こめかみニキビの原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】
こめかみニキビの原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年10月08日
この記事3行まとめ
✓ こめかみのニキビは、ホルモンバランスの乱れやストレス、髪の刺激など複数の原因が絡み合って発生します。
✓ 50代・60代では、肌の乾燥やバリア機能の低下も大きく影響するため、保湿と優しいスキンケアが特に重要です。
✓ 症状が長引く、または炎症が強い場合は自己判断せず、早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
こめかみニキビの正体とは?
こめかみにできるニキビは、医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚の疾患の一種です。思春期のニキビが皮脂の過剰分泌を主な原因とするのに対し、50代・60代の「大人ニキビ」は、より複雑な要因が絡み合っています。
特にこの年代の肌は、長年の紫外線ダメージの蓄積や女性ホルモンの減少により、肌の生まれ変わりであるターンオーバーの周期が遅くなりがちです。通常は約28日周期のターンオーバーが、50代では40日以上かかることも。これにより、古い角質が自然に剥がれ落ちにくく、毛穴まわりに溜まってしまいます。
さらに、肌の潤いを保つセラミドやコラーゲンが減少し、皮膚のバリア機能が低下します。すると、肌は乾燥から身を守ろうとして、かえって皮脂を過剰に分泌することがあるのです。
乾燥しているのに皮脂は多い「インナードライ」と呼ばれるこの状態は、まさに大人ニキビの温床。こめかみはもともと皮脂腺が多い上に、こうした肌内部の変化と、後述する外部からの刺激が組み合わさることで、頑固で治りにくいニキビを発生させてしまうのです。
よく見られる身体的症状
こめかみにできるニキビは、初期段階では「コメド(面皰)」と呼ばれる毛穴の詰まりとして現れます。これは、触るとザラっとした感触があるかもしれません。この詰まりが開放されていない状態が「白ニキビ」、表面が酸化して黒く見えるのが「黒ニキビ」です。
このコメドの中でアクネ菌が増殖すると、炎症が起こり「赤ニキビ」へと発展します。赤く腫れ上がり、熱感や軽い痛みを伴うことが多いでしょう。さらに炎症が進むと、中心に膿を持った「黄ニキビ」となり、痛みが強くなることも。
特に50代・60代の肌は、若い頃に比べてコラーゲンなどを生成する力が衰えているため、一度炎症が真皮層まで及ぶと、クレーターのような凹凸のあるニキビ跡や、茶色いシミのような色素沈着が非常に残りやすくなります。だからこそ、炎症を起こす前の早期ケアが何よりも大切なのです。
心理的な変化
「もう若くないのに、どうしてニキビなんて……」という焦りや羞恥心は、50代・60代の女性が抱えやすい特有の悩みです。同世代の友人の肌と比べて落ち込んだり、ファンデーションやコンシーラーで隠そうとすることで、かえって肌に負担をかけて悪化させてしまうことも。
こうした心理的なストレスは、自律神経やホルモンバランスをさらに乱し、ニキビをより頑固にするという負のスパイラルに繋がりかねません。
統計データ(厚生労働省調査より)
厚生労働省の患者調査などでは、ニキビ(尋常性ざ瘡)に特化した年代別の詳細な統計は限られています。しかし、皮膚科を受診する患者の傾向として、成人期以降の女性、特に25歳以上の「大人ニキビ」に悩む人の割合は増加傾向にあると多くの皮膚科医が指摘しています。
これは、ライフスタイルの変化、ストレスの増大、そして更年期を含むホルモンバランスの変動が大きく関わっていると考えられています。
こめかみニキビの原因とメカニズム
主な原因
こめかみニキビの主な原因は、単一ではなく、複数の要因が絡み合って発生します。特に50代・60代の女性は、内的要因と外的要因の両方から影響を受けやすい状態にあります。
1. 生理学的要因
50代・60代の女性の身体は、更年期という大きな変化の時期を迎えます。この時期、卵巣機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少します。エストロゲンは、肌の潤いやハリを保ち、コラーゲンの生成を助ける働きがあるため、その減少は肌の乾燥やシワ、たるみだけでなく、ニキビにも直結します。
一方で、副腎から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)の量は大きく変わらないため、相対的に男性ホルモンが優位な状態になります。男性ホルモンは皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を促す作用があるため、顔のTゾーンやこめかみなど、皮脂腺が多い部分でニキビができやすくなるのです。
