰り返しできてしまいます。どうしてですか?

A: 同じ場所にニキビが繰り返すのは、その部分の毛穴がニキビによってダメージを受け、詰まりやすい状態になっている可能性があります。また、炎症が皮膚の深い部分まで及んで、完治していなかったり、無意識の癖(頬杖など)で同じ場所に刺激を与え続けていたりすることも原因として考えられます。

根本的な原因であるホルモンバランスや生活習慣が改善されていない場合も、再発しやすくなります。

Q4: ニキビ跡はどのように治療しますか?

A: ニキビ跡の種類(赤み、色素沈着、凹みなど)や深さによって治療法は異なります。年齢とともに肌の再生能力は低下するため、若い頃に比べると時間はかかるかもしれませんが、適切な治療によって改善は可能です。

赤みや色素沈着は、ターンオーバーを促す塗り薬やケミカルピーリング、光治療などで改善が期待できます。凹んでしまったクレーター状の跡は、レーザー治療などが必要になる場合があります。まずは皮膚科や美容皮膚科の専門医にご相談ください。

Q5: スキンケアは、さっぱりタイプと、しっとりタイプのどちらが良いですか?

A: 50代・60代のあごニキビは、乾燥が原因で皮脂が過剰に出ている「インナードライ」の状態であることが多いです。そのため、さっぱりタイプのスキンケアで油分を取りすぎると、かえって乾燥が進み、ニキビを悪化させる可能性があります。

アルコールフリーの化粧水で十分に水分を与え、ベタつきの少ない乳液やクリームで適度な油分を補う「保湿」を重視したスキンケアがおすすめです。

Q6: 漢方薬はあごニキビの改善に効果がありますか?

A: はい、効果が期待できる場合があります。漢方薬は、ニキビの炎症を直接抑えるというよりは、ホルモンバランスの乱れ、血行不良、ストレス、胃腸の不調といった、ニキビの根本的な原因となる「体質」そのものを改善することを得意としています。

皮膚科や婦人科で、保険適用の漢方薬を処方してもらえることもありますので、興味がある場合は医師に相談してみましょう。

Q7: あごニキビは遺伝しますか?

A: ニキビそのものが遺伝するわけではありません。しかし、皮脂の分泌量が多い、毛穴が詰まりやすい、肌が乾燥しやすいといった「ニキビができやすい肌質」は、遺伝的な影響を受けると考えられています。

ご両親がニキビに悩んだ経験がある場合は、ご自身もニキビができやすい傾向があるかもしれません。

Q8: 早く治したいのですが、自分で膿を出しても良いですか?

A: 絶対にやめてください。自分で無理に膿を出すと、皮膚を傷つけてしまい、雑菌が入ってさらに炎症が悪化したり、色素沈着やクレーターといった消えにくいニキビ跡が残る原因になったりします。

膿が溜まってしまった場合は、触らずに皮膚科を受診してください。医療機関では「面皰圧出」という専用の清潔な器具で、適切に処置をしてもらえます。

Q9: 皮膚科と美容皮膚科、どちらに行けば良いですか?

A: まずは、保険診療が中心の「皮膚科」を受診することをおすすめします。皮膚科では、ニキビ治療の基本である塗り薬や飲み薬による治療を健康保険の範囲内で受けることができます。

その上で、ニキビ跡の治療や、より積極的な美肌治療を希望する場合に、自費診療が中心となる「美容皮膚科」を検討するのが良いでしょう。

Q10: あごニキビと上手に付き合っていくには、どうすれば良いですか?

A: あごニキビは治りにくく、繰り返しやすい厄介なものですが、悲観的になる必要はありません。まずは、専門医による適切な治療を受けることが第一歩です。

そして、ご自身の肌の状態や生活習慣と向き合い、何がニキビを悪化させるのかを知ることが大切です。すぐに結果が出なくても焦らず、治療とセルフケアを根気強く続けることで、症状は必ずコントロールできるようになります。

完璧を目指さず、少しでも良くなったら自分を褒めてあげるくらいの気持ちで、気長に向き合っていきましょう。

まとめ

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大切なポイント

  • あごニキビは、ホルモンバランスの乱れ、乾燥、ストレスなど複数の要因が絡み合って発症します。
  • 治療は、現在あるニキビを治すだけでなく、ニキビ跡を防ぎ、再発しにくい肌を目指すことがゴールです。
  • 薬物療法と並行して、保湿中心のスキンケア、バランスの取れた食事、質の良い睡眠、ストレスケアといった生活習慣の見直しが不可欠です。
  • 自己判断で悩まず、炎症や痛みが強い場合、繰り返す場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

あごニキビは、体からの大切なサインの一つ。焦らず、一つ一つ原因を知り、正しいケアを続けていけば、肌はきっと応えてくれます。健やかな毎日を目指しましょう。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

かかりつけ医について詳しく知る(厚生労働省)

 

監修者プロフィール:久野賀子 先生

2017年東京医科歯科大学医学部医学科卒業。日大板橋病院にて初期研修終了後、湘南美容クリニックに入職し、5年半勤務。新宿本院皮膚科医局長として通常の勤務だけでなく、新人医師の指導、VIP対応、トラブル対応に従事。2024年11月新宿二丁目にPRIDE CLINICオープン。

HALMEK up編集部
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