老化を加速「血糖値スパイク」50代女性に多い“隠れ高血糖”のチェック法

老化を加速「血糖値スパイク」50代女性に多い“隠れ高血糖”のチェック法

更新日:2025年06月23日

公開日:2025年06月21日

老化を加速「血糖値スパイク」50代女性に多い“隠れ高血糖”のチェック法

健康診断での血糖値「数値が正常だから」と安心していませんか? 内科医・山村聡さんは「見逃されやすい“血糖値スパイク”が、糖尿病以外の重大な疾患リスクにもつながるおそれがある」と警鐘を鳴らします。食後の眠気や空腹感がある人は要注意。今すぐあなたも“スパイク”をチェック!

教えてくれたのは、山村 聡さん

やまむら・そう 日本内科学会認定内科医。専門は糖尿病・内分泌疾患。やさしい内科クリニック院長。診療の傍ら、糖尿病の啓発・予防のため血糖値に関するSNS発信を行う。最新著に『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』(KADOKAWA 刊)

食後1時間以内に起きる「血糖値スパイク」とは?

食後1時間以内に起きる「血糖値スパイク」とは?
Naoaki / PIXTA(ピクスタ)

みなさんも、「血糖値スパイク」という言葉をどこかで耳にしたり、ネットで見たりしたことがあるでしょう。

それでは、血糖値スパイクとは、いったいどういう状態を指すものでしょうか。

血糖値は、食事の前後で変動します。通常、この変動の波はゆるやかなものですが、食後の血糖値が急上昇すること(かつ、その後急降下を起こすことも含めて)があり、それが「血糖値スパイク」と呼ばれます。

実をいうと、血糖値スパイクに関しては、糖尿病の学術的な共通見解があるわけではなく、明確な数値による定義は今のところありません。

一般的にいって、食事を摂ると、おおよそ食後30分~1時間で血糖値のピークがやってきます。

もし食前の血糖値が100mg/dL だったものが、食後220mg/dLまで上昇していたら、これは明らかにスパイクといってよいでしょう。また、食後血糖値の上昇が180mg/dLを超えていたら、その場合も血糖値スパイクの目安としてよいでしょう。

これだけの血糖値の上昇が起こると、すい臓からインスリンがドッと分泌され、血糖値を急激に下げようとします。すると、血糖値の急降下が起きます。このときグラフには、数値が急上昇した後、急激に下がる、つまり、「尖った波形」が生じます。それが、「スパイク(とげ)」の形になるわけです。

血糖値スパイク自体が、糖尿病や動脈硬化のリスクになるという直接的な説明は、今のところ、なされていません。しかし、血糖値スパイクが繰り返されることは、インスリンを分泌するすい臓や血管の負担になっていることは明らかです。

健康診断で優秀な人こそ安心はできない!

健康診断で優秀な人こそ安心はできない!

ただ、困ったことに、この血糖値スパイクは、健康診断で測る空腹時血糖値には現れません。このため、毎日の食事で血糖値スパイクが起こっていても、計測機器でモニタリングしていない限り、それが測れないため見逃されてしまう恐れがあります。現在、健康診断の数値が正常な人であっても、血糖値スパイクが起きている可能性があるのです。

50代では血糖値のモニタリングが必要になるほど、血糖値が悪くない方もいらっしゃると思います。ちょっと血糖値が高めで、血糖値スパイクが起こっているかどうか気になるという人の場合、わざわざ装置を使うのはハードルが高いかもしれません。では、どうしたらいいでしょうか。

あなたは食後どうなる?血糖値スパイクのサイン2つ

あなたは食後どうなる?血糖値スパイクのサイン2つ
polkadot / PIXTA(ピクスタ)

実は、血糖値スパイクの目安となる現象があります。

特に炭水化物の多い食事、うどんやそば、丼物などを食べた後に、午後の会議とかで「ちょっと眠くなる」という方は、スパイクが起きている可能性があります。血糖値の急上昇によって眠気が出ることもあれば、いったん急上昇した血糖値が、インスリンの大量分泌によって急降下した結果、突然の眠気におそわれるケースもあります。