急なほてりやのぼせ、気分の落ち込みといった更年期症状に悩まされている方は、こうしたホルモンバランスの大きな揺らぎが肌にも影響している可能性があります。
また、加齢に伴う肌の水分保持能力の低下も見逃せません。肌が乾燥すると、角質層が硬くなり、毛穴の出口が塞がれやすくなります。これが「インナードライ」の状態を引き起こし、ニキビの悪循環を招くのです。
2. 環境的要因
こめかみは、顔の中でも特に外部からの刺激を受けやすい「交通量の多い交差点」のような場所です。
- ヘアスタイルと整髪料:前髪やサイドの髪がこめかみに触れる物理的な刺激は、肌のバリア機能を低下させます。髪に付着した整髪料(特に油分の多いワックスやオイル、シリコンを含む洗い流さないトリートメントなど)が肌に移り、毛穴を塞いでしまうことも大きな原因です。
- シャンプー・リンスのすすぎ残し:シャンプーやリンスに含まれる界面活性剤や油分は、肌に残ると強い刺激となり、毛穴の炎症を引き起こします。フェイスラインや髪の生え際は、特に意識して丁寧にすすぐ必要があります。
- 寝具との摩擦:睡眠中、無意識のうちに枕やシーツに顔をこすりつけています。枕カバーが清潔でないと、雑菌や皮脂、汗などが肌に移り、ニキビの原因となります。シルクやコットンなど、肌触りが良く、吸湿性の高い素材を選ぶことも一つの工夫です。
- その他の物理的刺激:帽子やヘアバンドによる蒸れや摩擦、無意識にこめかみを触る癖、頬杖をつく習慣なども、肌にとっては負担となります。
3. 心理社会的要因
50代・60代は、ライフステージの変化に伴うさまざまなストレスに直面する時期でもあります。
- 家庭環境の変化:子どもの独立による寂しさ(空の巣症候群)、パートナーとの関係性の変化、親の介護といった問題は、気づかぬうちに大きな精神的負担となります。
- 仕事上の立場:職場での責任が増す一方で、若手とのジェネレーションギャップや、自身のキャリアに対する焦りなどを感じることもあるでしょう。
- 健康への不安:自分自身の体力の衰えや、更年期症状、将来の健康に対する漠然とした不安も、慢性的なストレスの原因となります。
こうしたストレスは、自律神経のうち交感神経を優位にし、緊張状態を作り出します。すると、男性ホルモンの分泌が促され、皮脂の分泌が活発になります。また、ストレスは肌の免疫力を低下させ、炎症を悪化させることも知られています。
甘いものや脂っこいものを無性に食べたくなったり、睡眠が浅くなったりするのも、ストレスが引き起こす肌への悪影響の一つです。
発症メカニズム
こめかみニキビは、以下のステップで発症します。
- ホルモンバランスの乱れや乾燥、ストレスなどにより、皮脂が過剰に分泌されます。
- 同時に、肌のターンオーバーが乱れ、古い角質が剥がれ落ちずに厚くなります。
- 過剰な皮脂と厚くなった角質が混ざり合い、「角栓」となって毛穴を塞ぎます(この状態がコメドです)。
- 塞がれた毛穴の中で、皮脂を栄養源とするアクネ菌が増殖します。
- 増殖したアクネ菌に対抗しようと免疫反応が起こり、炎症となって赤く腫れたニキビになります。
リスク要因
- 不規則な生活習慣(睡眠不足、食生活の乱れ)
- 過度なストレス
- 不適切なスキンケア(洗い過ぎ、保湿不足)
- 髪や整髪料による物理的な刺激
- ホルモンバランスの乱れやすい時期(更年期など)
- 汗をかいたまま放置すること
診断方法と受診について
ニキビは皮膚科で治療できる病気です。自己判断で悪化させてしまう前に、専門医に相談しましょう。
いつ受診すべきか
以下のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診することを強くおすすめします。
- 炎症のサイン:赤く腫れて痛みを伴うニキビが3個以上ある、膿を持っている、熱感がある。
- セルフケアの限界:市販薬やスキンケアを1か月以上試しても改善が見られない、または悪化している。
- 繰り返すニキビ:治ってもすぐに同じ場所やその周辺に新しいニキビができてしまう。
- しこりや硬さ:ニキビが硬いしこりのようになっている。
- ニキビ跡への懸念:色素沈着や肌の凹凸など、跡が残りそうで心配な場合。
診断の流れ
多くの場合、診断は視診(見た目の確認)と、詳しい状況を伺う問診によって行われます。
1. 問診で確認すること
医師は、ニキビの原因を探り、最適な治療法を選択するために、以下のような質問をします。スムーズに答えられるよう、事前に準備しておくと良いでしょう。
- 症状の経過:いつから、どこに、どのようなニキビができ始めましたか?
- 症状の変化:痛みやかゆみはありますか?良くなったり悪くなったりを繰り返しますか?
- セルフケア:現在、どのようなスキンケア用品や化粧品を使っていますか?市販のニキビ薬は試しましたか?
- 生活習慣:食事の内容、睡眠時間、ストレスの状況などを具体的に教えてください。
- 既往歴と内服薬:現在治療中の病気や、服用している薬、サプリメントはありますか?(お薬手帳を持参すると確実です)
- 女性特有の要因:月経周期との関連は感じますか?更年期症状(ほてり、気分の落ち込みなど)はありますか?
診断を確定させるために、次のステップとして身体検査が行われることがあります。
2. 身体検査
医師が拡大鏡(ダーモスコープ)などを用いて、ニキビの状態を詳しく観察します。炎症の程度、コメドの有無、ニキビの種類(赤ニキビ、黄ニキビなど)、ニキビ跡の状態などをチェックし、他の皮膚疾患との鑑別を行います。プライバシーには十分に配慮して行われますのでご安心ください。検査後、医師は診断結果と今後の治療方針について丁寧に説明します。
3. 代表的な検査例
通常、こめかみニキビの診断で特別な検査を行うことは稀です。しかし、ニキビダニ(デモデックス)が原因の毛嚢炎や、他の細菌による感染症、アレルギー性皮膚炎などが疑われる場合は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行うことがあります。
また、ホルモンバランスの乱れが強く疑われ、月経不順や多毛など他の症状を伴う場合は、婦人科と連携し、血液検査でホルモン値を調べることもあります。ただし、これらは医師が必要と判断した場合に限られます。
受診時の準備
受診当日は、可能であればメイクをせずに、普段の肌の状態で診察を受けるのが理想です。難しい場合は、クリニックでメイクを落とせるように、クレンジングや基礎化粧品を持参すると良いでしょう。
【医師に伝えるメモの例】
- いつから:約3か月前から
- どこに:主に右のこめかみ。時々あごにも。
- どんな症状:赤くて少し痛い。治ったと思ったらまたできる。
- 使っているもの:〇〇化粧水のしっとりタイプ、△△クリーム。市販の□□軟膏を1週間使ったが変わらない。
- 生活の変化:最近、仕事が忙しく睡眠時間が5時間程度。甘いものをよく食べるようになった。
このようにメモしておくと、伝え忘れを防ぎ、診察がスムーズに進みます。
受診すべき診療科
こめかみニキビの相談は、まず「皮膚科」を受診するのが一般的です。かかりつけの皮膚科がない場合は、お住まいの自治体のウェブサイトや保健所で医療機関情報を探すことができます。
最近では、女性医師が在籍するクリニックや、美容皮膚科を併設している医療機関も増えていますので、ご自身の通いやすさや、相談しやすいと感じる雰囲気で選ぶと良いでしょう。
こめかみニキビの治療法
治療方針の決定
ニキビ治療のゴールは、単に今あるニキビを治すことだけではありません。「新しいニキビをできにくくすること」、そして「ニキビ跡を残さないこと」が非常に重要です。そのため、医師はニキビの種類、重症度、肌質、そして患者さん自身のライフスタイルや希望を総合的に判断し、一人一人に合った治療計画を提案します。
薬物療法
皮膚科でのニキビ治療は、主に外用薬(塗り薬)と内服薬(飲み薬)を組み合わせて行います。これらの多くは健康保険が適用されます。
外用薬(塗り薬)
毛穴の詰まりを改善する薬(アダパレン、過酸化ベンゾイル)
ニキビの始まりであるコメドに作用し、新しいニキビをできにくくします。治療の基本となる薬です。
- メリット:ニキビの根本原因にアプローチできる。
- デメリット:使い始めに乾燥や赤み、皮むけなどの刺激症状が出ることがある。(多くは1ヶ月ほどで慣れてきます)
抗菌薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシン、オゼノキサシン)