食事の後、2時間ほどすると、「お腹が空いた」と感じることがあります。これも同様で、血糖値スパイクで急上昇した血糖値が急降下し、血糖値が下がりすぎた結果、「反応性低血糖」という現象が起きているのです。

これらはみな、血糖値スパイクが起きているという目安となりますから、もしも反応性低血糖を疑うような諸症状が起きていることがわかったら、食事を変えていく必要があります。

放っておくと怖い!血糖値スパイクが引き起こす3つの症状

1. 神経障害

高血糖で傷つけられやすいのが細い血管です。

このため、体の末端の血管から傷ついていきます。これによって、末端の細い血管が栄養供給を行っている、末端の神経組織が傷ついていくことになります。こうして神経障害が起きていきます。

「足の感覚が鈍くなる」「足がよくつる」といった症状が起きてきます。

2. 網膜症

ほかに細い血管が集まっている代表的な臓器が、目と腎臓です。

高血糖で眼の裏側のスクリーン(網膜)の細い血管が傷つきます。血管が傷つき、詰まったり、細くなったりすると、血流を改善しようとして、新しい血管が作られます。これが新生血管です。

新しい血管がちゃんと機能してくれればよいのですが、この新しい血管は元の細い血管よりもさらにもろいため、高血糖にさらされると、そこがすぐまた破れます。このように小さい出血がたびたび起こって網膜症が進行していきます。

時には大きな出血が起こり、眼底出血で失明の危険が生じることもあります。

しかも、網膜症に関しては、網膜の端のほうの血管から傷ついていくので、なかなか気付きにくく、とてもやっかいです。眼底出血が起きてはじめて、実は糖尿病とわかるパターンも多いのです。

3. 腎臓障害

もう一つ細い血管が集中しているのが腎臓です。

腎臓の細い血管が傷めつけられる結果、腎臓のろ過機能が少しずつ壊れてきます。本来なら、捨てられないはずのたんぱく質が尿に混ざるようになります。

腎臓はガマン強い臓器なので、自覚症状はなかなか現れません。ただ、近年の情報では、まだ糖尿病になっていない糖尿病予備群の段階から、腎臓の傷みは始まっていると考えられるようになってきました。

これらの症状は〈しめじ〉と覚えましょう。し→神経障害、め→目の網膜症、じ→腎症というわけです。

さらに進むと、命に関わる病気にまで!

さらに進むと、命に関わる病気にまで!
shige hattori / PIXTA(ピクスタ)

高血糖にさらされた血管は徐々に傷つき、しなやかさが失われ、言い換えると動脈硬化が進んでいくことになります。こうした動脈硬化に起因するのが、〈えのき〉です。

え→壊疽(えそ)、の→脳血管障害、き→狭心症をはじめとした心血管障害を指します。

壊疽は、動脈硬化により足の血流が悪くなり、酸素や栄養の届かなくなった足の組織が腐ること。脳梗塞などの脳血管障害は命に関わるだけでなく、一命をとりとめても、麻痺などの後遺症が残る恐れがあります。

さらに狭心症や心筋梗塞などの心血管障害はすぐに命に危険がおよぶ恐れがあります。当然ながら、こうした疾患も予防したいのです。

さらに、〈こがに〉というのもあります。

こ→骨粗鬆症、が→がん、に→認知症です。糖尿病は、これらの病気のリスクもアップさせてしまうと考えられています。

次回の記事では、「そばvs.うどん、血糖値にやさしいのは? 知らないと損する、血糖値クイズ」を紹介していきます。

※本記事は、書籍『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』より一部抜粋して構成しています。

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■「血糖値を下げる食事法」をもっと読む■

#1: 血糖値スパイクにご用心!“隠れ高血糖”のチェック法
#2:そばvs.うどん、血糖値が上がらないのはどっちクイズ
#3:【検証】ベジファーストは効く?太らない食べ順

もっと詳しく知りたい人は、山村さんの書籍をチェック!

「ご飯を食べたあと、眠くなる」「なんとなく常にだるい」「集中力が続かない」こんな傾向がある人は、病気の一歩手前かもしれません。体当たり系医師YouTuberが検証! 血糖値を下げる食事法を伝授します。

HALMEK up編集部
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