赤ニキビの原因であるアクネ菌を殺菌し、炎症を抑えます。
- メリット:炎症を速やかに鎮める効果が期待できる。
- デメリット:長期間使用すると、薬が効きにくくなる「薬剤耐性菌」を生むリスクがあるため、漫然と使い続けるべきではありません。
内服薬(飲み薬)
抗菌薬(ミノサイクリン、ロキシスロマイシン、ドキシサイクリンなど)
炎症が強い場合や、外用薬だけでは効果が不十分な場合に処方されます。
- メリット:体の内側から炎症を強力に抑えることができる。
- デメリット:副作用(胃腸障害など)のリスクがあり、抗菌外用薬と同様、長期使用は避けるべきです。
漢方薬(桂枝茯苓丸加薏苡仁、当帰芍薬散など)
ホルモンバランスの乱れや血行不良、ストレスなど、体質改善を目的に処方されます。
- メリット:ニキビだけでなく、冷えや月経不順など、他の不調も同時に改善できる可能性がある。
- デメリット:効果が出るまでに時間がかかることが多く、体質に合わない場合もある。
ビタミン剤(ビタミンB2, B6など)
皮脂の分泌をコントロールする目的で補助的に用いられます。
注意
薬の使用にあたっては、必ず医師の指示に従ってください。自己判断で量を増やしたり、中断したりすると、効果が得られないばかりか、副作用のリスクを高める可能性があります。
非薬物療法
薬物療法と並行して、またはニキビ跡の治療として、以下のような選択肢があります。これらは主に保険適用外(自費診療)となります。
面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)
専用の器具を使い、毛穴に詰まった皮脂や角栓を衛生的に押し出す処置です。炎症を起こす前のコメドの段階で行うことで、ニキビの悪化を防ぎます。
- メリット:ニキビの治りを早め、炎症性のニキビへの移行を防ぐ。
- デメリット:処置後に赤みが残ることがある。医師や看護師の技術によって効果に差が出ることがある。
- 費用目安:数千円~(保険適用で行うクリニックもあります)
ケミカルピーリング
グリコール酸やサリチル酸などの薬剤を肌に塗り、古い角質や毛穴の詰まりを取り除くことで、肌のターンオーバーを正常化します。
- メリット:ニキビだけでなく、肌のくすみやごわつき、ニキビ跡の改善も期待できる。
- デメリット:施術後に赤みや乾燥が出ることがある。複数回の治療が必要。
- 費用目安:1回あたり1万円~2万円程度。
注意
これらの治療は、専門的な知識と技術が必要です。ご自身でニキビを潰したり、市販のピーリング剤を過度に使用したりすることは、肌を傷つけ、症状を悪化させ、深刻なニキビ跡を残す原因になるため絶対に避けてください。
生活習慣による管理
治療効果を最大限に引き出し、ニキビの再発を防ぐためには、日々の生活習慣を見直す「守りのケア」が不可欠です。薬が「攻めの治療」なら、生活習慣の改善は肌の土台を整える大切な役割を担います。
食事:美肌を作る栄養素を意識する
積極的に摂りたい栄養素:
- ビタミンB群(豚肉、レバー、うなぎ、納豆など):皮脂の分泌をコントロールし、肌のターンオーバーを正常に保ちます。
- ビタミンC(パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ、柑橘類など):抗酸化作用で炎症を抑え、コラーゲンの生成を助けてニキビ跡の改善をサポートします。
- ビタミンA(緑黄色野菜、レバーなど):皮膚や粘膜を健康に保ちます。
- 食物繊維(きのこ、海藻、ごぼう、オートミールなど):腸内環境を整え、便通を改善することで、体内の老廃物を排出しやすくします。
控えめにしたい食事:
- 高GI食品(白米、パン、お菓子、ジュースなど):血糖値を急上昇させ、皮脂の分泌を促す可能性があります。
- 脂質の多い食事(揚げ物、ファストフード、生クリームなど):過剰な脂質は皮脂の材料となり、毛穴を詰まらせやすくします。
- 食事のポイント:まずは「まごわやさしい(豆、ごま、わかめ、野菜、魚、しいたけ、いも)」を意識した和食中心の食生活を心がけてみましょう。
睡眠:肌のゴールデンタイムを逃さない
- 睡眠中に分泌される成長ホルモンは、肌の修復と再生に欠かせません。特に、入眠後3〜4時間の深い眠りの間に最も多く分泌されます。
- 質の良い睡眠のための工夫:
- 就寝1〜2時間前に入浴し、リラックスする。
- 就寝前のスマートフォンやパソコン操作は避ける(ブルーライトが睡眠の質を低下させます)。
- 寝室の環境を整える(快適な温度・湿度、遮光カーテンなど)。
- カフェインの摂取は就寝の4時間前までにする。
スキンケア:肌を「いたわる」ケアを
治療中の肌はデリケートになっています。後述する予防法を参考に、ご自身の肌に合った「摩擦を避ける」「十分に保湿する」ケアを継続することが、治療効果を高める鍵となります。
治療期間と予後
ニキビ治療は、肌のターンオーバーに合わせて効果が現れるため、焦りは禁物です。多くの場合、効果を実感できるまでに少なくとも3ヶ月はかかると考えてください。赤みや炎症が治まった後も、ニキビをできにくくする薬(毛穴の詰まりを改善する薬)を継続することが、再発予防のために非常に重要です。適切な治療とセルフケアを根気強く続けることで、多くの場合、ニキビはコントロール可能な状態になり、ニキビのできにくい健やかな肌を維持することができます。
予防法と日常生活での注意点
ニキビを繰り返さないためには、日々の生活の中に潜む「ニキビの芽」を摘み取っていくことが大切です。
一次予防(発症予防)
究極のスキンケアは「触らない・こすらない」
洗顔
- 温度:32〜34℃のぬるま湯が基本です。熱すぎるお湯は肌の潤いを奪い、冷水は皮脂汚れを落としきれません。
- 洗い方:洗顔料は手のひらでしっかりと泡立て(泡立てネットの利用もおすすめ)、泡をクッションにして、肌の上を転がすように優しく洗います。指が直接肌に触れないくらいの力加減が理想です。
- すすぎ:シャワーを直接顔に当てるのは絶対にNG。両手ですくったぬるま湯で、泡が残らないように最低20回は丁寧にすすぎます。特に、こめかみや髪の生え際、フェイスラインはすすぎ残しが多いので意識しましょう。
保湿
- 洗顔後は、肌が乾ききる前に、すぐに保湿ケアを始めます。清潔なタオルで優しく水分を押さえたら、間髪入れずに化粧水をつけましょう。
- 化粧品の選び方:「高保湿」「低刺激」「ノンコメドジェニックテスト済み」の製品がおすすめです。セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分が配合されたものを選びましょう。
- 付け方:化粧水は、数回に分けて優しくハンドプレスでなじませます。その後、乳液やクリームなどの油分で必ず蓋をして、水分が蒸発するのを防ぎます。
紫外線対策は一年中
紫外線は、ニキビの炎症を悪化させるだけでなく、色素沈着の原因にもなります。季節や天候に関わらず、毎日日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。肌への負担が少ない、紫外線吸収剤不使用(ノンケミカル)の製品がおすすめです。
二次予防(早期発見・早期治療)
- 肌日記をつける:毎日鏡を見て肌の状態をチェックし、ニキビができた日や、その時の体調、食事内容などを簡単にメモしておくと、自分のニキビの傾向が掴みやすくなります。「生理前に悪化する」「寝不足の翌日にできやすい」など、パターンが分かれば対策も立てやすくなります。
- 「コメド」のうちに皮膚科へ:炎症を起こす前の白ニキビや黒ニキビの段階で皮膚科を受診すれば、面皰圧出などで悪化を防ぎ、跡を残さずに治療できる可能性が高まります。
日常生活の工夫
こめかみを刺激しない髪型
- おすすめの髪型:思い切って前髪を伸ばしてセンターパートにしたり、オールバックのスタイルに挑戦したりするのも良いでしょう。難しい場合は、仕事中や自宅にいる時だけでも、ヘアピンやカチューシャ、ヘアバンドなどを使って、こめかみに髪が触れないように工夫しましょう。
- 避けたほうが良いこと:オイルやワックスを多用するスタイリング。どうしても使いたい場合は、毛先だけにつけるようにし、根元や地肌にはつけないように注意します。
寝具の衛生管理
- 枕カバーは、できれば毎日、難しければ2〜3日に一度は交換しましょう。交換が大変な場合は、枕の上に清潔なタオルを敷くだけでも効果があります。
- シーツや掛け布団カバーも、週に一度は洗濯するのが理想です。
上手なストレス解消法を見つける
- 軽い運動:ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、心地よく体を動かす習慣は、血行を促進し、気分転換にもなります。
- リラックスタイム:アロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたり、ゆっくりとハーブティーを飲んだり。1日5分でも、心からリラックスできる時間を作りましょう。
- 誰かに話す:友人や家族など、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、ストレスは軽減されます。
家族・周囲のサポート
ニキビの悩みは、ご本人にとっては深刻な問題です。ご家族や周囲の方は、「たかがニキビ」「気にしすぎだよ」といった言葉で片付けず、そのつらい気持ちに寄り添うことが大切です。「何か手伝えることはある?」と声をかけたり、本人がリラックスできる時間を作れるよう協力したりすることが、何よりのサポートになります。
また、食生活の改善に一緒に取り組むなど、具体的な行動で支えることも大きな助けとなるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: こめかみにできるニキビは、ストレスが一番の原因ですか?
A: ストレスは大きな原因の一つですが、一番とは限りません。50代・60代の女性の場合、加齢や更年期に伴うホルモンバランスの乱れ、肌の乾燥、そして髪の毛やシャンプーのすすぎ残しといった物理的な刺激など、複数の要因が複雑に絡み合って発生することがほとんどです。ストレス対策はもちろん大切ですが、他の原因にも目を向けて総合的にケアすることが改善への近道です。
Q2: 年齢を重ねるとニキビは治りにくくなるのでしょうか?
A: はい、その傾向はあります。年齢とともに肌のターンオーバー(生まれ変わり)のサイクルが長くなるため、ニキビやニキビ跡が治るのに時間がかかりやすくなります。また、肌の水分保持能力やバリア機能も低下するため、一度ニキビができると炎症が長引いたり、色素沈着しやすくなったりします。だからこそ、早めのケアと予防が重要になります。
Q3: こめかみのニキビと肝臓の不調は関係ありますか?
A: 東洋医学などで「こめかみは肝臓の不調を表す」と言われることがありますが、現代西洋医学において、こめかみニキビと肝機能の異常を直接結びつける科学的根拠は確立されていません。
ただし、過度なアルコール摂取や不規則な食生活が肝臓に負担をかけ、結果として肌の状態を悪化させる可能性は考えられます。まずは皮膚科的な原因(ホルモンバランスや外部刺激など)を考えるのが一般的です。
Q4: どんな化粧品を使えば良いですか?ノンコメドジェニックテスト済みとは何ですか?
A: ニキビができやすい肌には、油分が少なく、保湿力の高い化粧品がおすすめです。「ノンコメドジェニックテスト済み」と表示のある製品は、ニキビの初期段階である「コメド」ができにくいことを確認するテストをクリアした製品です。
ただし、すべての人にニキビができないというわけではありません。ご自身の肌に合うかどうか、サンプルなどで試してから使うと安心です。
Q5: ニキビ跡を残さないためには、どうすれば良いですか?
A: ニキビ跡を防ぐために最も大切なことは、「ニキビを触らない、潰さない」ことです。そして、炎症が起きたらできるだけ早く皮膚科で治療を受け、炎症を鎮めることが重要です。
また、日中は日焼け止めを塗って紫外線対策を徹底しましょう。紫外線はニキビの炎症を悪化させ、色素沈着(シミのような跡)の原因になります。
Q6: チョコレートやナッツを食べるとニキビが悪化するというのは本当ですか?
A: 特定の食べ物が直接ニキビの原因になるという科学的根拠は、現在のところ明確ではありません。しかし、脂質や糖質の多い食品の摂りすぎは、皮脂の分泌を増やす可能性があるため、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
特定の食品を食べた後にニキビが悪化すると感じる場合は、その食品を少し控えて様子を見ると良いでしょう。
Q7: 漢方薬はこめかみニキビに効果がありますか?
A: はい、効果が期待できる場合があります。漢方薬は、体質から改善するという考え方に基づいています。ホルモンバランスの乱れを整えたり、血行を促進したり、炎症を抑えたりすることで、ニキビができにくい体質へと導きます。
皮膚科や婦人科、漢方専門のクリニックなどで相談し、ご自身の体質に合ったものを処方してもらうことが重要です。
Q8: ピーリングは効果的ですか?自宅でやっても大丈夫ですか?
A: 医療機関で行うケミカルピーリングは、古い角質を取り除き、肌のターンオーバーを促すため、ニキビやニキビ跡の改善に効果的な治療法の一つです。しかし、市販のピーリング製品を自己判断で使うことには注意が必要です。
肌質に合わないものや、使用頻度が多すぎると、かえって肌を傷つけ、バリア機能を低下させてしまう恐れがあります。まずは皮膚科医に相談することをおすすめします。
Q9: 治療にはどのくらいの費用がかかりますか?
A: 皮膚科でのニキビ治療は、基本的に健康保険が適用されます。診察料や処方される薬にもよりますが、一般的な薬物療法であれば、自己負担額は1か月あたり数千円程度が目安です。ただし、ケミカルピーリングやレーザー治療など、美容目的と見なされる治療は保険適用外(自費診療)となり、費用は医療機関によって大きく異なります。
Q10: もう治らないと諦めてしまいそうです。
A: 諦める必要はまったくありません。50代・60代のニキビは、若い頃とは原因が異なり、治りにくいと感じるかもしれませんが、適切な治療と正しいセルフケアを根気強く続けることで、必ず改善の道は開けます。一人で悩まず、ぜひ専門医にご相談ください。肌の状態が良くなることで、気持ちも前向きになれるはずです。
まとめ
大切なポイント
- こめかみニキビは、ホルモンバランス、ストレス、外部刺激など、原因が一つではないことを理解しましょう。
- 治療には、外用薬や内服薬などの薬物療法と、生活習慣の改善を組み合わせることが効果的です。
- ターンオーバーが遅くなる年代だからこそ、ニキビを自分で潰さず、跡を残さないために早めに皮膚科を受診することが大切です。
- 日々のスキンケアでは、優しい洗顔と十分な保湿を徹底し、肌のバリア機能を守りましょう。
長年の人生経験を重ね、心身ともに変化を迎えるこの時期に、ふと現れるこめかみのニキビ。「どうして今頃?」と、鏡を見るたびにため息をつきたくなるかもしれません。でも、それはあなたの体が発している大切なサインです。適切なケアで肌はきっと応えてくれます。一人で悩まず、専門家とともに、あなたらしい健やかな美しさを取り戻していきましょう。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。
適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。
監修者プロフィール:久野賀子 先生

2017年東京医科歯科大学医学部医学科卒業。日大板橋病院にて初期研修終了後、湘南美容クリニックに入職し、5年半勤務。新宿本院皮膚科医局長として通常の勤務だけでなく、新人医師の指導、VIP対応、トラブル対応に従事。2024年11月新宿二丁目にPRIDE CLINICオープン。




